広報活動

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2018年1月15日

理化学研究所
東京大学

酸化物界面におけるスキルミオンの電界制御

-界面設計による高密度スピントロニクスに向けて-

作製した界面構造の模式図の画像

図 作製した界面構造の模式図

中央は界面構造を、左はペロブスカイト構造で保たれた結晶構造を、右は界面の効果により生じたスキミルオンを表わしている。

10~20年後には集積回路上のトランジスタは原子のサイズになり、半導体エレクトロニクスが技術的な限界を迎えると予想されています。これに代わるのが「スピントロニクス」で、電子スピンの情報を利用して新しいデバイスを開発しようという試みです。

それには、スピンと電子の運動を結びつける「スピン-軌道相互作用」が重要な因子です。なかでも「異常ホール効果」と「トポロジカルホール効果」がスピン-軌道相互作用に由来する興味深い磁気輸送現象として盛んに研究されています。この二つの効果を高密度スピントロニクスデバイスに展開するには、通常行われている磁界や電流注入ではなく、“電界で制御する”ことが必要になります。しかし、電界が遮蔽される金属強磁性体(磁石)においてはそれが困難であるという問題がありました。

今回、理研を中心とする共同研究グループは、強磁性体SrRuO3による異常ホール効果に加えて、非磁性体SrIrO3の強いスピン-軌道相互作用から生成される「スキルミオン」に由来するトポロジカルホール効果も示す界面構造を、SrTiO3基板上に作製しました(図参照)。すると、上からSrRuO3/SrIrO3/SrTiO3の順で積層したときのみ、異常ホール効果とトポロジカルホール効果の両方で電界効果が観測されました。SrTiO3基板はゲート絶縁体を兼ねるため、今回の観測は「強磁性体とゲート絶縁体との間に強いスピン-軌道相互作用を持つ物質を挿入することで、強い電界効果を実現できる」ことを意味しています。

本成果は今後、磁化やスキルミオンを「磁気メモリ」として使う際の設計指針となることが期待できます。また、スピン-軌道相互作用に由来する現象はホール効果以外にも数多く存在するため、それらを電界で制御しデバイスへ応用する際にも有用な成果といえます。

理化学研究所
創発物性科学研究センター 強相関物理部門 強相関界面研究グループ
研修生 大内 祐貴 (おおうち ゆうき)
(東京大学大学院工学系研究科 博士課程3年)
専任研究員 松野 丈夫 (まつの じょうぶ)
客員研究員 小塚 裕介 (こづか ゆうすけ)
(東京大学大学院工学系研究科 講師)
客員研究員 打田 正輝 (うちだ まさき)
(東京大学大学院工学系研究科 助教)
グループディレクター 川﨑 雅司 (かわさき まさし)
(東京大学大学院工学系研究科 教授)

創発物性科学研究センター 統合物性科学研究プログラム 創発光物性研究ユニット
ユニットリーダー 小川 直毅 (おがわ なおき)

創発物性科学研究センター 強相関物理部門 強相関物性研究グループ
グループディレクター 十倉 好紀 (とくら よしのり)
(東京大学大学院工学系研究科 教授)