広報活動

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2017年10月13日

理化学研究所

糖鎖の合成阻害剤を発見

-6-アルキニルフコースにがんの悪性化を抑える可能性-

6-アルキニルフコースによる肝がん細胞の浸潤抑制の図

図 6-アルキニルフコースによる肝がん細胞の浸潤抑制

糖鎖の付加はタンパク質が受ける修飾の中で最も多く、哺乳動物に存在する50%以上のタンパク質には糖鎖が結合しています。糖鎖はさまざまな病気に関わることが分かっています。その代表が「がん」です。がん化した細胞では、がんの種類によって異なる特殊な糖鎖が発現しています。

肺がんや肝がんなどで発現が上昇する「フコース糖鎖」は、それらのがんバイオマーカーとして実際の診断に用いられています。また、フコース糖鎖の量が増えると、“浸潤・転移など悪性化”を引き起こすことから、フコース糖鎖の合成を阻害する化合物は、がんの悪性化を抑える治療候補薬の一つと考えられます。しかし、そのような化合物は、これまでほとんど開発されていませんでした。

今回、理研を中心とした国際共同研究チームは、「6-アルキニルフコース」と呼ばれる化合物が、細胞内でのフコース糖鎖の合成を強く阻害することを見いだしました。この化合物は、フコース糖鎖の構成成分である単糖のフコースに、炭素・炭素三重結合を一つ持つアルキニル基が結合した化合物です。6-アルキニルフコースを細胞に添加すると、フコース糖鎖の合成に関わる酵素の一つ(FX)を選択的に阻害することで、細胞の持つフコース糖鎖の量を大きく減少させることが分かりました。また、その阻害効果は既存のフコース糖鎖合成阻害剤(2-フルオロフコース)よりもはるかに強いことが分かりました。さらに、肝がん細胞にこの化合物を添加すると、がん細胞の増殖には影響を与えませんでしたが、浸潤が抑えられました(図参照)。よって、6-アルキニルフコースはがんの悪性化を抑える作用を持つことが分かりました。

今後、6-アルキニルフコースはフコース糖鎖の役割を調べる基礎的な研究に加え、がん治療などへの応用が大きく期待できます。

理化学研究所
グローバル研究クラスタ システム糖鎖生物学研究グループ 疾患糖鎖研究チーム
客員研究員 木塚 康彦 (きづか やすひこ)
チームリーダー 谷口 直之 (たにぐち なおゆき)