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2013年7月30日

独立行政法人理化学研究所
公益財団法人先端医療振興財団

「滲出型加齢黄斑変性に対する自家iPS細胞由来網膜色素上皮シート移植に関する臨床研究」の研究開始について

理化学研究所(野依良治理事長)と先端医療振興財団(井村裕夫理事長)は、これまで「滲出型加齢黄斑変性に対する自家iPS細胞由来網膜色素上皮(RPE)シート移植に関する臨床研究」を共同で計画してきました。この度、厚生労働省による審査等を経て両機関とも本臨床研究の実施を機関決定したことから、下記のとおり共同研究契約を締結し、臨床研究を開始いたします。

【共同研究契約の締結】
独立行政法人理化学研究所、公益財団法人先端医療振興財団、および協力・連携機関である地方独立行政法人神戸市民病院機構の間で、本臨床研究実施のための共同研究契約を下記のとおり締結し、臨床研究を開始します。
臨床研究の題目:「滲出型加齢黄斑変性に対する自家iPS細胞由来網膜色素上皮(RPE)シート移植に関する臨床研究」
契約締結日:2013年8月1日
契約期間:契約締結日から6年10ヶ月

1.臨床研究の概要

本研究は、独立行政法人理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター(竹市雅俊センター長) 網膜再生医療研究開発プロジェクト(高橋政代プロジェクトリーダー)と、公益財団法人先端医療振興財団 先端医療センター(鍋島陽一センター長) 先端医療センター病院(平田結喜緒病院長)が、地方独立行政法人神戸市民病院機構 神戸市立医療センター中央市民病院(北徹病院長)の協力・支援の下、共同で実施するもので、患者iPS細胞から作製した網膜色素上皮シートを網膜下に移植することにより、眼科疾患の一つである「滲出型(しんしゅつがた)加齢黄斑変性」の治療法の開発を目指すものです。以下に、本臨床研究の計画概要を示しますが、はじめに下記の点についてご注意下さい。

  • 1.本研究の対象疾患は「滲出型加齢黄斑変性」です。萎縮型の加齢黄斑変性や網膜色素変性、糖尿病網膜症、緑内障など、他の眼科疾患は対象となりません。
  • 2.本研究の主な目的は安全性の確認であり、大幅な視力改善といった顕著な治療効果を期待するものではありません。
  • 3.本研究はiPS細胞を用いた臨床研究の初期段階にあります。新規治療法として確立し、一般化されるまでには、今後長期にわたる研究開発が必要です。
  • 4.本臨床研究の実施内容は、研究の進捗等に応じて、必要な手続きを経て一部変更する可能性があります。

1−1.滲出型加齢黄斑変性とは

光を受容する網膜の中心部には、特に感度が高く視力を担う「黄斑部」と呼ばれる部位があります。網膜は、受容した光を電気信号に変える視細胞を含む感覚網膜(神経性網膜)と、それに寄り添う「網膜色素上皮(RPE)」と呼ばれる組織から構成されます(図1)。RPEは感覚網膜への栄養補給や老廃物の消化を担っているため、その機能が低下すると、視機能を担う感覚網膜の機能も低下してしまいます。

加齢黄斑変性は、加齢に伴ってさまざまな理由で黄斑部の機能が低下する病気です。滲出型加齢黄斑変性では、脈絡膜新生血管と呼ばれる異常な血管が生じ、この血管から血漿(けっしょう)成分が滲み出たり、出血したりします(図2)。その結果、RPEやさらには感覚網膜が傷害され、黄斑部の機能が低下します。症状としては、最初は視野の中心部(最も見ようとする部分)で、物が歪んで見えたり、小さく見えたり、暗く見えたりします。視力が急に低下することもあります。重症化して大きな網膜剥離や出血が起こった場合は、さらに広い範囲が見えにくくなることもあります。発症要因はよく分かっていませんが、加齢や炎症、遺伝的要因などによるRPEの劣化との関連が指摘されています。また、加齢黄斑変性には萎縮型と呼ばれるもう一つのタイプがあり、滲出型と合わせると、国内で50歳以上の方の約1%に見られるといわれています(1998年、2007年、久山町研究)。

1−2.既存の治療法

新生血管が黄斑部の真ん中(中心窩)に無い場合は、新生血管をレーザーで焼き、障害がそれ以上広がらないようにします。中心窩にある場合には、抗VEGF薬を眼球に注射するのが一般的です。VEGFは新生血管の発生と発育を促進する因子で、それを阻害する抗VEGF薬が複数承認されています。しかし、これらは新生血管の発生や増殖を抑えるための治療であり、新生血管がすでに存在している部位には、治療後も変性した組織やRPEの障害が残ります。

より根本的な治療のためには、新生血管を取り除くとともに、傷ついたRPEを再建する必要があります。動物実験では、RPE細胞を移植することで視細胞の変性が抑制されることが20年ほど前から報告されています。ヒトの場合、海外では中絶胎児や提供眼からのRPE細胞の移植が行われることがありますが、日本では倫理上・法律上認められていません。また、RPE細胞の他家移植は拒絶反応が強く、うまく生着しないことが報告されています。そこで海外では、患者本人のRPE細胞を網膜の周辺部から採取し、黄斑部に移植することも行われてきましたが、手術に大きなリスクが伴うため、日本ではほとんど行われていません。

1−3.患者iPS細胞由来RPE細胞の移植

そこで本研究では、患者本人の皮膚細胞から多分化能をもったiPS細胞を作製し、それをRPE細胞に分化させシート状にして網膜の黄斑部に移植します。これにより、痛んだ網膜組織の再生を促し、視機能を維持・回復させるという新しい治療法の開発を目指します。

まず、患者の上腕部から直径4ミリ程度の皮膚を採取し、高度に清潔が保たれた細胞培養センター(CPC)で培養します。この皮膚細胞に6つの遺伝子を一時的に導入することでiPS細胞を作製します。この患者由来iPS細胞からRPE細胞を分化させ、細胞の形態や遺伝子発現を指標に、未分化細胞が混入しないように純化します。さらに、移植に適したシート状に成長させ、その品質・安全性の確認を行います(図3)。皮膚を採取してからRPEシートが完成するまでに約10カ月かかります。

このようにして作製したRPEシートを、網膜下の新生血管を取り除いた後、移植用器具を用いて網膜下へ移植します(図4)。手術後1年間を観察期間とし、最初の6カ月は毎月、以降は2カ月に一度、視力検査、眼圧検査、眼底検査、画像検査などの検査を行い安全性の確認や視機能に対する有効性を評価します。観察期間終了後は3年間の追跡調査期間を設け、年に一度、経過観察を行います。また、皮膚採取前、移植前、移植後1年経過時、追跡調査の最終年(移植後4年目)には総合的ながん検査を行います(図5)。合計4年間の観察期間と追跡調査期間の終了後もより長期にわたって経過観察を続けます。

1−4.移植後の評価項目

患者の検査データ等に基づき、治療の安全性および有効性について以下の評価を行います。

【主要評価項目】
治療の安全性の評価を目的に、iPS細胞由来RPEシートの移植に起因する有害事象のうち、特に移植片の生着不全、免疫拒絶反応、腫瘍化、手術に伴う有害事象を評価する。
【副次的評価項目】
治療の安全性(その他の有害事象)と、有効性(網膜浮腫の改善、網膜感度、視力など)を評価する。

1−5.予想される効果とリスク

本研究は、iPS細胞由来の細胞を用いた臨床研究の初期段階にあり、治療の安全性の確認が主な目的です。視力の大幅な改善といった顕著な治療効果を期待するものではありません。本研究で治療法の安全性が確認されれば、より多くの患者を対象にした臨床研究や治験を実施できると期待されます。本研究の実施にあたっては、患者に文書および口頭による詳細な説明を行い、患者自身の文書による同意(インフォームド・コンセント)を得た上で実施します。以下に予想される主な効果とリスク(有害事象)を示します。

【予想される効果】
網膜下にあった新生血管と滲出液を除去し、移植したRPE細胞が網膜の機能を維持・改善することにより、視野の中心が明るくなり、視機能の低下を抑えられることが期待されます。場合によっては、わずかな視力の改善が期待できます。ただし、これらの効果の度合いは、患者の病状にも依存することが予想されます。
【予想されるリスク(有害事象)】
事前に厳しい安全性試験を行っていますが、移植したiPS細胞由来RPEシートから腫瘍が発生する可能性を完全に否定できるわけではありません。また、皮膚の採取や全身麻酔に伴う有害事象や、網膜の手術に伴う一般的な有害事象(出血や感染、網膜剥離、それらに起因する視機能への影響等)が起こる可能性があります。医師はこれらを注意深く観察するとともに、有害事象が起きた際には最善の治療を行います。

1−6.対象となる患者の選定基準と募集について

今後、以下の基準に基づいて患者(被験者)を選定します。

【対象疾患】
滲出型加齢黄斑変性
【目標症例数】
6症例(2年間の間に順次6名登録)
【選定基準】

これまでに滲出型加齢黄斑変性と診断され治療中の方で、既存の標準治療で効果が無いか再発を繰り返す患者を対象とします。具体的には、主に下記の選択基準および除外基準に基づき、症例検討会にて患者を選定します。

主な選択基準(対象となる患者):

  • 1.少なくとも一眼が滲出型AMD(特殊型を含む)と診断されている患者
  • 2.同意取得時の年齢が50歳以上の患者
  • 3.中心窩下に脈絡膜新生血管、瘢痕形成または網膜色素上皮裂孔を認める滲出型AMDの患者
  • 4.被験眼の矯正視力が手動弁以上0.3未満の患者
  • 5.被験眼が標準治療(目安としてルセンティス®投与を、導入を含め合計4回以上実施)後も、滲出性変化が残存するもしくは再発を繰り返す患者
  • 6.本臨床研究について十分に理解したうえで、文書による同意が得られた患者

主な除外基準(対象とならない患者):

  • 1.眼感染症を合併している患者
  • 2.その他の網膜疾患(糖尿病網膜症、高血圧網膜症、血管閉塞等)を合併している患者
  • 3.視神経萎縮の確認された患者
  • 4.眼圧コントロールのできない緑内障の患者
  • 5.重度の肝障害の患者
  • 6.透析を要する重度の腎機能障害の患者
  • 7.B型肝炎ウイルス抗原、C型肝炎ウイルス抗体、ヒト免疫不全ウイルス抗体、成人T細胞白血病ウイルス抗体、梅毒血清反応陽性の患者
  • 8.抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン)、ウシ血清にアレルギーのある患者
  • 9.抗凝固薬または抗血小板薬を、移植前に中止できないと当該診療科の主治医が判断した患者
  • 10.全身麻酔に不適切と麻酔医が判断した患者
  • 11.悪性腫瘍の合併または5年以内の既往のある患者
  • 12.同意取得前1カ月以内に他の治験または臨床研究に参加していた患者

*除外基準1)-4)は被験眼においてとする。

【募集方法】

眼科医からの紹介状(診療情報提供書)により参加希望者を受け付けます。参加希望者には、紹介状と検査データを先端医療センター病院眼科宛てに郵送していただきます。それらのデータに基づき簡易判定を行い、臨床研究に参加できる可能性のある方には、神戸市立医療センター中央市民病院眼科を受診していただきます。その結果、被験者となり得る方には、文書による研究への参加同意をいただいた後、さらに全身の検査などを行います(その結果によってはご参加いただけない場合もあります)。

診療情報提供書の書式は先端医療振興財団のホームページや特設ホームページ(5-2参照)に公開します。被験者の募集に関する告知は、主にこれらのホームページや日本眼科学会などの学会を通して行います。

なお、臨床研究に関する患者の問い合せ窓口は以下の通りです。

[患者向け問合せ窓口]
先端医療振興財団 先端医療センター病院 臨床試験支援部
住所:〒650-0047 神戸市中央区港島南町2丁目2番  電話:078-304-5200
[診療情報提供書送付先]
先端医療振興財団 先端医療センター病院 眼科
住所:〒650-0047 神戸市中央区港島南町2丁目2番
電話:078-304-5200  FAX:078-304-5990
[医療関係者向け問合せ窓口]
先端医療振興財団 先端医療センター病院 地域連携窓口
住所:〒650-0047 神戸市中央区港島南町2丁目2番  電話:078-306-0889

1−7.臨床研究のスケジュール

患者本人から文書による同意を得た上で必要な検査を行い、選定基準を満たす患者を2年間の登録期間中に順次6名まで登録します(一次登録)。一次登録後、患者から皮膚組織を採取して培養し、iPS細胞の樹立を経てRPEシートを作製します。規定された品質を満たすRPEシートが作製できていることや患者自身の参加意思に変更がないことなどを条件に、実際にRPEシートの移植が行えることを確認します(二次登録)。二次登録された患者にRPEシートの移植を行い、1年間経過観察を行います。経過観察終了後、さらに3年間追跡調査を行います(図6)。

患者の一次登録に要する期間は不確定ですが、一次登録後、皮膚細胞を採取してからRPEシートが完成するまでには約10カ月を要します。そのため、1症例目の患者が移植に至るのは早くて2014年の夏頃と予想されます。また、最初の3症例の移植は8週間以上の間隔を空けて行います。後半の3症例は、前半の3症例の移植後、一定の評価を終えてから二次登録を行います。

1−8.臨床研究の実施体制

これまで、主に理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター(CDB)と先端医療振興財団において、本臨床研究の実施に向けた基礎研究や前臨床研究(安全性・有効性試験)を行ってきました。2013年8月1日に締結する共同研究契約に基づき、臨床研究開始後は先端医療センター病院が患者からの皮膚細胞の採取、RPEシートの移植、および術前術後の検査を行います。理化学研究所は研究全体の管理を行うとともに、患者から採取した皮膚細胞からのiPS細胞の作製、iPS細胞からのRPEシートの作製を行います。また、対象患者の選定支援や検査の一部、術中術後の緊急時対応等は、神戸市立医療センター中央市民病院の協力・支援の下に行われます(図7)。

1−9.患者の費用負担ついて

臨床研究参加の同意書に署名していただく前の事前検査については保険診療となりますので、診察代、検査代をご負担いただくことになります。同意書に署名した後は、先端医療センター病院および神戸市立医療センター中央市民病院で行う、この臨床研究に関わる検査や治療の費用は研究費から賄われるため、患者の費用負担はありません(交通費を除く)。

2.臨床研究実施の妥当性

iPS細胞から作製したRPE細胞は、その形態や遺伝子発現、分泌因子、貪食機能の面などから、生体由来のものと同様の機能を有していると考えられます。これまでに、ヒトiPS細胞由来RPE細胞をRPE障害モデルラットの網膜下に移植した結果、移植部の視細胞が維持され、iPS細胞由来RPE細胞が生体内で機能することを確認しています。また、サルiPS細胞由来RPEシートをサル網膜下に自家移植した結果、半年以上生着し続けることを確認しています。

RPE細胞はその形態的な特徴(茶色い色素や多角形の形状)から識別・純化が容易であり、他の臓器と比べて移植に必要な細胞も少量で済みます。さらに、目は外部から観察しやすい器官であるため、万が一何らかの異常が起きた場合、網膜断層画像検査(OCT)などで早期に異常を発見でき、腫瘍化した場合にはレーザーで除去するなど、速やかな対応が可能です。

また、iPS細胞由来細胞の移植において懸念される腫瘍形成については、これまでに2年にわたる複数回の安全性試験を重ねてきました。ヒトiPS細胞由来RPE細胞を免疫不全マウスに皮下移植する試験を合計約100匹、ヒトiPS細胞由来RPEシートをヌードラットの網膜下に移植する試験を合計約40匹行いましたが、いずれの場合も造腫瘍性は検出されませんでした。

3.実施決定までの流れ

下記の通り、両機関の倫理審査委員会および厚生労働省の審査を経て、理化学研究所および先端医療振興財団先端医療センターが本研究の実施を決定いたしました(図8)。

【理化学研究所 トランスレーショナルリサーチ(TR)倫理審査委員会】
2012年10月29日および11月19日に審査が行われ、11月19日に本研究計画は適正と判断されました。その後、実施計画書の一部変更について確認、2013年7月23日に了承されました。TR倫理審査委員会からの答申に基づき、7月25日付けで理化学研究所理事長が実施を機関決定しました。
【先端医療振興財団先端医療センター 再生医療審査委員会】
2012年11月21日、12月19日および2013年2月13日に審査が行われ、2月13日に本研究計画は承認(条件付き)されました。また、2013年7月29日に実施計画書の一部変更について審査が行われ、同日承認されました。
【神戸市立医療センター中央市民病院倫理委員会】
2013年2月19日に審議が行われ、本臨床研究計画は承認されました。
【厚生労働省による審査】
2013年2月28日、厚生労働省に「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に基づく審査を申請しました。2013年3月27日、5月27日、6月26日に開催された「ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会」、7月12日に開催された科学技術部会を経て、7月19日付けで厚生労働大臣から本臨床研究を実施して差し支えない旨の通知を受けました。

4.厚生労働省の審査に基づく変更について

厚生労働省の審査における疑義・確認事項への対応として、移植する細胞の品質と安全性をより詳細に確認することを目的に、主に以下の項目を追加しました。

  • RPEシートの作製工程における、より詳細なプラスミド残存検出試験。
  • RPEシートの作製工程における、細胞品質を確認するためのゲノム解析。
  • ゲノム解析等のデータに基づく、がん研究の専門家によるゲノム安定性の評価。

5.今後の情報公開について

5−1.記者発表について

次回記者発表の予定は未定ですが、1症例目の移植後の退院時や一定の臨床データが得られた段階などで、適宜記者発表を行う予定です。ただし、記者発表実施のタイミングや内容は状況により変更する可能性もあります。

5−2.特設ホームページについて

理化学研究所と先端医療振興財団が共同で運営する本臨床研究の特設ホームページを開設します。このホームページにて、患者やそのご家族、医療関係者向けの情報を提供するとともに、本臨床研究に関する情報公開を適宜行う予定です。

【特設ホームページのURL(8月上旬開設予定)】
http://www.riken-ibri.jp/AMD
*特設ホームページの開設までは、先端医療センターのホームページにて患者向けの案内を掲載します。

6.その他

本臨床研究は、厚生労働科学研究費からの支援により実施される予定です。また、本臨床研究のための基礎研究および前臨床研究(安全生試験等)は、主に文部科学省の再生医療の実現化ハイウェイ予算等によって実施されています。

発表者

理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト プロジェクトリーダー(本務)、先端医療振興財団先端医療センター病院 眼科部長(網膜再生医療分野)、神戸市立医療センター中央市民病院 眼科非常勤医師
高橋政代(たかはし まさよ)

先端医療振興財団先端医療センター病院 眼科統括部長、神戸市立医療センター中央市民病院 眼科部長(本務)
栗本康夫(くりもと やすお)

理化学研究所 神戸事業所 所長
齋藤茂和(さいとう しげかず)

お問い合わせ先

独立行政法人理化学研究所
発生・再生科学総合研究センター 広報国際化室
Tel: 078-306-3092, 3310 / Fax: 078-306-3090

公益財団法人先端医療振興財団 経営企画部 総務課
Tel: 078-306-1700 / Fax: 078-306-1708

報道担当

独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当
Tel:048-467-9272 / Fax:048-462-4715

眼球の基本構造の図

図1 眼球の基本構造

網膜は視細胞を含む感覚網膜(神経性網膜)と網膜色素上皮(RPE)から構成される。RPEは感覚網膜への栄養補給や老廃物の消化を担っている。
正常な網膜から滲出型加齢黄斑変性との比較図

図2 滲出型加齢黄斑変性

脈絡膜新生血管と呼ばれる異常な血管によりRPEや感覚網膜が傷害され、黄斑部の機能が低下する。
iPS細胞由来網膜色素上皮(RPE)シートの作製と品質管理のフローチャート図

図3 iPS細胞由来網膜色素上皮(RPE)シートの作製と品質管理

皮膚組織からiPS細胞を作製し、そこからRPE細胞を分化させる。RPE細胞を純化した上で移植に適したシート状に成長させる。RPEシートの作製工程および出荷時に各試験を行うことにより、移植するRPEシートの安全性と品質を確保する。(青字は厚労省の審査に伴って追加された項目)
iPS細胞由来網膜色素上皮(RPE)シートの移植説明図

図4 iPS細胞由来網膜色素上皮(RPE)シートの移植

網膜下の脈絡膜新生血管や傷害を受けたRPEを取り除いた後、iPS細胞から作製したRPEシートを移植用器具を用いて網膜下へ移植する。
被験者の検査スケジュールの図表

図5 被験者の検査スケジュール

移植後1年の観察期間中、最初の6カ月は毎月、以降は2カ月に一度、視力検査、眼圧検査、眼底検査、画像検査などの検査を行い安全性の確認や視機能に対する有効性を評価する。観察期間終了後は3年間の追跡調査期間を設け、年に一度、経過観察を行う。また、皮膚採取前、移植前、移植後1年経過時、追跡調査の最終年には総合的ながん検査を行う。
臨床スケジュールの説明図

図6 臨床スケジュール

患者の同意後に必要な検査を行い、選定基準を満たす患者を選出する(一次登録)。一次登録後、患者から皮膚組織を採取して培養し、iPS細胞の樹立を経てRPEシートを作製する。規定された品質を満たすRPEシートが作製できていることなどを条件に、実際にRPEシートの移植が行えることを確認する(二次登録)。RPEシートの移植後、1年間の経過観察、さらに3年間追跡調査を行なう。
臨床研究の流れと実施体制の説明図

図7 臨床研究の流れと実施体制

先端医療センター病院は患者からの皮膚細胞の採取、RPEシートの移植、および術前術後の検査を行う。理化学研究所は研究全体の管理を行うとともに、患者から採取した皮膚細胞からのiPS細胞の作製、iPS細胞からのRPEシートの作製を行う。対象患者の選定支援や検査の一部、術中術後の緊急時対応等は、神戸市立医療センター中央市民病院の協力・支援の下に行う。
実施決定までの審査の流れの説明図

図8 実施決定までの審査の流れ

各実施機関の倫理委員会を経て厚生労働省に審査を申請し、2013年7月19日付で厚生労働大臣から本臨床研究を実施して差し支えない旨の通知を受けた。これに基づき両実施機関が本臨床研究の実施を決定した。

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