広報活動

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2016年6月29日

理化学研究所

高松塚古墳・キトラ古墳の壁画からの微生物株公開へ

- 文化庁保有のカビ・酵母・細菌株の移管完了と提供開始 -

理化学研究所(理研)バイオリソースセンター微生物材料開発室(BRC-JCM)は、2016年6月末に文化庁文化財部古墳壁画室からの移管作業を完了した高松塚古墳壁画およびキトラ古墳壁画[1]から分離された微生物(カビ、酵母、細菌)約730株について、2016年7月より学術利用を目的とした提供を開始します。

文化庁と国立文化財機構東京文化財研究所(東文研)らの研究グループによって、高松塚古墳およびキトラ古墳の壁画上やその周辺環境から採取した試料から微生物を分離培養し同定する一連の作業[2]が行われています。同定した微生物株は、壁画の修復に用いられる材料への影響や殺菌剤の効果などを調べる壁画の恒久保存対策に関する研究、ならびに、壁画の微生物による劣化メカニズムの解明に関する基礎研究に用いられてきました。一方で、研究を終えた微生物株の保存・維持が課題となっていました。

BRC-JCMは、研究室などで維持されてきた微生物リソースの存続が危惧される場合、学術・研究的に貴重な微生物株を移管して救済する取り組み[3]を行っています。今回、高松塚古墳およびキトラ古墳の試料から分離された微生物株の中から、学術的に重要と考えられるカビ・酵母・バクテリアの約730株について、文化庁から一括した寄託を受け入れました。これによって、高松塚古墳・キトラ古墳の壁画からの微生物株の保存・維持が可能になり、BRC-JCMから世界中の研究者に対して、学術利用のための微生物株の提供が可能となりました。

微生物株は、壁画の劣化メカニズムについてさらなる研究を進めていく上で極めて貴重な微生物リソースであると同時に、古墳石室内という稀有な環境を分離源とする希少な微生物リソースです。今後、学術利用を目的とした研究や教育活動などに広く活用されていくことが期待されます。

詳細はバイオリソースセンターのホームページをご覧下さい。

国宝高松塚古墳壁画(西壁女子群像)の写真

図 国宝高松塚古墳壁画(西壁女子群像)の上に発生した暗色の微生物の斑点
暗色の微生物が赤い円で囲んだ部分の中に見える。撮影は2006年5月撮影(提供:文化庁)

補足説明

  1. 高松塚古墳壁画およびキトラ古墳壁画

    奈良県高市郡明日香村に所在する古墳で、7世紀末から8世紀初頭に築造されたと考えられている。いずれも石室内壁の漆喰上に極彩色(多彩色)の壁画が描かれている。高松塚古墳の壁画は1972年3月に発見され現地保存されてきたが、2005年6月の現地保存では壁画の劣化を食い止めることが難しいという判断から本格的な修理が始まっている。キトラ古墳の壁画は1983年11月に発見された。後に行われた石室内の調査で、壁画の各所での破損が認められ、古墳の外で保存することが決まった。2016年9月には、壁画を保存・公開する施設(キトラ古墳壁画体験館 四神の館内)が供用開始となり、壁画の公開が行われる予定。

  2. 高松塚古墳およびキトラ古墳の壁画上やその周辺環境から採取した試料から微生物を分離培養し、同定する一連の作業

    壁画の定期的な調査の際に確認されたカビや微生物バイオフィルムなどを採取し、そこから微生物の分離培養を経て、属・種レベルの同定を実施した。また、直接ゲノムDNAを抽出し非培養法によって、壁画・壁面上に形成される微生物群集の属・種レベルの構成を解析した。

  3. 微生物株を移管して救済する取り組み

    大学教員や担当職員の退職、研究プロジェクトの終了などで、これまで研究室や機関で維持されてきた微生物リソースの存続が危惧される場合が想定される。それら微生物資源には学術研究上重要なものも含まれ、一度散逸してしまうと回復や再収集は難しくなってしまう。理研BRC-JCMでは、東京大学の旧応用微生物研究所(現分子細胞生物学研究所)のIAMカルチャーコレクションなど、存続が危惧される貴重な微生物リソースを移管し、持続的利用ができるようにする取り組みをこれまでに実施してきた。

発表者

理化学研究所 バイオリソースセンター 微生物材料開発室
室長 大熊 盛也 (おおくま もりや)
専任研究員 岡田 元 (おかだ げん)
研究員 坂本 光央 (さかもと みつお)

文化庁 文化財部 古墳壁画室
古墳壁画対策調査官 建石 徹 (たていし とおる)
文化財調査官 宇田川 滋正 (うだがわ しげまさ)

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
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