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2016年7月14日

理化学研究所

NGLY1欠損症の解明に向け理研とGrace Science Foundationが連携

理研は2015年度より、米国・サンフランシスコに本拠地を構えるGrace Science Foundation(※)から研究支援ならびに研究費助成を受け、NGLY1欠損症の解明と治療標的の探索に取り組んでいます。

NGLY1欠損症は2012年に米国人医師により発見され、現在、世界で50症例に満たない希少遺伝性疾患です。糖タンパク質の糖鎖脱離酵素「N-グリカナーゼ」をコードするNGLY1遺伝子の変異が原因であり、発育不全、運動障害、てんかん、無涙症などのさまざまな症状が見られます。

理研‐マックスプランク連携研究センター糖鎖代謝学研究チームの鈴木匡チームリーダー(TL)は約25年前、哺乳類において糖タンパク質糖鎖の代謝に関わるN‐グリカナーゼ活性を発見し、その遺伝子(NGLY1)を同定して機能解析を行ってきました。その後、糖タンパク質糖鎖の代謝に関わる酵素として「エンド‐β‐N‐アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)」の遺伝子も同定しました。現在、このENGaseがNGLY1欠損症の治療標的分子となる可能性を示唆する結果を得ており、本研究をベースに治療薬の開発を目指しています。本研究はGrace Science Foundationのほか、ITビジネスの主要企業である楽天株式会社の代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏からも支援を受けています。

Grace Science Foundationの会長であり共同創始者であるマット・ウィルジー氏は「鈴木TLの20年以上に及ぶ研究に大変感銘を受けています。鈴木TLの研究室、そして理研との連携によって、NGLY1欠損症のみならず、他の代謝疾患の治療への道筋が見えてくると信じております」と述べました。

鈴木TLは「Grace Science Foundationからサポートを受けられることになり感謝しています。Grace Science Foundationの研究チームはNGLY1欠損症の治療法の確立を目指し、この分野の研究をリードしています。私はN-グリカナーゼについて長く関心を持ち続けてきましたが、私の研究が重篤な遺伝子疾患の治療に重要である可能性があると認識されて光栄に思っております」と語りました。

(※)Grace Science Foundation
クリステン・ ウィルジー、マット・ ウィルジー夫妻の娘グレースがNGLY1欠損症と診断されたことをきっかけに夫妻が設立した財団。当時、この疾患の事例は世界で5例にも達しておらず、社会におけるNGLY1欠損症に関する認識、この難病に特化した活発な研究活動やそれに係る助成、既知の知識もほぼ皆無に等しい状況であった。そのため、ウィルジー夫妻は強い信念と企業家精神で娘や同じ病気に苦しむ患者の治療法を見つけようと決意し当財団を設立した。過去6年余りに渡り、財団は米国、カナダ、イタリア、ドイツ、日本から20チーム、75名以上の研究者を招集し、国際的レベルの研究チームを結成。研究者たちはNGLY1欠損症を研究し、治療法を開発するのみならず、希少疾患研究全般を躍進させるための啓蒙活動を実施している。その活動はCNN.com(米国・テレビ メディア)、The San Francisco Chronicle(米国・ 新聞)、Der Spiegel(ドイツ・独 週刊誌)、The New Yorker(米国・ 雑誌)などで取り上げられている。
Grace Science Foundationのホームページ(英語)

鈴木匡チームリーダー、Grace Science Foundationのクリステン・ウィルジー氏、マット・ウィルジー氏の写真

左から鈴木匡チームリーダー 、Grace Science Foundationのクリステン・ウィルジー氏、マット・ウィルジー氏

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