広報活動

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2018年1月16日

理化学研究所

M細胞分化の分子メカニズムを解明

-NF-κBシグナル伝達経路がM細胞の分化を制御する-

TRAF6欠損マウスにおけるM細胞の欠失の図

図 TRAF6欠損マウスにおけるM細胞の欠失

左は野生型マウスから、右はTRAF6欠損マウスから採取した腸管上皮細胞。赤色はNF-κBファミリー転写因子を発現している細胞。右では、M細胞が欠失していることが分かる。

腸の粘膜は、感染症に関わる多くの病原体(抗原)の初期進入経路にあたり、感染から体を守る最前線と位置づけられます。そのため、腸管には免疫細胞が集まった腸管免疫組織が発達しています。腸管免疫組織は腸管内腔から腸管粘膜を介して抗原を受け取り、免疫応答を発動させます。

その際、腸管上皮細胞に点在する「M細胞」が抗原の取り込み口となり、取り込んだ抗原を樹状細胞などの免疫細胞に受け渡します。M細胞の分化は、腸管上皮幹細胞がタンパク質RANKLの刺激を受けることによって誘導されます。理研の研究チームは2012年、転写因子Spi-BがM細胞の成熟分化に必須であることを発見しました。しかし、Spi-B以外にどのような分子がM細胞分化に関与しているのか分かっていませんでした。

今回、理研を中心とした国際共同研究グループは、RANKLによって「NF-κBシグナル伝達経路」が活性化されることに着目し、このシグナル伝達経路のM細胞分化における役割を調べました。その結果、Spi-Bの上流で「TRAF6」というタンパク質を介したNF-κBシグナル伝達経路によって、M細胞分化が制御されていることが分かりました(図参照)。

M細胞の抗原取り込みなどの特性を理解することは、感染症予防の観点から非常に重要です。今後、本成果をもとにin vitro(試験管内)でM細胞を扱うことが容易になり、M細胞の性質の理解が進むものと期待できます。

理化学研究所
統合生命医科学研究センター 粘膜システム研究グループ
研究員 金谷 高史 (かなや たかし)
グループディレクター 大野 博司 (おおの ひろし)