広報活動

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2018年1月10日

理化学研究所

毛包イメージングによる毛周期モニタリング

-毛髪再生研究や育毛剤のスクリーニングへの応用に期待-

発光遺伝子を組み込んだNG2細胞のイメージングの図

発光遺伝子を組み込んだNG2細胞のイメージング。背中の体毛を除去したラットを暗室に置き、高感度カメラで撮影した。毛周期に応じて発光の強さ(緑~赤)が変化している

髪の毛は一生にわたってずっと伸び続けているのではなく、一本一本の髪の毛の寿命は大体3〜6年と考えられています。頭髪や体毛を作っているのは、皮膚の中にある毛包(もうほう)という小さな器官です。毛包は死と再生を繰り返す細胞群を含んでおり、成長が終わった毛を脱落させ、新たな毛を産生する働きがあります。毛が生えてから抜け落ちるまでを「毛周期」と呼び、成長期、退行期、休止期の三つのステージに分けられます。毛がどのステージにあるかは毛包の形や細胞を見れば分かるのですが、皮膚の表面から見えるのは毛包の一部である毛穴であり、その奥がどのような状態にあるかまでは窺えません。生体内で起きている毛周期を観察することができれば、毛髪の再生に関する基礎研究や、発毛・育毛剤の開発に役に立つはずです。

理研の研究チームは、毛包を構成する細胞の一つであるNG2細胞に着目しました。NG2細胞は盛んに分裂する能力があり、脳では神経系のグリア細胞を作り出すことが知られています。毛周期を観察するモデルとしてラット体毛の毛包を調べたところ、成長期、退行期、休止期の各ステージでNG2細胞の数が大きく変化していることが分かりました。そこで、NG2細胞数の変化を皮膚の外から観察できれば、個体で機能している状態での毛包のステージが分かると考え、遺伝子組換えによりNG2細胞が発光する遺伝子改変ラットを作製しました。このラットの背中の皮膚を超高感度カメラで撮影したところ、毛周期と一致してNG2細胞の発光が変化することが確認できました。また、加齢に伴う脱毛は毛周期の乱れが原因の一つとされていますが、老齢ラットを観察した結果、NG2細胞の発光周期が不均一であったり、休止期に相当する発光しない領域が増加していることも分かりました。

今回開発した毛包イメージングは、皮膚の中にある毛包の活動を捉えることで、自然な状態の毛周期をモニタリングできる画期的な方法です。今後、この方法が発毛剤による発毛促進効果の評価に適しているかなど、詳細に検討する予定です。

理化学研究所
ライフサイエンス技術基盤研究センター 生命機能動的イメージング部門 イメージング基盤・応用グループ 細胞機能評価研究チーム
副チームリーダー 田村 泰久 (たむら やすひさ)
チームリーダー 片岡 洋祐 (かたおか ようすけ)