1. Home
  2. 広報活動
  3. お知らせ
  4. お知らせ 2011

2011年12月16日

理化学研究所

Noriチームリーダーらの研究成果がPhysics World誌の”2011 Breakthrough of the Year”に選出される

Franco Noriチームリーダーの写真

英国物理学会(Institute of Physics)の雑誌Physics Worldが選定した物理学分野の10大ニュースの2011年版”2011 Breakthrough of the Year”の一つに、真空から光子を生成し、「真空のゆらぎ」の存在を初めて実証した研究成果が選出されました。本研究成果は、スウェーデン・チャルマース工科大学のChristopher Wilson博士ら、および理化学研究所 基幹研究所デジタル・マテリアル研究チームのFranco Noriチームリーダーらの研究グループによる成果で、科学雑誌『Nature』の11月17日号に掲載されました。

Physics World誌の掲載記事(英語)
Physics World reveals its top 10 breakthroughs for 2011”
参考
2011年11月17日掲載“How to turn darkness into light(闇を光に変える方法)”
選出された研究成果について

真空とは何も存在しない状態を指しますが、量子論では、真空は生成と消滅を繰り返すさまざまな粒子(仮想粒子)で満たされているとしています。1970年、Gerald Moore博士は、仮想光子が光速に近い速さで動く鏡に反射すると実体のある光子になると予測しました。この現象は、のちに「動的カシミール効果」と呼ばれるところとなりましたが、これまで実証されたことはありませんでした。

実際の鏡を光速近くまで加速することは不可能であるため、研究グループは、マイクロ波に対して「鏡」として働く電気回路を作り、その回路までの電気的距離を変えることにしました。その「鏡」は、超伝導量子干渉素子(SQUID)という超高感度の磁気センサを含んでおり、数十億分の1秒の間隔で磁場の向きを変えることで、光速の25%の速さで「鏡」を振動させました。その結果、真空からの光子のペアの生成をマイクロ波の形で観測することに成功し、これが量子論により予測されるものと同様の性質を持つことも立証しました。

本研究成果により、物理学の基本原則である「真空のゆらぎ」の存在について、初めて直接的な証拠が得られたことになります。また、2011年のノーベル物理学賞は「宇宙の加速膨張」の発見に対して与えられましたが、この加速膨張の原動力となる「ダークエネルギー」も、「真空のゆらぎ」に関係していると考えられています。

なお、本業績を紹介したNature Newsは、2011年に最も読まれた記事として、Readers’ choiceの1位に選ばれました。
News: Readers' choice : The most read news stories of 2011.(英語)

Top