広報活動

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2017年10月17日

理化学研究所
東京工業大学
科学技術振興機構

スピンが偏った超伝導状態の検証に成功

-トポロジカル超伝導の実現へ向けて-

スピン偏極したβ-PdBi2表面状態に起因する電子干渉模様の図

図 スピン偏極したβ-PdBi2表面状態に起因する電子干渉模様

超伝導とは通常、物質が臨界温度を超えて冷却されたときに起こる現象で、電気抵抗がゼロになり、電気がエネルギーを失わずに物質中を流れます。一方で、最近盛んに研究されているトポロジカル絶縁体は、内部は絶縁体でありながら、表面では電気を通す金属となる特殊な物質です。このトポロジカル絶縁体と似ていることから、物質内部では超伝導を示すが、表面や端にはトポロジカルに保護された金属状態を示す「トポロジカル超伝導体」が理論的に提案されています。

トポロジカル絶縁体の表面は電子から構成されるのに対し、トポロジカル超伝導体の表面や端には「マヨナラ粒子」が存在すると予言されています。マヨナラ粒子はそれ自身の反粒子になるという特異な性質があり、量子コンピュータにおける量子ビットとして利用できると注目を集めています。トポロジカル超伝導の実現には、スピンが偏った(スピン偏極した)電子状態(アップ・ダウンとダウン・アップのどちらか片方)を作り出し、そこに超伝導を誘起させることが重要です。しかしこれまで、スピン偏極と超伝導を同時に観測した例はありませんでした。

今回、理研を中心とした共同研究グループは、β-PdBi2(Pd:パラジウム、Bi:ビスマス)の高品質単結晶の作製に成功し、走査型トンネル顕微鏡法/分光法(STM/STS)を用いて、表面を観察しました。その結果、全ての電子状態がスピン偏極していることが分かりました(図参照)。また、同時に0.4ケルビンで超伝導状態に特有なスペクトルの観測にも成功し、β-PdBi2表面のスピン偏極状態が超伝導になっていることを実験的に示しました。

本成果は、今後、トポロジカル超伝導の完全検証やマヨラナ粒子の検出へつながるものと期待できます。

理化学研究所
創発物性科学研究センター 強相関物理部門 創発物性計測研究チーム
上級研究員 岩谷 克也 (いわや かつや)
チームリーダー 花栗 哲郎 (はなぐり てつお)