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2016年7月22日

理化学研究所

SACLAが「SXFELビームライン」の共用運転を開始

―軟X線FELと硬X線FELを同時に供給する世界初の施設を実現―

理化学研究所(理研)、高輝度光科学研究センター(JASRI)は、X線自由電子レーザー(XFEL:X-ray Free-Electron Laser)施設[1]SACLA[2]の「SXFELビームライン」について7月15日に初のユーザーによる利用研究課題を実施しました。

SACLAは波長0.1ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)以下という世界最短波長の硬X線FEL[3]を発振する施設として、これまでに数多くの成果をあげてきました。一方で、触媒機能の解明やEUVリソグラフィのための基盤研究など、軟X線が得意とする領域が存在することから、軟X線FEL[3]にも大きな期待が寄せられていました。

そこで理研とJASRIは、SACLAのプロトタイプ機として利用された「SCSS試験加速器[4]」も活用しながら、既存のBL1で軟X線FELを発振するための高度化を進めてきました。2015年10月には、波長30ナノメートル付近においてレーザー発振を確認し、その後の調整運転を経て、2016年4月にはBL1の正式名称を「SXFELビームライン」としています(SXとはSoft-X ray=軟X線の略)。7月15日にはSXFELビームラインで最初の利用研究課題として、東京大学の松田巌准教授らの研究グループによる実験が実施されました。

SXFELビームラインは今後、さらなる調整により、2016年秋以降は最短波長が12nm以下まで到達する見込みです。

SACLAは、世界で唯一の軟X線FELと硬X線FELを同時に供給する施設として、さまざまな学術・産業の発展に今後も一層貢献していきます。

SXFELビームラインの実験ステーションの写真

図1 SXFELビームラインの実験ステーション

SXFELビームラインで初の利用研究実験を実施した松田准教授のグループの写真

図2 SXFELビームラインで初の利用研究実験を実施した松田准教授のグループ

関連プレスリリース

補足説明

  1. X線自由電子レーザー(XFEL:X-ray free electron laser)

    近年の加速器技術の発展によって実現したX線領域のパルスレーザー。従来の半導体や気体を発振媒体とするレーザーとは異なり、真空中を高速で移動する電子ビームを媒体とするため、原理的な波長の制限はない。

  2. SACLA

    理化学研究所と高輝度光科学研究センターが共同で建設した日本で初めてのXFEL施設。科学技術基本計画における5つの国家基幹技術の1つで、2006年度から5年間の計画で建設・整備された。2011年3月に施設が完成し、SPring-8 Angstrom Compact free electron LAserの頭文字を取ってSACLAと命名された。2011年6月に最初のX線レーザーを発振、2012年3月から共用を開始した。0.1ナノメートル以下という世界最短波長のX線レーザーを発振する能力を有する。 詳細はX線自由電子レーザー SACLAのホームページ

  3. 軟X線FEL、硬X線FEL

    軟X線FELとは波長が0.3~数10nm付近の軟X線領域の自由電子レーザー、硬X線FELとは波長が0.3nm以下と軟X線より短い硬X線領域の自由電子レーザー。レーザーを用いる実験では試料のサイズや特性に応じて最適な波長のレーザーを用いる。工業的に重要な触媒等、軟X線領域での観察に適した試料も多く存在する。

  4. SCSS試験加速器

    SACLAのプロトタイプ機として、SPring-8サイトに建設された小型の自由電子レーザー装置。2006年に真空紫外光のレーザー発振に成功し、加速器・光源・利用の各方面について、様々な試験研究が実施された。2013年5月に運転を休止した。SCSSは、「SPring-8 Compact SASE Source」の略。SASEは自己増幅自発放射(Self Amplified Spontaneous Emission)を意味し、反射鏡を使わずに光を増幅してレーザー発振を得る方法を指す。

発表者

理化学研究所 放射光科学総合研究センター XFEL研究開発部門
部門長 田中 均 (たなか ひとし)

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
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