1. Home
  2. 広報活動
  3. お知らせ
  4. お知らせ 2009

2009年3月31日

理化学研究所

辨野特別研究室をヤクルトなど7社の資金により開設

- 個人別の生理・代謝機能を計測・評価する新技術システムの構築がスタート -

独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、株式会社ヤクルト本社、協同乳業株式会社、ビオフェルミン製薬株式会社、フジッコ株式会社、森永乳業株式会社、東亜薬品工業株式会社、松谷化学工業株式会社の7社からの資金により、辨野義己(べんの よしみ)※1理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室室長を招聘(しょうへい)し、4月1日に理研知的財産戦略センター(斎藤茂和センター長)内に辨野特別研究室を開設します。

辨野特別研究室は、大腸を中心とした個人の生理・代謝機能を一定間隔で詳細に計測・解析し、生活習慣病の類型化と食生活への指導指針の作成や機能性食品素材の効果を、「個人別」に分別・評価できる技術システムの構築に取り組みます。このシステムは、各種の生活習慣病に対する個人別の危険度の判定や、当面の指導・処置を行うことを可能とするため、健康診断の一つとして導入することで、医療サービスの一層の拡充が期待できます。拡大し続ける高齢化社会や、若年層を含めた生活習慣病患者群に対し、予防医学サービスを提供することで、国民医療費の削減にもつながるものと期待されます。

理研は、わが国で唯一の自然科学の総合研究所として、物理学、工学、化学、生物学、医科学などに及ぶ広い分野で研究を進めています。また、理研には、わが国唯一の専門機関で、世界で有数の微生物保存専門機関として認められているバイオリソースセンターや、ライフサイエンス研究支援を推進しているオミックス基盤研究領域があります。辨野特別研究室では、これらのセンターなどと協力するとともに、伝統ある理研の腸内細菌※2研究の成果を継承し、新たな健康技術の確立と一層の研究領域の発展を目指します。

経緯と取り組み

理研では、1950年代から動物の腸内細菌研究を開始し、その後いち早くヒトに展開することにより、わが国の腸内細菌研究の中心的役割を担ってきました。特にこの十数年の進展は目覚ましく、さまざまな病気と腸内細菌を含む腸内環境コントロールの関連性が解明されつつあります。例えば、大腸がんや乳がんのほか、花粉症やアトピー性皮膚炎といったアレルギー性疾患においても、その症状に腸内細菌の機能が大きく影響していることが分かってきています。この分野の研究は、拡大し続ける高齢化社会や、若年層を含めた生活習慣病患者群および予備群に対し、予防医学サービスを提供することにより、国民医療費の削減にもつながるものと期待されています。

このため、理研は特別研究室プログラム※3を活用し、企業からの資金協力を得て辨野特別研究室を開設することとしました。

辨野特別研究室は、個人別の生理・代謝機能を計測・評価する技術システムを構築するために、まず、被験者が基本的な栄養素と生理機能性素材類(各種アミノ酸、食物繊維など)を含む成分内容の明確な試験食品(テストミール)を、1週間程度摂取した後、糞便、血液、尿中の微生物学・生理学的な内容を精密に分析します。同時に被験者の疾病状況や生活習慣に関する情報を整理し、生活習慣病の予防や効果的な治療に利用できるデータベース・システムを構築します。構築したシステムを健康診断の一環として導入することにより、各種の生活習慣病に対する個人別危険度の判定や、当面の指導・処置を行うことに活用するなど、これまでにない新しい医療サービスの可能性を追求します。

辨野特別研究室の概要

(1)主宰研究者

辨野義己特別招聘研究員
(理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室室長)

(2)所在地

理化学研究所知的財産戦略センター(埼玉県和光市広沢2番1号)内

(3)研究期間

平成21年4月1日から4年間

(4)参加企業

株式会社ヤクルト本社
本社所在地:東京都港区東新橋1丁目1番19号
代表者氏名:堀 澄也
協同乳業株式会社
本社所在地:東京都中央区日本橋小網町17-2
代表者氏名:山崎 直昭
ビオフェルミン製薬株式会社
本社所在地:兵庫県神戸市長田区三番町5丁目5番地
代表者氏名:藤本 孝明
フジッコ株式会社
本社所在地:兵庫県神戸市中央区港島中町6丁目13番地4
代表者氏名:福井 正一
森永乳業株式会社
本社所在地:東京都港区芝5丁目33番1号
代表者氏名:古川 紘一
東亜薬品工業株式会社
本社所在地:東京都渋谷区笹塚2-1-11
代表者氏名:増田 隆
松谷化学工業株式会社
本社所在地:兵庫県伊丹市北伊丹5丁目3番地
代表者氏名:吉川 晴世

お問い合わせ先

知的財産戦略センター 辨野特別研究室
特別招聘研究員 辨野義己(べんのよしみ)
Tel: 048-467-9561 / Fax: 048-462-4618(3/31)
Tel: 048-467-1948 / Fax: 048-467-1949(4/1以降)

知的財産戦略センター企画戦略チーム
生越 満
Tel: 048-462-5287 / Fax: 048-462-4718

報道担当

独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715

補足説明

  • 1.
    辨野義己
    酪農学園大学獣医学科卒。東京農工大学大学院を経て理研に入所。2009年3月末までバイオリソースセンター 微生物材料開発室 室長。東京大学農学博士。
    専門領域:腸内細菌学、微生物分類学。
    主な著書:「究極のヨーグルト健康法」(講談社)、「ヨーグルト生活で腸キレイ」(毎日新聞社)、「べんのお便り」(幻冬舎)、「ウンコミュニケーションBOOK」(パル出版)、「ビフィズス菌パワーで改善する花粉症」(講談社)、「病気にならない生き方で、なる病気」(ブックマン社)、「腸内環境学のすすめ」(岩波書店)、「健腸生活のススメ」(日本経済新聞社)など
  • 2.
    腸内細菌
    ヒトの大腸内に棲息している細菌の総称。腸内容物(大便)1グラムあたり1兆個の細菌が存在している。その種類は1,000種以上とされ、その大部分は培養が難しく,未知な腸内細菌が多数常在している。そして、それらはヒトの健康に深くかかわっていることが知られるようになってきた。
  • 3.
    特別研究室プログラム
    理研の研究の活性化、研究成果の社会への展開などを目的に、傑出した研究者を招聘し、原則5年以内の期間、企業等から受け入れる資金で特別に研究を推進するためのプログラム。
    第一号は、日本初の論理素子「パラメトロン」の原理の発見によりコンピューター開発のパイオニアとして知られる後藤英一元主任研究員を招聘して設置した「後藤特別研究室」(1991年5月研究開始)。「辨野特別研究室」は、制度設置から6番目の研究室となる。

    これまでに設置された特別研究室

    左右にスクロールできます

    研究室名 特別招聘研究員 設置年 参加企業
    後藤特別研究室 後藤英一 1991年 4社
    宇井特別研究室 宇井理生 1993年 11社
    名取特別研究室 名取俊二 1998年 9社
    井川特別研究室 井川洋二 2000年 11社
    阿部特別研究室 阿部岳 2004年 4社

Top