広報活動

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2017年11月30日

理化学研究所

ピリジンから窒素を容易に除く

-チタンヒドリドで炭素-窒素結合の切断を温和な条件下で実現-

石油中には不純物として、ピリジンやキノリンなどの窒素(N)とベンゼン環からなる化合物(含窒素芳香族化合物)が含まれています。これらの化合物は、大気汚染のもととなる窒素酸化物(NOx)を生成したり、ハイドロクラッキングと呼ばれる炭化水素分解の効率を下げたりするため、石油精製のプロセスでNを除去することが重要です。

しかし、含窒素芳香族化合物のC-N結合は安定で、切断するには固体触媒高温を用いて300~500℃、200気圧という高温・高圧な条件が必要となります。これには多くのエネルギーを消費するため、温和な条件で達成できる新しい触媒の開発が求められています。

これまでに理研の研究チームは、独自に開発した三つのチタン原子(Ti)からなる新しい多金属ヒドリド化合物(チタンヒドリド化合物)を用いて、非常に安定な窒素分子(N2)のN-N結合の切断や、ベンゼンのC-C結合の切断に成功しています。今回、理研を中心とした国際共同研究チームは、このチタンヒドリド化合物とピリジンの反応を試みました。その結果、室温~60℃という温和な条件でピリジンの2カ所のC-N結合が切断され、さらに加水分解すると、アンモニア(NH3)と環状の炭化水素であるシクロペンタジエンが生成することを見いだしました。また、このピリジンからNを容易に除くプロセスを、X線結晶構造解析、分光学的手法、計算科学により分子レベルで初めて明らかにしました(図参照)。

本成果は、C-N結合の切断反応のみならず、C-S結合、C-O結合など、さまざまな安定な結合を温和な条件で切断する新しい物質変換反応への展開が期待できます。

多金属チタンヒドリド化合物によるピリジンの炭素-窒素結合切断と加水分解の図

図 多金属チタンヒドリド化合物によるピリジンの炭素-窒素結合切断と加水分解

理化学研究所
環境資源科学研究センター 先進機能触媒研究グループ
グループディレクター 侯 召民 (コウ・ショウミン)
(侯有機金属化学研究室 主任研究員)
基礎科学特別研究員 胡 少偉 (フー・シャオウェイ)
特別研究員 羅 根 (ルオ・ゲン)
専任研究員 島 隆則 (しま たかのり)
(侯有機金属化学研究室 専任研究員)