広報活動

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2018年2月22日

理化学研究所

天然魚類と環境水・底泥のエコインフォマティクス

-社会科学的手法を取り入れ複雑系の環境因子から関係性を「見える化」-

2015年に国連持続可能な開発サミットが開催され、「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されました。かつての高度経済成長期には大量生産・大量消費をしていた日本をはじめ、世界各国で持続可能な産業・社会のあり方に高い関心が寄せられています。

環境の恒常性は、生態系に関わる多彩な物理・化学・生物因子で摂動しています。例えば、天然魚は水温上昇でオス化したり、日長条件が産卵の鍵因子であるなど、わずかな環境変化を敏感に察知しながら過酷な自然環境下で生き延びています。したがって、自然環境の試料を多様な角度から分析する環境要因解析の手法を高度化することで、複雑な環境因子間の緩い関係性を「見える化」することができます。

今回、理研の研究チームは、天然魚類マハゼとその生息地の水と底泥の代謝産物・無機元素の総体、微生物叢、表現型に関するビッグデータを収集しました。それを用いて、生息地の水温差や成長・抱卵などに関連する鍵因子を抽出する「エコインフォマティクス」を開発しました。政治や経済といった複雑系を解析する社会科学で用いられるマーケットバスケット分析(MBA)法(図参照)や、各種の多変量解析に基づく分類および関係性情報抽出を組み合わせて、生息地の水温差や抱卵に特徴的な代謝および腸内細菌叢摂動を視覚化し、一つの例として「酢酸」のエネルギー代謝に関わる緩い関係性を示しました。今後、エコインフォマティクスによって得られた鍵因子の変動から生態系のバランスが崩れる前に環境変動を予測することや、鍵因子を制御することで生態環境が改善される可能性があります。

社会科学で用いられるマーケットバスケット分析(MBA)法を利用の図

図 社会科学で用いられるマーケットバスケット分析(MBA)法を利用

MBAでは解析者の定めた「アソシエーション・ルール」に基づき、天然魚の表現型(成長段階や抱卵)のような定性的情報と、NMR法で計測される定量的情報との関係性を「見える化」することができる。

理化学研究所
環境資源科学研究センター 環境代謝分析研究チーム
チームリーダー 菊地 淳 (きくち じゅん)
特別研究員 魏 菲菲 (ウェイ フェイフェイ)