広報活動

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2011年10月1日

理化学研究所

理研、国際マウス表現型解析コンソーシアム(IMPC)に参画

-マウス全遺伝子の基本的な表現型を世界共通の基準で解析、研究者に公開-

ポイント

  • 米国NIH、英国MRCなどの研究機関・組織が参加、ポストゲノム計画を始動
  • 国際的な協力・分担でマウス表現型を解析し「哺乳類遺伝子機能百科事典」を作成
  • 理研、マウス個体作製から表現型解析、データベース公開、マウス提供まで全面参画

概要

独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、マウス全遺伝子のそれぞれをノックアウトしたマウスの表現型を世界共通の基準で解析し、そのデータとマウスを世界の研究者に提供することを目的とした国際共同開発プロジェクト「国際マウス表現型解析コンソーシアム」 ( International Mouse Phenotyping Consortium:IMPC)に参画します。IMPCは、米国国立衛生研究所※1(フランシス・コリンズ所長)、英国医学研究評議会※2(ジョン・チザム議長)、欧州委員会(ジョゼ・マヌエル・バローゾ委員長)、英・サンガー研究所(マイク・ストラットン所長)など、世界の有力研究機関・組織で構成されています。このプロジェクトの発足会議が9月29日(現地時間)に米国ワシントンで開催され、9月30日午前11時(現地時間)に活動計画などを正式発表し、本格的な活動を開始します。

近年、多くの生物で全ゲノム配列が明らかにされています。ヒトと同じ哺乳類であり、ヒトの疾患モデルまたは遺伝子機能モデルとして長年利用されてきたマウスは、2002年に全ゲノム遺伝子配列が決定されています。その結果に基づき、マウスの全遺伝子について、1個ずつ欠失させた胚性幹細胞(ES細胞)を作出する大規模な国際プロジェクトが、2004年から実施されています。それらのES細胞からマウスを作製し、表現型を解析することにより遺伝子機能を明らかにしていくことが、ゲノム科学の次のステップとして重要と認識されてきています。このため、網羅的な表現型解析プラットフォーム、「マウスクリニック※3」を構築して解析することが必要であり、世界各国で取り組みが始まっています。

IMPCは、国際ノックアウトマウスコンソーシアム(IKMC)※4で開発したマウスの全遺伝子(約20,000個)をそれぞれノックアウト(欠失させる)したES細胞から、国際分担してマウスを作製し、マウスクリニックによって共通の基準による基本的な表現型を解析、データベース化し、世界中の研究者に情報とマウスを提供することを目的としたコンソーシアムです。具体的には、世界初の「哺乳類遺伝子機能百科事典」をモデルマウスにより完成するという10年間の国際連携プログラムを推進します。理研からはバイオリソースセンター(BRC、小幡裕一センター長)が参画します。

背景

これまで、特定の遺伝子が関わるヒト疾患のモデル動物として、遺伝子操作によって対象遺伝子を欠失させたマウス(ノックアウトマウス)を作り出すには、多くの時間と費用が必要でした。また、作製されたノックアウトマウスは、個人研究だけに使用され、他の研究者と共有することが困難でした。

そこで2004年、人類共通の財産として、全ての遺伝子を1個ずつ欠失させたマウス胚性幹細胞(ES細胞)のライブラリーを作製し、研究者が自由に必要情報を得られることを目的として、国際ノックアウトマウスコンソーシアム(IKMC)が設立されました。すでに約1万7,000個の遺伝子がノックアウトされており、残りは3,000個余りとなりました。

次の課題として、ノックアウトしたそれぞれの遺伝子がどのような機能を持っているか、効率的・効果的に表現型解析を行うことが求められています。

表現型解析とデータベース化

IMPCでは、IKMCにより整備されたES細胞ライブラリーから、約20,000個のノックアウトマウスを参画機関※5で分担して作製し、共通の基準・手法に基づいて、網羅的に表現型を解析します。

理研バイオリソースセンター(理研BRC)では、まず50系統のマウスES細胞を取り寄せ、「実験動物開発室」(吉木淳室長)で個体化します。次に、「日本マウスクリニック」(若菜茂晴チームリーダー)が、短時間で解析ができる表現型解析プラットフォームを用い、形態、代謝、生理、行動、病理などに関する表現型を解析します。さらに、取得したデータを「マウス表現型知識化研究開発ユニット」(桝屋啓志ユニットリーダー)でデータベース化し、IMPCへ受け渡します。

IMPCは、世界の代表的なマウス遺伝学研究プロジェクトとインフラを基に構築され、主要な生体器官・システムを網羅する高品質な表現型データの利用を可能にし、多くの研究に役立てられます。特に、医学生物学分野における疾患研究に欠かせない価値の高いノックアウトマウスの同時利用が可能になることによって、研究の飛躍が期待されます。

IMPCでの表現型解析の特徴は以下の通りです。

  • 複数の研究センター間で共通の標準化検査方法によりデータが取得される。
  • 取得されたデータは高度に品質管理された状態で保存される。
  • データベースは1カ所に集積され、常にデータのアップデートが行われる。
  • Webサイトからデータを即時公開し、誰でも利用が可能。
  • 作製されたノックアウトマウスは制限を設けずに誰でも利用が可能。

今後の期待

IMPCは、標準的表現型解析によりノックアウトマウスの全遺伝子(約20,000個)の機能を明らかにし、世界初の「哺乳類遺伝子機能百科事典」を作成していくものです。これらの成果により、遺伝子機能の解明、疾患に関する理解の進展、それに伴う創薬開発、あるいは開発中の新薬候補物質の副作用の早期発見、さらに高次生体機能解明に対して多大な貢献をすることが期待できます。

お問い合わせ先

独立行政法人理化学研究所 バイオリソースセンター マウス表現型解析開発チーム
チームリーダー 若菜 茂晴(わかな しげはる)
Tel: 029-836-9013 / Fax: 029-836-9017

筑波研究推進部
宮本 寛 (みやもと ひろし)
Tel: 029-836-9136 / Fax: 029-836-9100

報道担当

独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715

補足説明

  1. 米国国立衛生研究所
    NIHと呼ばれ、1887年に設立された合衆国で最も古い医学研究の拠点機関。米国保健社会福祉省傘下にあって、27の研究所やセンターから構成、基礎から臨床までの広範囲な医学研究を実施または資金援助する機関
  2. 英国医学研究評議会
    英国に現在7つあるResearch Councilの1つ(MRC)。組織はロンドン中心部にある本部とロンドン近郊やケンブリッジなど地方にある研究所から成り立っている。
  3. マウスクリニック
    形態、血液、各種生理学的な表現型解析において実験プロトコル、データ記述法と統計解析システムの開発などが標準化された網羅的で詳細なマウス表現型解析システム。2002年ドイツで開始され、その後、英国、フランス、カナダなどで設立された。わが国では2008年より理研バイオリソースセンターで活動を開始している。
  4. 国際ノックアウトマウスコンソーシアム(IKMC)
    2004年欧米の研究機関を中心として、ヒトの遺伝子機能を解明する目的で、マウスをモデルに全遺伝子ノックアウトマウスES細胞を整備する目的で設立した。
  5. 参画機関
    英国医学研究評議会ハーウェル研究所
    米国国立衛生研究所
    英・ウェルカムトラスト財団
    英・サンガー研究所
    欧州バイオインフォマティクス研究所
    ドイツ・ヘルムホルツミュンヘン研究所
    カナダ・トロントフェノゲノミクスセンター
    仏・マウスクリニック研究所
    豪州・フェノミクスネットワーク
    日本・理化学研究所バイオリソースセンター
    伊・学術研究会議モンテロトンド
    米・ベイラー医科大学
    米・カリフォルニア大学デービス校
    米・チャールス・リバー・ラボラトリーズ社
    米・小児病院オークランド研究所
    米・ジャクソン研究所
    カナダ・ゲノム・カナダ
    中・南京大学モデル動物研究所