広報活動

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2018年1月9日

理化学研究所
日本原子力研究開発機構

極小世界のビリヤード実験

-偏極陽子と原子核の衝突反応で大きな左右非対称性を発見-

偏極陽子と陽子および金原子核の衝突実験の図

図 偏極陽子と陽子および金原子核の衝突実験

ビリヤードをイメージしてください。手元にある突き玉に真上から見て反時計回りの回転を与えて標的玉に当てると、突き玉は“右側に”弾かれます。では、標的玉を大きなボーリング玉にして、同じように突き玉を当てるとどうなるでしょうか?

陽子を含む全ての粒子には、「スピン」と呼ばれる向きを表す性質があります。複数の粒子のスピンの向きを揃えた状態を「偏極」と呼びます。偏極陽子が偏極していない陽子や原子核との衝突により中性子に姿を変える際、中性子の飛び出す方向に“左右の偏り”が生じることを中性子生成に「左右非対称性」があるといいます。以前、理研の研究グループは米国ブルックヘブン国立研究所(BNL)の衝突型加速器(RHIC)を使って偏極陽子と偏極していない陽子を衝突させた結果、生成された中性子が“右側に約5%”多く飛び出すことを発見しています(図左参照)。この現象は、のちに「強い相互作用」の理論で説明されました。この理論では、衝突相手を陽子よりも大きい原子核にしても、左右非対称性は大きくは変わらないと予想されます。

そこで今回、理研を中心とする国際共同研究グループはRHICを使って、偏極陽子とアルミニウム(陽子数13、中性子数14)および金(陽子数79、中性子数118)の原子核を衝突させる実験を行いました。その結果、アルミニウム原子核との衝突では、中性子生成に左右非対称性はほとんどみられませんでした。しかし驚いたことに、金原子核との衝突では、ビリヤードや強い相互作用の理論の予想を大きく外し、中性子が“左側へ約15%”多く飛び出すことを発見しました(図右参照)。

国際共同研究グループは、この結果には「電磁相互作用」が影響していると考えています。今後、原子核の電荷依存性を系統的に調べることにより、電磁相互作用介在の裏付けを行い、反応メカニズムの解明を目指します。

理化学研究所
仁科加速器研究センター 理研BNL研究センター 実験研究グループ
グループリーダー 秋葉 康之 (あきば やすゆき)

仁科加速器研究センター 延與放射線研究室
専任研究員 中川 格 (なかがわ いたる)
国際プログラム・アソシエイト(研究当時) キム・ミンジョン (Minjung Kim)