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2017年9月26日

理化学研究所

T細胞分化を管理する転写制御機構を解明

-転写因子Bcl11bが適切なT細胞系列決定を担う-

私たちの体を、細菌やウイルスなどの病原体やがん細胞から守る免疫システムの中核をなすのはT細胞です。T細胞には、免疫系の司令塔となる「ヘルパーT細胞」、細菌・ウイルス感染細胞やがん細胞を排除する「キラーT細胞」、過剰な免疫応答にブレーキをかける「制御性T細胞」などがあります。

これらのT細胞は、骨髄に由来する共通の前駆細胞が胸腺で行われる「ポジティブセレクション」によって、それぞれのT細胞が発現するT細胞受容体の性質に応じた細胞系列に分化・成熟することで生まれます。それぞれの細胞に分化するためには、転写因子として、ヘルパーT細胞ではThPOK、キラーT細胞ではRunx3、制御性T細胞ではFoxp3の発現が必要です。しかし、細胞系列に応じた転写因子の発現を適切に管理する機構についてはよく分かっていませんでした。

今回、理研の研究チームはマウスを用いた詳細な実験により、Bcl11bという転写因子がThPOK、Runx3、Foxp3の発現を適切に制御することで、T細胞受容体の特徴に応じた分化を管理する役割を担う分子であることを明らかにしました。また、Bcl11bはT細胞分化の早い段階でそれぞれの転写因子の遺伝子領域に結合することによって、ポジティブセレクションシグナルを受け入れ、適切な遺伝子発現へと転換するための準備を整える役割を担っていることも分かりました(図参照)。

近年、がんなどの疾患を対象に、ES細胞やiPS細胞を用いた人為的なT細胞の作製による治療の試みが進行しています。本研究の成果は、人為的T細胞誘導による免疫疾患の新たな治療法の開発に貢献するものと期待できます。

Bcl11bによる転写因子発現制御機構の図

図 Bcl11bによる転写因子発現制御機構

理化学研究所
統合生命医科学研究センター 免疫転写制御研究グループ
グループディレクター 谷内 一郎 (たにうち いちろう)
上級研究員 香城 諭 (こうじょう さとし)