広報活動

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2017年12月14日

理化学研究所
兵庫医科大学

炎症性腸疾患からの発がん機構の解明

-Colitic cancerのゲノム解析-

90例のColitic cancerの遺伝子変異の図

図 90例のColitic cancerの遺伝子変異

大腸および小腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍を引き起こす疾患を総称して、「炎症性腸疾患(IBD)」といいます。IBDの代表的な病気に潰瘍性大腸炎やクローン病があり、難病指定を受けています。日本でのIBD患者数は20万人以上に上り、長期間にわたり治療を受けています。

IBD患者は腸粘膜の慢性炎症のためIBDを原因とするがん「Colitic cancer」の発生リスクが非常に高く、がんやその前がん病変が見つかった場合には、大腸全摘などの手術が必要となります。通常の大腸がんの発生メカニズムは詳細に解明されていますが、Colitic cancerにはそのメカニズムが当てはまらないと考えられており、ゲノム解析による詳しい研究が求められていました。

今回、理研を中心とした共同研究グループは、兵庫医科大学病院のIBD患者に発生した90例のColitic cancerについて網羅的ゲノム解析を行いました。その結果、通常の大腸がんにおいてはAPC遺伝子変異が60~90%と最も多く起こっているのに対し、Colitic cancerではAPC遺伝子変異は15%と少なく、TP53RNF43の遺伝子変異がそれぞれ66%、11%ずつ検出されました(図参照)。これは、通常の大腸がんとは異なる遺伝子変異でColitic cancerが発生することを示しています。さらに、RNF43遺伝子変異のあるColitic cancerはIBDの経過期間が長く、一方でAPC遺伝子変異のある症例はIBDの経過期間が短く通常の大腸がんと類似していることが分かりました。

本成果は、APCRNF43TP53の遺伝子変異を調べることによって、発生したがんの原因がIBDかどうか推定できる可能性を示しており、Colitic cancerの手術や治療方針の決定に貢献すると期待できます。

理化学研究所
統合生命医科学研究センター ゲノムシーケンス解析研究チーム
チームリーダー 中川 英刀 (なかがわ ひでわき)
研究員 藤田 征志 (ふじた まさし)