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2018年6月29日

理化学研究所
九州大学
東京工業大学
バルセロナ・スーパーコンピューティング・センター
富士通株式会社
株式会社フィックスターズ
科学技術振興機構

スーパーコンピュータ「京」がGraph500において7期連続で世界第1位を獲得

-ビッグデータの処理で重要となるグラフ解析で最高レベルの評価-

理化学研究所(理研)、九州大学、東京工業大学、バルセロナ・スーパーコンピューティング・センター、富士通株式会社、株式会社フィックスターズによる国際共同研究グループは、ビッグデータ処理(大規模グラフ解析)に関するスーパーコンピュータの国際的な性能ランキングであるGraph500において、スーパーコンピュータ「京(けい)」[1]による解析結果で、2017年11月に続き7期連続(通算8期)で第1位を獲得しました。

このたび、ドイツのフランクフルトで開催中のHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング:高性能計算技術)に関する国際会議「ISC2018」で6月27日(日本時間6月27日)に発表されました。

大規模グラフ解析の性能は、大規模かつ複雑なデータ処理が求められるビッグデータの解析において重要となるもので、「京」は運用開始から6年以上が経過していますが、今回のランキング結果によって、現在でもビッグデータ解析に関して世界トップクラスの極めて高い能力を有することが実証されました。本成果の広範な普及のため、国際共同研究グループはプログラムのオープンソース化を行い、GitHubレポジトリより公開中です。今後は大規模高性能グラフ処理のグローバルスタンダードを確立して行く予定です。

※研究支援
本研究の一部は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業CREST「ポストペタスケール高性能計算に資するシステムソフトウェア技術の創出(研究総括:佐藤三久)」における研究課題「ポストペタスケールシステムにおける超大規模グラフ最適化基盤(研究代表者:藤澤克樹、拠点代表者:鈴村豊太郎)」および「ビッグデータ統合利活用のための次世代基盤技術の創出・体系化(研究総括:喜連川優)」における研究課題「EBD:次世代の年ヨッタバイト処理に向けたエクストリームビッグデータの基盤技術(研究代表者:松岡聡)」の一環として行われました。

Graph500上位10位

このたび公開されたGraph500の上位10位は以下の通りです。

Graph500のホームページ(英語)

Graph500とは

近年活発に行われるようになってきた実社会における複雑な現象の分析では、多くの場合、分析対象は大規模なグラフ(節と枝によるデータ間の関連性を示したもの)として表現され、それに対するコンピュータによる高速な解析(グラフ解析)が必要とされています。例えば、インターネット上のソーシャルサービスなどでは、「誰が誰とつながっているか」といった関連性のある大量のデータを解析するときにグラフ解析が使われます。また、サイバーセキュリティや金融取引の安全性担保のような社会的課題に加えて、脳神経科学における神経機能の解析やタンパク質の相互作用分析などの科学分野においてもグラフ解析は用いられ、応用範囲が大きく広がっています。こうしたグラフ解析の性能を競うのが、2010年から開始されたスパコンランキング「Graph500」です。

規則的な行列演算である連立一次方程式を解く計算速度(LINPACK[2])でスーパーコンピュータを評価するTOP500[3]においては、「京」は2011年(6月、11月)に第1位、その後、2018年6月25日に公表された最新のランキングでは第16位です。一方、Graph500ではグラフの探索という複雑な計算を行う速度(1秒間にグラフのたどった枝の数(TEPS[4]))で評価されており、計算速度だけでなく、アルゴリズムやプログラムを含めた総合的な能力が求められます。

Graph500の測定に使われたのは、「京」が持つ88,128台のノード[5]の内の82,944台で、約1兆個の頂点を持ち16兆個の枝から成るプロブレムスケール[6]の大規模グラフに対する幅優先探索問題を0.45秒で解くことに成功しました。ベンチマークのスコアは38,621GTEPS(ギガテップス)です。Graph500第1位獲得は、「京」が科学技術計算でよく使われる規則的な行列演算だけでなく、不規則な計算が大半を占めるグラフ解析においても高い能力を有していることを実証したものであり、幅広い分野のアプリケーションに対応できる「京」の汎用性の高さを示すものです。また、それと同時に、高いハードウェアの性能を最大限に活用できる研究チームの高度なソフトウェア技術を示すものと言えます。「京」は、国際共同研究グループによる「ポストペタスケールシステムにおける超大規模グラフ最適化基盤」および「EBD:次世代の年ヨッタバイト処理に向けたエクストリームビッグデータの基盤技術」の2つの研究プロジェクトによってアルゴリズムおよびプログラムの開発が行われ、2014年6月に17,977GTEPSの性能を達成し第1位、さらに「京」のシステム全体を効率良く利用可能にするアルゴリズムの改良を行い、2倍近く性能を向上させ、2015年7月に38,621GTEPSを達成し第1位でした。そして今回のランキングでもこの記録により、世界第1位を7期連続(通算8期)で獲得しました。

これまでの幅優先探索問題(BFS)[7]に加えて前回から最短路問題(SSSP)[8]に対する結果も公開されており、今後はさらに別の問題への適用も予定されています。

今後の展望

大規模グラフ解析においては、アルゴリズムおよびプログラムの開発・実装によって性能が飛躍的に向上する可能性を示しており、今後もさらなる性能向上を目指していきます。また、上記で述べた実社会の課題解決および科学分野の基盤技術へ貢献すべく、スーパーコンピュータ上でさまざまな大規模グラフ解析アルゴリズムおよびプログラムの研究開発を進めます。

関連サイト

Graph500のホームページ(英語)
理研計算科学研究センター
大規模グラフ解析プログラムのGitHubレポジトリ(英語)

補足説明

  • 1.
    スーパーコンピュータ「京(けい)」
    文部科学省が推進する「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」プログラムの中核システムとして、理研と富士通が共同で開発を行い、2012年に共用を開始した計算速度10ペタフロップス級のスーパーコンピュータ。「京(けい)」は理研の登録商標で、10ペタ(10の16乗)を表す万進法の単位であるとともに、この漢字の本義が大きな門を表すことを踏まえ、「計算科学の新たな門」という期待も込められている。
  • 2.
    LINPACK
    米国のテネシー大学のJ. Dongarra博士によって開発された規則的な行列計算による連立一次方程式の解法プログラムで、TOP500リストを作成するために用いるベンチマーク・プログラム。ハードウェアのピーク性能に近い性能を出しやすく、その計算は単純だが、応用範囲が広い。
  • 3.
    TOP500
    TOP500は、世界で最も高速なコンピュータシステムの上位500位までを定期的にランク付けし、評価するプロジェクト。1993年に発足し、スーパーコンピュータのリストを年2回発表している。
  • 4.
    TEPS
    Graph500ベンチマークの実行速度を表すスコア。Graph500ベンチマークでは与えられたグラフの頂点とそれをつなぐ枝を処理する。Graph500におけるコンピュータの速度は1秒間あたりに調べ上げた枝の数として定義されている。TEPSはTraversed Edges Per Secondの略。
  • 5.
    ノード
    スーパーコンピュータにおけるオペレーティングシステム(OS)が動作できる最小の計算資源の単位。「京」の場合は、一つのCPU(中央演算装置)、一つのICC(インターコネクトコントローラ)、および16GBのメモリから構成される。
  • 6.
    プロブレムスケール
    Graph500ベンチマークが計算する問題の規模を表す数値。グラフの頂点数に関連した数値であり、プロブレムスケール40の場合は2の40乗(約1兆)の数の頂点から構成されるグラフを処理することを意味する。
  • 7.
    幅優先探索問題(BFS)
    最短路問題と同じく、グラフ上で指定された二つの頂点間の距離が最小となる経路を求める問題。グラフの各枝の重みが等しい場合を想定しており、主にインターネット上のソーシャルデータや金融データなどの解析に用いられる。
  • 8.
    最短路問題(SSSP)
    幅優先探索問題と同じく、グラフ上で指定された二つの頂点間の距離が最小となる経路を求める問題。グラフの各枝の重みが異なる場合を想定しており、主に道路あるいは鉄道などの交通データ上での経路案内などに用いられる。

機関窓口

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