広報活動

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2018年2月26日

理化学研究所

ペプチドでシルク素材を高強度化

-石油由来の高強度材料の代替としての応用に期待-

テレケリック型ポリアラニンの結晶形態の図

図 テレケリック型ポリアラニンの結晶形態

カイコやクモが作り出すシルクは、生分解性や低細胞毒性を示し、また軽く強靭な素材です。さらに、フィルムやスポンジ、ゲルなどさまざまな形状に成形加工することができるため、繊維としてだけでなく医療用材料として実用化されています。

特に、クモ糸シルクは鋼鉄のような強度とよく伸びる性質を併せ持つことから、高い靭性(タフネス)を示す材料として注目を集めています。しかしこれまで、天然シルクの結晶構造が形成する機構はほとんど分かっていないため、人工シルクを材料として加工する際に、結晶構造を制御して優れた物性を発現させることは困難でした。

高分子鎖の両末端に反応性の官能基がある構造を「テレケリック構造」といいます。今回、理研の共同研究チームは、アミノ酸のアラニンからなるポリアラニン(ポリペプチド)をテレケリック型にした高分子を化学酵素重合により合成しました(図左下)。そして、このテレケリック型ポリアラニンを添加剤として、クモ由来シルクタンパク質に混ぜてシルクフィルムを作製し、フィルムの引張強度とタフネスを向上させることに成功しました。また、テレケリック型ポリアラニンはナノファイバー状の結晶形態を示すこと(図右下)、作製したシルクフィルムはフィルム中に「βシート結晶構造」を効果的に形成することが明らかになりました。

本手法により得られるコンポジット材料は、全てバイオ由来の物質で構成されることから、既存の石油由来の高強度材料の代替としての応用することで、地球環境保護への貢献が期待できます。

理化学研究所
環境資源科学研究センター バイオマス工学研究部門 酵素研究チーム
チームリーダー 沼田 圭司 (ぬまた けいじ)
上級研究員 土屋 康佑 (つちや こうすけ)