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2009年10月7日

理化学研究所

Venkatraman Ramakrishnan、Thomas A. Steitz、Ada E. Yonathのノーベル化学賞の受賞(for studies of the structure and function of the ribosome)について

理研生命分子システム基盤研究領域
領域長 横山 茂之

3人は、タンパク質を合成する巨大な分子装置であるリボソーム(RNAとタンパク質の複合体)のX線結晶構造解析に初めて成功した。タンパク質の合成は生命にとって最も基本的な現象の1つであり、また、多くの分子がリボソームを中心に働く、複雑な現象である。その仕組みが、原子分解能のメカニズムで分かったことの意義は大きい。

リボソームは、30Sと50Sという2つのサブユニットからできている。今回の受賞は、それぞれの構造決定とそれに基づく機能の解明が評価されたと考えられる。この3人の功績は突出しており、皆の納得する極めて妥当な選考結果である。特に貢献を分けると、Ramakrishnanは30Sサブユニットの構造を初めて報告し、Steitzは50Sサブユニットの構造を初めて報告し、Yonathは特にリボソームの結晶化に関する貢献が大きい。

リボソームは、通常のタンパク質と比較して非常に大きい粒子であるため、結晶化と構造解析は技術的に特に難しかった。この3人の功績により、そのような困難が打破された。その後、受賞した3人を含む複数の研究グループによって、サブユニットとtRNA、mRNA、翻訳因子、抗生物質等との複合体の構造解析が行われ、さらに、両サブユニットが結合したリボソーム(70Sリボソーム)の構造解析も行われるようになった。それらの研究への道を開いた貢献は偉大である。

細菌に対する抗生物質、抗菌剤は、リボソームをターゲットとしているものが多い。従って、本研究の応用的な意義としては、それらの薬剤の作用機構が分かるようになったこと、また、立体構造に基づいて、新たに優れた抗菌剤が設計、開発できるようになったことが挙げられる。実際、そのような開発研究も精力的に進められている。

さらに、今後は、リボソームの構造に基づいて、タンパク質生産技術の飛躍的な改良や、人工アミノ酸・人工塩基を利用するなど、さまざまな応用が期待される。

Venkatraman Ramakrishnan(ニックネームはVenki)ベンキ・ラマクリシュナン

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