広報活動

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2017年11月14日

理化学研究所

単極子の超固体

-磁性体における磁化の単極子を制御する-

磁場中の量子スピンアイスの相図および物理量の図

図 磁場中の量子スピンアイスの相図および物理量

磁性体中では、電子スピンが極めて小さな磁石として作用します。磁性体を低温にすると通常、スピンが互いに同じ向きにそろった強磁性、または交互に反対方向を向いて打ち消し合う反強磁性など、ある磁気秩序を持つ状態になります。

一方、「量子スピンアイス」と呼ばれる磁性体を冷却すると、スピンが秩序化しない「量子スピン液体」という状態を示します。量子スピン液体では、スピンのN極・S極が分化し、粒子のように振る舞う「単極子」が出現します。絶対零度(約-273℃)で単極子は自由に零点運動をしますが、そのときのN極・S極の極性は中性に保たれます。デバイス構築の上で、単極子の振る舞いを外部から制御する可能性が期待されており、そのためには、磁場中での量子スピンアイスの性質を理解することが必要でした。

今回、理研の研究チームは厳密な数値シミュレーションによって、量子スピンアイスが磁場中で磁気を帯びる(磁化)する過程を解明しました。①量子スピンアイスに磁場を加えないで冷却していくと、量子スピン液体状態になります(図の0)。②量子スピン液体に磁場を加えると、そのまま磁化し始めます(図の0~B1)。③しかし、磁化が飽和磁化の2/3に達すると磁化プラトーに至り、単極子の零点運動が局在します(図のB1~B2)。④さらに磁場を強くすると、単極子は一様かつ中性な空間分布から「不均一な空間分布」へと転移し、同時に「超流動」を示します(図のB2~B3)。超流動とは、極低温において液体ヘリウム4が粘性を失い、抵抗なしに容器の壁面をよじ登って外へこぼれ出す現象です。ヘリウム4原子が、空間的に不均一に分布すると同時に超流動性を示す状態を「超固体」と呼びます。④の状態は「単極子の超固体」として理解できます。

本成果は、今後、単極子の自由度を制御することによって、低消費電力で駆動するデバイスを構築できる可能性を示しています。

理化学研究所
主任研究員研究室 古崎物性理論研究室
専任研究員 小野田 繁樹 (おのだ しげき)
(創発物性科学研究センター 強相関物理部門 量子物性理論研究チーム専任研究員)