広報活動

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2018年1月17日

理化学研究所
大阪府立大学
株式会社日立製作所

新しい二重スリット実験

-「波動/粒子の二重性」の不可思議を解明するために-

単電子像を分類した干渉パターンの図

図 単電子像を分類した干渉パターン

干渉縞を形成した電子の個数分布を3通りに分類し描画した。青点は左側の単スリットを、緑点は右側の単スリットを、赤点は両方のスリットを通過した電子のそれぞれの像を示す。上段の挿入図は、強度プロファイル。上段2つ目の挿入図は、枠で囲んだ部分の拡大図。

19世紀初頭にヤングは「二重スリットの実験」を行い、光が波であることを証明しました。そして、20世紀の半ばにファインマンは、この二重スリットの実験を電子などの粒子で行うと「波動/粒子の二重性」を示すと提唱しました。

すなわち、二重スリットの実験は“電子は粒子だが同時に波でもあり、1個の電子が二つのスリットを同時に通り抜けたときは干渉する”という不可思議な実験です。この実験はその後、科学技術の発達に伴ってハイゼンベルグが提唱した「不確定性原理」を検証する実験として、電子だけでなく、光子、原子、分子などを用いて繰り返し行われてきました。しかし不確定性原理は、粒子と波の同時計測はできないため、粒子の伝搬経路を見いだすことは実現していません。

今回、理研を中心とする共同研究グループは、原子分解能・ホログラフィー電子顕微鏡を用いて世界で最もコヒーレンス度の高い電子線(電子波)を作り、電子が波として十分にコヒーレントな状況で両方のスリットを同時通過できる条件を整えました。また、電子が左右どちらのスリットを通ったのか明確にするために、集束イオンビーム加工装置で作製した二重スリットについて、片側のスリットの一部を遮蔽することで幅が異なる二重スリットを形成しました。さらに、左右のスリットの投影像が区別できるようにスリットと検出器との距離を短くした「プレ・フラウンホーファー条件」で干渉実験を行いました。

その結果、左右それぞれのスリットを通過した電子像と左右のスリットを同時に通過した電子像から、干渉縞の強度分布を電子の個数分布として①左側のスリットを通過した電子、②右側のスリットを通過した電子、③両方のスリットを同時に通過した電子の三つに分類して描画できました(図参照)。

共同研究グループは今後、電子検出器の時間分解能を上げるなど現在の電子線技術をさらに発展させ、不確定性原理と干渉現象との関係を実験的に捉えることで、量子力学の根幹に迫りたいと考えています。

理化学研究所
創発物性科学研究センター 量子情報エレクトロニクス部門 創発現象観測技術研究チーム
上級研究員 原田 研 (はらだ けん)