広報活動

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2016年6月8日

理化学研究所

113番元素の元素名案「nihonium(ニホニウム)」、元素記号案「Nh」のパブリックレビュー開始

理研仁科加速器研究センター超重元素研究グループの森田浩介グループディレクター(九州大学大学院理学研究院教授)を中心とする研究グループ(森田グループ)が、国際純正・応用化学連合(IUPAC)へ3月18日に提出した113番元素の元素名案および元素記号案について、本日、IUPACによるパブリックレビューが開始されました。元素名案は「nihonium(ニホニウム)」、元素記号案は「Nh」を提案しました。

森田グループは、理研の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー(RIBF)」の重イオン線形加速器「RILAC」を用いて、2003年9月から新元素の合成に挑戦してきました。2004年7月に初めて原子番号113の元素合成に成功し、その後、2005年4月、2012年8月にも合成に成功しています。そして、2015年12月31日、森田グループによる113番元素の発見が、IUPACにより認定され、同グループに命名権が与えられました。

パブリックレビューは5ヶ月間行われます。その後、IUPACから正式な元素名と元素記号名が発表されます。

森田浩介グループディレクターコメント

森田浩介グループディレクター

私たち研究グループ一同が国際純正・応用化学連合(IUPAC)に提案しておりました113番新元素の元素名‘nihonium’と元素記号‘Nh’がIUPAC内部での審査過程を通過し、一般の批評(public review)を受けるためにIUPACのウェブサイトに公開されました。public review の後にIUPACによる正式決定がなされます。

なお私たちはIUPACによる公開と同時に(公益社団法人)日本化学会命名法専門委員会に日本名「ニホニウム」を提案いたしました。IUPACにより元素名と元素記号がこのまま最終決定されれば、この日本名も正式に決定されることになります。

長い元素発見の歴史の中で、欧米以外の国で元素を発見したグループはありませんでした。今回の新元素の認定と命名は日本発、アジア初のことであります。私たちは応援してくださった日本の皆さんのことを思い、新元素を「ニホニウム」と命名いたしました。IUPACによる最終決定がなされれば、元素名‘nihonium’と元素記号‘Nh’が周期表の一席を占めることになります。人類の知的財産として将来にわたり継承される周期表に、日本を中心とする研究グループが発見した元素とその名前が載ることは、研究グループとして大変光栄なことです。私たちは応援してくださったすべての皆さんに感謝いたしております。ありがとうございます。

基礎科学は、長期的に見れば、発見当時は思いもつかないような多大な恩恵を人類にもたらした例が数多くありますが、日々の生活にすぐに直接的な恩恵を与えることは稀です。そのため基礎科学の研究は、国家の支援、すなわち国民の皆様の税金によって成り立っています。長期的視野に立って時間のかかる基礎科学の研究を支援してくださった研究所と関係府省、そして国民の皆様に心より感謝いたします。

周期表に日本発の元素を見出した人が少しでも誇らしい気持ちになり、科学に興味を抱いてくださるなら、科学的な思考をもつ人の数を増やすことにつながり、ひいては日本の科学技術の発展に寄与しうると考えるとき、私たちは、私たちの行ってきたことに大きな意義を見出すことができます。今回の新元素発見と命名を多くの皆様と共に祝福できましたなら、研究グループ一同これに勝る喜びはありません。

松本紘理事長コメント

松本紘理事長

当研究所の森田浩介グループディレクターが率いる研究グループが昨年末に獲得した113 番元素の命名権に基づき、本年3月に同元素の元素名「nihonium(ニホニウム)」と元素記号「Nh」が提案され、本日22時半に国際純正・応用化学連合(IUPAC)によるパブリックレビューが開始されました。

森田グループによる113番元素の研究が始まった1980年代半ばから約30年の時を経て、2015年大晦日に命名権獲得のニュースがもたらされました。科学的な推論に基づき、先見性の高い緻密な研究計画のもと、世界最高レベルの装置の開発や実験を、長期にわたり忍耐強く継続されたことに敬意を表します。

提案された元素名「nihonium(ニホニウム)」と元素記号「Nh」には、日本の研究グループが世界に先駆けて新元素を発見したことを誇りに思う気持ちと、日本の皆様の長きにわたるご支援への森田グループの深い感謝が込められていると考えます。欧米以外の研究グループが発見した元素の名前が元素の周期表に刻まれるのは科学史上、初めてです。

理研では、仁科芳雄らが1937年に日本初のサイクロトロンを建設した後も、たゆまぬ研究や技術開発を続け、日本の原子核物理学をリードしてきました。現時点で世界最高性能の加速器を実現しています。今後、113番元素の人工合成の研究を発展させることにより、未知の超重元素が長い寿命を持つ「安定の島」への道を開くことも期待されます。

森田グループの成功には、大学では不可能な、長期間の研究を可能にする環境と安定かつ流動性のある人事制度も欠かせませんでした。理研として、今後とも、研究者の能力発揮を促す環境整備を行い、特定国立研究開発法人にふさわしい世界一級の総合研究所として更なる成果の最大化、社会貢献に努めてまいります。

※ 研究グループ(森田グループ)
理化学研究所、東京大学、埼玉大学、新潟大学、筑波大学、日本原子力研究開発機構、中国科学院近代物理研究所、中国科学院高エネルギー研究所、東北大学、東京理科大学、新潟大学機器分析センター、東京大学原子核科学研究センター、大阪大学、東北大学電子光理学研究センター、山形大学の研究者等が参加したグループ。