広報活動

Print

2017年11月17日

理化学研究所
東京大学
日本医療研究開発機構

次世代型マウス遺伝学の実現

-交配を用いないノックインマウス個体並列作製方法の確立-

交配を用いない次世代型遺伝学プラットフォームの図

図 交配を用いない次世代型遺伝学プラットフォーム

「ノックインマウス」とは、細胞がもともと持っていない外来遺伝子が体の全細胞の染色体DNAに挿入されたマウスのことです。ノックインマウスを作製しその表現型を解析する技術は、病気などの生命現象を研究する上で欠かせません。

個体レベルでの生命現象には多くの遺伝子が関与しているため、多種類のノックインマウスを作製する必要があります。しかし一種類を作製するのに、①ノックインES細胞の作製、②キメラマウスの作製、③キメラマウスの5~6回以上に及ぶ交配という、三つの非常に煩雑な操作が必要です。そのため作製には1~2年もかかり、また多種類を並列に作製することはできませんでした。

そこで、理研の共同研究チームはまず、ノックインES細胞を作製する際のゲノム編集技術を簡便化・高効率化したり、操作を小スケール化したりすることで、多種類のノックインES細胞を並列に約1カ月で作製する技術を確立しました。次に、この技術と、体の全細胞がES細胞に由来するESマウスをキメラマウスの交配を介さずに直接作製する技術を組み合わせました。そうすることで、ノックインESマウスを「ES細胞→ノックインES細胞→ノックインESマウス」の二つのステップで、並列・短期間(2~3カ月)で作製する技術体系の確立に成功しました(図参照)。そして、この“次世代型マウス遺伝学”ともいうべき技術を誰もが実践できるように、操作上の注意点などを詳細に記したプロトコル(手順書)にまとめ、報告・公開しました。

本技術はマウスを用いた基礎生物学的研究だけでなく、ヒトiPS細胞などを用いた疾患研究、ヒト疾患モデル臓器や疾患モデルマウスの作製にも応用できます。今後、国内外の研究者が利用することにより、さまざまな医学・生物学研究が大きく加速するものと期待できます。

理化学研究所
生命システム研究センター 細胞デザインコア 合成生物学研究グループ
グループディレクター 上田 泰己 (うえだ ひろき)
(東京大学 大学院医学系研究科機能生物学専攻 教授)
上級研究員 鵜飼 英樹 (うかい ひでき)

ライフサイエンス技術基盤研究センター 生命機能動的イメージング部門 生命動態情報研究グループ 生体モデル開発ユニット
ユニットリーダー 清成 寛 (きよなり ひろし)