広報活動

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2017年11月28日

理化学研究所

未開拓の代謝物を次世代メタボローム解析により発見

-質量分析ケムインフォマティクスによるエピメタボライトの同定-

生体内で、酵素などを介した化学反応によって生成される分子量2,000以下の低分子有機化合物を代謝物(メタボローム)といいます。炎症を含むさまざまな生理機能に関わる酸化脂肪酸のオキシリピンや腫瘍形成に関わるオンコメタボライトといった代謝物は、生命の恒常性維持に深く関与しています。

また、遺伝子やタンパク質の変異により、通常とは異なる性質を持つ「エラー代謝物」が病気に関わるともいわれ、既知代謝経路には含まれない「未開拓の代謝物群(エピメタボライト)」が多く存在しています。しかし、これまでのメタボローム解析技術では、エピメタボライトのような新規代謝物の同定は困難であり、膨大な時間と労力を要するものでした。

今回、理研とカリフォルニア大学ディビス校を中心とする国際共同研究グループは、13年にわたって蓄積されたメタボロームデータベースと高分解能の質量分析装置を利用し、エピメタボライトを包括的に同定するための手法を開発しました。これは、①メタボロームデータベースからエピメタボライト候補を探索するプログラム「BinVestigate」、②質量分析による高分解能マススペクトルを高解像度で抽出する統合解析プログラム「MS-DIAL 2.0」、③ガスおよび液体クロマトグラフィー質量分析(GC-MS、LC-MS/MS)において、マススペクトルを紐解くことにより化学構造を推定するプログラム「MS-FINDER 2.0」の三つからなる総合解析技術です(図参照)。そして、本技術を用いて、乳がん細胞で検出されるN-メチルウリジン一リン酸や腸内細菌が産生すると考えられるN-メチルアラニンなど、新しい代謝物の同定に成功しました。

本技術は、疾患代謝だけでなく、腸内細菌叢を含めた微生物、創薬シードを多く輩出する植物代謝といった研究にも適用可能であり、今後、代謝研究を革新的に推進すると期待できます。

開発された三つのプログラムとその成果の図

図 開発された三つのプログラムとその成果

理化学研究所
環境資源科学研究センター メタボローム情報研究チーム
研究員 津川 裕司 (つがわ ひろし)