広報活動

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2017年10月27日

理化学研究所

大腸菌を用いたマレイン酸合成法の開発

-石油由来ポリマー原料のバイオ生産に成功-

マレイン酸(C2H2(COOH)2)はカルボキシ基を二つ持つ二価カルボン酸のシス体で、穏やかな加熱により容易に脱水され無水マレイン酸を生じます。無水マレイン酸は高分子材料の原料として産業的に重要な化合物で、その世界市場規模は年間180万トンを超えます。化学的には、石油由来のベンゼンやブタンなどを五酸化バナジウム触媒存在下で気相酸化して合成します。

一方、コハク酸(C2H4(COOH)2)やフマル酸(マレイン酸のトランス体)などの二価カルボン酸は、これまでに微生物を菌体触媒に用いて生産させた実績はある程度ありました。しかし、マレイン酸を微生物で合成した例はまだありませんでした。

今回、理研の研究チームは、放線菌のポリケタイド合成経路と芳香族化合物分解菌の保有する経路を組み合わせ、大腸菌細胞内に「新規マレイン酸合成経路」を構築し、「バイオマス資源」の構成成分である単糖の一種グルコース(ブドウ糖)からコリスミ酸を経て、直接マレイン酸を合成することに成功しました(図参照)。さらに、中間生成物のピルビン酸を細胞増殖へとリサイクルすることにより、細胞内の代謝経路を最適化しました。その結果、マレイン酸の生産量を、単純に合成経路を導入した株と比較して250倍以上に引き上げることにも成功し、最終的に生産収率は約37%となりました。

バイオマス資源の利用は、大気中の二酸化炭素量を増加させません。今後、現在化学合成法のみでしか生産されていないマレイン酸生産プロセスの一部をバイオ生産で代替することにより、「低炭素社会」構築へ貢献すると期待できます。

新規マレイン酸合成経路の図

図 新規マレイン酸合成経路

理化学研究所
環境資源科学研究センター バイオマス工学研究部門 細胞生産研究チーム
基礎科学特別研究員 野田 修平 (のだ しゅうへい)
副チームリーダー 白井 智量 (しらい ともかず)
チームリーダー 近藤 昭彦 (こんどう あきひこ)