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2017年10月2日

理化学研究所

光波長変換による後進テラヘルツ波発振を実現

-複雑な共振器構造のない究極の小型化へ-

光波長変換に基づく後進テラヘルツ波発振の概略図

図 光波長変換に基づく後進テラヘルツ波発振の概略図

光波長変換技術は、一般的に用いる媒質によって発振波長が固定されるレーザー光を、可視光から中赤外光、テラヘルツ波(周波数が1兆ヘルツ付近)といったさまざまな波長の光に変換する技術です。用途に応じて柔軟に波長を変換できるため、光加工や光計測技術などさまざまな産業に利用されています。

光波長変換に基づく「後進波発振」の基本原理は1966年に提案され、複雑な共振器構造のない小型・安定な構成で光波長変換を実現する手法として注目を集めてきました。しかし、実際には後進波発振の実証例がほとんどなく、原理の詳細は明らかになっていませんでした。

今回、理研の研究チームは、光波長変換のための非線形光学結晶としてニオブ酸リチウム結晶による「疑似位相整合デバイス」に着目しました。疑似位相整合とは、結晶の誘電分極方向を周期的に180度反転させることで疑似的に位相整合をとる方法で、効率的に光波長変換を行うことができます。独自に設計した疑似位相整合デバイスに近赤外励起光を導入し、その結果として複雑な共振器構造のない小型・安定な構成で、後進波としてテラヘルツ波を発振させることに成功しました(図参照)。また、本手法は従来手法より高速かつ広帯域にテラヘルツ波の周波数制御が可能であること、後進テラヘルツ波と対となる近赤外光(アイドラー光)の向きはテラヘルツ波と“逆向き”であることも分かりました。

本原理を用いたデバイスは、従来必要であった複雑な工学設計や多くの光学部品が不要となるため、簡便で振動などの外乱に強いテラヘルツ波装置を実現します。今後、本手法に基づいたテラヘルツ光源と検出器を組み合わせてポータブルなテラヘルツ波センシングデバイスを実現することで、安心・安全な社会を実現するための基盤技術になると期待できます。

理化学研究所
光量子工学研究領域 テラヘルツ光研究グループ テラヘルツ光源研究チーム
研究員 縄田 耕二 (なわた こうじ)
研究員 時実 悠 (ときざね ゆう)
基礎科学特別研究員 瀧田 佑馬 (たきだ ゆうま)
チームリーダー 南出 泰亜 (みなみで ひろあき)