刊行物

[理研ニュース 2009年10月号]

原酒

ドキドキしてる? ワクワクしてる? その感動を伝えてる?

木原久美子 KIHARA Kumiko 基幹研究所 守屋バイオスフェア科学創成研究ユニット 特別研究員

これまでに発行された『RikaTan』の一部
しろありん(右)と筆者(左)。2009年8月開催「理研エコセミナー@アキバ」にて
観る・知る・遊ぶ 理科の楽しさを実感!! 理科の探検『RikaTan』(発行:文一総合出版、編集長:左巻健男)(写真1)は、理科や科学好きの大人のための月刊誌です。創刊から2年半が過ぎ、春に行われた誌面リニューアルとともに新たな読者が増えてきました。紙媒体離れのために雑誌の販売部数が落ち、理科離れも進む中で、なぜこの雑誌が注目を集めているのでしょうか。

私は企画・編集委員として、この雑誌に創刊から携わってきました。というのも、理科の解説時に「なぜ退屈で分かりにくい説明になるの?」と疑問を持つ場面に繰り返し出合い、日ごろから伝えることの必要性や大切さを強く感じていたため、理科の面白さを多くの大人に実感してもらえるような雑誌をつくることは良い機会だと思えたからです。この雑誌は、科学に直接携わっている人、主婦、学生、先生や会社員など、異なる背景を持つ全国各地の100人ほどの委員によりつくられています。雑誌の作成過程では、立場の違うみんながアイデアを出し合い、大人が理科を楽しめる雑誌になるようにと日々議論が続いています。

今では読者は、理科の教員や研究者のみならず、理科に苦手意識を持つ学校の先生や母親、学生、実験教室の実演者、退職者などの幅広い層に広がりました。大人が日常の生活の中で触れていることを、あらためて理科的・科学的視点から見直してみると、自然に興味が持てたり納得できることがあるからなのでしょう。例えば、「居酒屋の生物学」という記事では、酒のネタとしても楽しめるトピックを扱っています。例えば、マグロの赤、タイの白、サケのピンク……、同じ魚の肉でこれほど色が違うのはなぜなのでしょうか。大人だからこそ大人の目を通して理科に触れ、ドキドキしたりワクワクする感覚を再体験できるようなものが求められているのかもしれません。

ドキドキ、ワクワクする感覚。それを感じながら、科学の謎を解き明かすのは私たち研究者・科学者の務めであり、この上ない喜びだと考えています。多くの人の支えのおかげで、私はドキドキやワクワクに満ちた探検をしています。その支えのお礼に、どんなすてきな世界が見えたのかを伝え、再びドキドキやワクワクを共感できる現場が増えればいいなと願っています。最近ではサイエンスカフェなどのアウトリーチ活動が盛んに行われるようになってきました。理研という科学の最先端を切り拓く組織で行われている日々のドキドキやワクワクを、研究者・科学者だけが感じるのではなく、社会へと還元できればすてきだと思います。

ここ理研で私は、シロアリの小さな世界に広がる大きな謎に挑んでいます。シロアリは害虫として知られている嫌われ者です。しかし、私たちが持っていない能力を持っています。腸内の微生物と共生し、ほかの生物が利用しづらい枯れ木を栄養にできるのです。共生システムを理解することは基礎科学として重要な課題であり、シロアリ共生系が持つ能力は環境問題を解決し、エコの推進に役立つのではないかと注目されています。シロアリの世界を探検する中で直面するドキドキやワクワクを、私は“しろありん”(写真2)とともに伝え、多くの人と共感していきたいと考えています。一緒にドキドキ、ワクワクしましょう!