プレスリリース 独立行政法人 理化学研究所
真夜中の強い光は体内時計をバラバラにする
- 体内時計の停止は時計細胞同士の脱同調によることを実証 -
平成19年10月22日
◇ポイント◇
  • 時計細胞に光受容体であるメラノプシンを導入し、「光が見える」細胞を創出
  • 試験管中で体内時計を停止させて、時計細胞の状態を詳細に観察
  • 細胞リズムの停止か、細胞同士の脱同調か−30年以上にわたる難問を解決
 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、「真夜中に強い光を浴びると体内時計が一時的に停止する現象(シンギュラリティ現象)」のメカニズムが、個々の時計細胞のリズムの停止ではなく、個々の時計細胞のリズムがバラバラになった結果、時計全体のリズムが平坦化してしまうことを明らかにしました。これは、理研 発生・再生科学総合研究センター(竹市雅俊センター長)システムバイオロジー研究チームの上田 泰己チームリーダーらと近畿大学の重吉 康史教授、国立大学法人名古屋大学の近藤 孝男教授、八木田 和弘助教授(現・大阪大学 准教授)らのチームとの共同研究による成果です。
 1970年に、真夜中に強い光を浴びると体内時計が一時的に停止してしまうという不思議な現象が発見され、その後「シンギュラリティ現象」と名付けられました。1975年には、これがどのようなしくみで起こるのかについて、個々の時計細胞リズムの停止、時計細胞同士の脱同調という2つの仮説が提出されましたが、以来30年以上もの間、決定的な実証実験に成功した例はありませんでした。
 研究チームでは、哺乳類時計細胞に光受容体であるメラノプシン※1を導入し、光に応答することのできる(光が見える)培養時計細胞を創出しました。次に、この時計細胞に対して様々なタイミングや持続時間で光刺激を与えて、体内時計の位相※2振幅※3の大きさを自在に操り、試験管の中で体内時計を一時的に停止させることに成功しました。さらに、停止したように見える時計細胞の概日リズム(約24時間周期のリズム)を1細胞単位で観察しました。その結果、体内時計を構成しているひとつひとつの細胞の時計が止まるのではなく、それぞれの細胞がバラバラに時を刻んでいるために全体としての体内時計が一時的に止まったように見えていることを初めて実証し、30年以上にわたる難問を解決することになりました。
 本研究は、文部科学省の科学研究費補助金「ゲノム特定領域研究(生命システム情報)」の一環として進めるとともに、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「化合物等を活用した生物システム制御基盤技術開発」の支援を受けました。英国科学誌『Nature Cell Biology(ネイチャー・セル・バイオロジー)』(11月号)に掲載されるに先立ち、オンライン版(10月21日付け:日本時間10月22日)に掲載されます。


1. 背 景
 体内時計は、バクテリア、ショウジョウバエ、マウス、ヒトなど多くの生物種に存在し、ヒトでも睡眠・覚醒をはじめとする様々な生理機能に影響を与える重要なシステムです。この体内時計システムは、約24時間周期で数多くの遺伝子がリズミカルに機能する複雑な遺伝子ネットワークから成り立っていると考えられています。さらに、哺乳類の場合には、体内時計のセンターとして働く脳の視交叉上核の時計のほか、身体の様々な部分に細胞単位で時計があり、それぞれの時計細胞が概日リズム(約24時間周期のリズム)を刻みながら、他の時計細胞のリズムと同調することによって、個体全体としてのリズムを作り出していることが知られています。
 真夜中に強い光を浴びると体内時計が一時的に停止する現象「シンギュラリティ現象」は、1970年に米国のArthur T. Winfree(アーサー・ウィンフリー)がショウジョウバエの行動リズムに見出して以来、藻類から哺乳類までの多くの生物種で観察されており、体内時計システムに共通した特徴であると考えられています。ところがこれまで多くの生物でこの現象が確認されてきたものの、そのメカニズムを充分に説明できる実験研究は報告されておらず、理論的な側面から2つのモデルが提案されるのみに留まっていました。
 1つ目のモデルは、時計細胞の概日リズムの停止、つまり、強い光により各細胞の時計が特異点(シンギュラリティポイント)に落ち込んでしまい、時計細胞ごとにみても時計のリズムが停止しているとの考え方です(図1左)。
 2つ目のモデルは、時計細胞の概日リズムは維持されているものの、各細胞の時計の状態(位相)がバラバラになっていて(脱同調)、互いのリズムを打ち消し合ってしまうために、細胞集団全体としては概日リズムの振幅がほぼ平坦に見えてしまうとの考え方です(図1右)。
 これら2つのモデルを検証するためには、シンギュラリティ現象を引き起こすことによって体内時計システムを一時的に停止させ、同時に個々の時計細胞の状態を詳細に観察する必要がありました。しかしながら、体内時計システムにシンギュラリティ現象を引き起こすことは一般に難しく、個々の時計細胞の状態を詳細に観察することも高度な技術を要することから、30年以上もの間この問題は未解決のままとなっていました。


2. 研究手法と研究成果
 システムバイオロジー研究チームの鵜飼 英樹研究員、小林 徹也研究員らは、もし試験管の中で体内時計を一時的に停止させることができれば、個々の時計細胞の状態が詳細にわかり、ひいてはこの難問を解決できると考えました。
 シンギュラリティ現象を引き起こす刺激条件は非常に限局されているため、この現象を試験管の中の細胞で再現するには、厳密に制御可能な外的刺激を高精度に与える実験システムを確立することが必要不可欠です。用いる外的刺激としては、試験管内の実験でよく使われる薬剤投与のような外的刺激ではなく、光照射のように定量的に制御可能な外的刺激が理想的だと考えられました。そこで研究チームは、本来光を感じることのできない哺乳類時計細胞に、メラノプシンというタンパク質を人工的に導入し、光刺激に対して応答性を示す時計細胞を創出しました。このタンパク質は光刺激により細胞内のカルシウム濃度を変化させることが知られていたものです。また、カルシウムの濃度変化は時計細胞の状態に影響を与えることも知られていました。この光を感じることができるようになった時計細胞集団に対し、タイミングや持続時間を変化させて光を照射することで、細胞の時計の位相や振幅の大きさを自在に変化させることを可能にしました。この手法と概日リズムの1細胞イメージング技術を用いて、体内時計システムの動的特性を説明可能な理論を構築し、30年以上にわたって謎とされてきたシンギュラリティ現象の解明に成功しました。
(1) メラノプシンを用いた光応答性細胞の確立
 哺乳類の細胞の多くは単独でも体内時計システムを内在しており、研究室で何代にもわたって継代されたような培養細胞でさえもそれぞれの細胞が独立して遺伝子発現の概日リズムを示すことが報告されています。研究チームは、マウスの胎児皮膚から分離した培養細胞であるNIH3T3細胞に時間的・空間的・定量的に高い精度で制御可能な光による刺激を与えるために、光受容体であるメラノプシンを導入し、光応答性をもつ時計細胞を創出しました(図2)。
(2) 光刺激に対する時計細胞集団の概日リズムの位相応答・振幅応答の測定
 研究チームは以前に、時計遺伝子であるPer2遺伝子のプロモーターの下流に蛍の発光タンパク質であるルシフェラーゼ(発光物質が光を放つ化学反応を触媒する作用を持つ酵素)をつないだプラスミドを時計細胞に導入し、時計細胞集団の概日リズムを発光として定量的に測定することができるシステムを構築しました。また、この測定システムのハイスループット(高速処理)化にも成功しています。これらの手法を用いて、光応答性を獲得した時計細胞集団に対して様々な時間で光を照射し、時計細胞集団の概日リズムが光照射に対してどのように応答するかを測定しました。
 まず、時計細胞集団の概日リズムの位相が、光照射によってどのように前進・後退するのかを定量化し、位相応答を抽出しました(図3)。その結果、メラノプシンを導入した光応答性細胞では、光照射のタイミングに依存して位相の前進・後退が誘導されることが明らかになりました。位相は、主観的昼頃(培養時計細胞にとっての真昼)と主観的真夜中頃(培養時計細胞にとっての真夜中)を境として、前進または後退することがわかりました。つまり、主観的真夜中頃から主観的昼頃の間に光を照射すると位相は前進し(細胞の時計が進む)、逆に主観的昼頃から主観的真夜中頃の間に光を照射すると位相は後退する(細胞の時計が遅れる)ことがわかりました。
 また、光照射によって位相の変化だけでなく、概日リズムの振幅も変化しました。光照射前後の振幅を比較することにより、光照射のタイミングに依存的な振幅応答を定量化し、振幅応答を抽出しました(図4)。その結果、振幅は、光を主観的昼頃に照射した場合に最大化し、主観的真夜中頃にあてた場合に最小化しました。つまり、光を主観的夜中頃に照射すると、大幅に振幅を減少することになります。
 研究チームは、このタイミング周辺でさらに詳細な実験を行うことにより、光によって振動が完全に止まってしまう(つまりシンギュラリティ現象を引き起こす)タイミングが存在することを明らかにしました(図5赤線)。また、この振動停止後の細胞に再び光を照射することにより振動が回復することから、時計は完全に壊れたわけではなく一時的に停止していることが明らかになりました。以上のようにして、シンギュラリティ現象を試験管の中で再現することに成功しました。
(3) 1細胞イメージング技術による解析
 シンギュラリティ現象の根底にあるメカニズムが、細胞集団を構成する各細胞の時計の停止なのか、それとも各細胞間の脱同調なのかを直接的に証明するために、メラノプシンを導入した光応答性細胞を用いて1細胞レベルでの概日リズムの測定を行いました。図6左上に示すように、通常の細胞集団の場合、それぞれの細胞の位相は時間とともに徐々に分散していきます。これは、細胞集団全体での振幅の低下として表れます(図6黒線)。そこで、(2)で明らかにした集団レベルでシンギュラリティ現象が生じるタイミング(主観的真夜中付近)で光を照射したところ、メラノプシンを導入した光応答性細胞では、それぞれの細胞の位相のばらつきが急激に増幅し、完全に脱同調してしまうことが明らかとなりました(図6左下)。この脱同調が、光を照射して、反応した細胞の異常振動によるものではないことを確認するために、位相が分散した光照射後の細胞の位相を1細胞単位で確認し、光照射後も各細胞においては概日リズムが続いていることを証明しました(図6右下)。
(4) シミュレーション上および個体レベルでも立証
 これらの結果から、光照射によって誘導された培養細胞におけるシンギュラリティ現象は、1細胞レベルでの振動の停止ではなく、細胞集団内の細胞の脱同調がもたらす全体としての振幅の低下であることが明らかとなりました。
 なぜ主観的真夜中付近に限ってシンギュラリティ現象が起こるのか、については、次の仮説を立てました。細胞集団の中の各細胞の位相は、厳密にそろっているわけではなく、一定のゆらぎがあります。主観的真夜中付近は、位相のずれが後退から前進へ変わる時点であり、このタイミングに差し掛かった細胞集団の中には、変換点より先行した位相を持つ細胞と変換点より遅れた位相を持つ細胞が混在していることになります。したがって、このタイミングで光を照射することにより、位相が先行している細胞の位相はより前進し、位相が遅れている細胞はより遅れるため、細胞集団の持つ位相の幅は、より広がるのだろうと考えられます。逆に主観的真昼付近での光照射後の振幅の増加は、細胞集団の同調により説明可能です。実際に、メラノプシンを導入した光応答性細胞に主観的真昼付近で光を照射した場合の1細胞測定を行ったところ、それぞれの細胞の位相の同調が起こりました。このタイミング付近は、位相応答曲線において位相前進から位相後退への変換点であることからも、この周辺に存在する細胞集団の各細胞は、光照射により変換点付近に収束してくることが想像されます。
 これらを証明するために、光による同調・脱同調の機構を数理モデル化し、実験データと比較することにより、コンピューター上でそれを証明することにしました。図7に示されているように、この数理モデル(赤線)は、実験的に求められたすべての位相・振幅応答(点)を非常によい精度で再現することが明らかになり、同調・脱同調の機構が一般的なものであることがコンピューター上での解析結果からも立証できました。
 試験管の中では、シンギュラリティ現象は時計細胞の状態がバラバラになることによって起こりましたが、生体内でも同様の現象が起こっているのでしょうか?研究チームは、ラットに主観的真夜中付近で光を照射し、その視交叉上核の切片を用いて、時計遺伝子のひとつであり朝に発現するPer1遺伝子の発現量を解析しました。この結果、主観的真夜中付近で光を照射されたラットでは、視交叉上核全体で見ると光照射後のPer1遺伝子の発現が時間に関わらず発現している一方で、視交叉上核の各部位を詳細に観察するとそれぞれの部位では明確なリズムを維持していることがわかりました(図8)。また、主観的真夜中付近で光を照射したラットでは、昼夜の行動量の差が低くなることについても確認しました。これにより、生体(個体)レベルでも、培養細胞や数理モデルによるシミュレーションと同様に脱同調現象が起こっていることが明らかになりました。


3. 今後の期待と課題
 今回の研究によって、シンギュラリティ現象のメカニズムとともに、体内時計システムの振幅の低下や回復などが起こるメカニズムについても理解が進みました。特定の時間に強い光の刺激を受けると、生体内での各細胞の体内時計の脱同調・同調が誘導され、体内時計の弱化・強化を引き起こします。私たちの体には細胞レベルでの体内時計が複数あり、それぞれが互いに同調しながらも一定の範囲の揺らぎを持ってリズムを刻んでいます。このように複数の時計細胞からなる体内時計システムは、外的環境の大きな変化に適応する能力と外的環境の多少の変化に惑わされない一定のリズムの維持との両方を兼ね備えた、バランスの取れたシステムです。このような集団としての性質を積極的に利用して強い光刺激を受ける時間を人為的にコントロールすることは、航空機での移動による時差ぼけの緩和方法や、体内時計との関連が指摘されている鬱病や睡眠障害などの治療法を一歩先に進める可能性があります。
 また、今回の研究は、システムバイオロジーの概念に基づいた実験手法に特徴があります。時間的・空間的・定量的に切れが良く確実に制御できる光という刺激を用い、ハイスループットな測定系、1細胞レベルでの分解能の高い詳細なモニタリング系、そして数理モデルをあわせることによって、概日リズムをシステムとして理解することに一歩近づくことができました。このように動的で複雑な生命現象をシステムとして理解するためには、未解決の問題に「光をあてる」ことのできるような新しい手法や、ハイスループット測定技術、分解能の高い測定技術の開発が今後も必須となります。


(問い合わせ先)

独立行政法人理化学研究所
 発生・再生科学総合研究センター
  システムバイオロジー研究チーム
   チームリーダー  上田 泰己(うえだ ひろき)

Tel: 078-306-3190 / Fax: 078-306-3194
 神戸研究推進部 企画課

Tel: 078-306-3008 / Fax: 078-306-3039

(報道担当)

独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当

Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
Mail: koho@riken.jp


<補足説明>
※1 メラノプシン
網膜の光感受性神経節細胞などに限定的に存在する光受容タンパク質。光依存的に細胞内カルシウム濃度を上昇させることにより時計遺伝子にも影響を与えることが知られている。
※2 位相
時計細胞の状態のこと。平たく言えば、細胞の持つ体内時計の「時間」を表す。今回の実験においては、位相は0〜24で表され、概日リズム(24時間)のうち、「0」を「主観的朝」のはじまりとし、6が「主観的真昼」、12が「主観的夜」のはじまり、18が「主観的真夜中」に相当する。細胞や生体の持つ体内時計の時間を「主観的」と表すのは、体内時計の時間が、必ずしも環境の「客観的」な時間とは一致しないためである。しかしながら、通常は、体内時計の主観的時間は環境の客観的な時間と一致し、例えば位相0は朝光があたり始める時間に相当する。
※3 振幅
ここで振幅は時計細胞の概日リズムの「強さ」を表す。振幅が大きいほど強い(外的影響を受けにくい)時計と言える。


図1 シンギュラリティ現象を説明する2つのモデル
特定の外部刺激(強い光)により、それぞれの時計細胞の概日リズムが止まってしまう(停止)とする仮説。
特定の外部刺激(強い光)により、それぞれの時計細胞の概日リズムがバラバラとなり(脱同調)、集団としての振幅が打ち消されるとする仮説。


図2 メラノプシンによる光応答能の獲得
メラノプシンを導入した光応答性細胞
メラノプシンは光依存的に細胞内カルシウム濃度を上昇させる。細胞内カルシウム濃度の上昇は細胞の体内時計に影響を与えるため、メラノプシンを導入した光応答性細胞は、光依存的に概日リズムの位相・振幅が変化する。
光を受けた光応答性培養細胞の応答曲線
赤線は光を照射した場合、青線は光を照射しない場合。光を照射したことによって振幅が大きくなり、また位相は前にずれている(赤線)。


>>拡大図
図3 時計細胞集団の位相応答性
光照射による時計細胞集団の概日リズムの位相の変化
位相が2時間毎に異なる12組のメラノプシンを導入した光応答性細胞(縦軸)に、0.5、1、3、6、12時間の5種類の長さで白色光を照射した(黄色の縦線が光を照射した時間)。縦軸は細胞の位相、横軸は実時間を示す。ピンク色の部分は昼に発現する時計遺伝子Per2の発現量が高く、細胞時計が昼の状態。緑色の部分はPer2遺伝子の発現量が低く、細胞時計が夜の状態。
位相応答
メラノプシンを持つ光応答性細胞とメラノプシンを持たない光不応答性の細胞の位相を比較することにより、光照射に対する位相応答を求めた。縦軸は位相のずれ、横軸は光を照射した際の位相を示す(上図の縦軸に対応)。光を照射した際の位相(時計細胞の時間)により、位相が前進した(細胞の時計が進んだ)場合は、位相の差を(+)の時間(h)で示し、位相が後退した(細胞の時計が遅れた)場合は(−)の時間で示している。位相は、主観的真昼頃(横軸6付近)と主観的真夜中頃(横軸18付近)を境に前進または後退することがわかる。


>>拡大図
図4 時計細胞集団の振幅応答性
光照射による時計細胞集団の概日リズムの振幅の変化
位相が2時間毎に異なる12組のメラノプシンを導入した光応答性細胞(縦軸)に、0.5、1、3、6、12時間の5種類の長さで白色光を照射した(黄色の縦線が光を照射した時間)。縦軸は細胞の振幅、横軸は実時間を示す。ピンクに近いほど振幅が強く(時計が強い)、緑に近いほど振幅が弱い(時計が弱い)。
振幅応答
光照射前後の振幅を比較することにより、振幅応答を求めた。縦軸は振幅の変化を示す。光照射前の振幅を1とし、照射後の振幅を比で示す。横軸は光を照射した際の位相を示す(上図の縦軸に対応)。光を照射した際の位相(細胞時計の時間)により、振幅が強くなったり、弱くなったりする。振幅(時計の強さ)は、光を主観的昼頃(横軸6付近)に照射した場合に最大化し、主観的真夜中頃(横軸18付近)にあてた場合に最小化している。


図5 哺乳類時計細胞集団のシンギュラリティ現象
青線 光応答性でない時計細胞集団は光刺激に影響されずに振動を続ける。通常は、時間経過とともに細胞同士の同調性が自然に減衰し、全体としての振幅は徐々に小さくなる。
赤線 光応答性細胞集団は、ある特定のタイミングで光を照射することにより振幅が消失する。これらの細胞は、再度光を照射することにより振幅が回復し概日リズムが再開する。


図6 概日リズムの1細胞測定
光応答性のない時計細胞
光応答性でない時計細胞は光に影響されずに振動を続ける。時間経過にとともに細胞同士の同調性が自然に減衰し、全体としての振幅が徐々に小さくなる(左図黒線)。右図は1細胞単位の位相を示す。徐々にずれているのが分かる。
光応答性のある時計細胞
光応答性のある時計細胞は、ある特定のタイミングで光を照射することにより位相が分散し、細胞集団としての振幅が失われる(左図黒線)。右図から、光照射により位相のずれ(ピンクの傾き)は急激に大きくなるが、個々の細胞は振動を続けていることがわかる。


図7 実験から得られたデータとシミュレーション結果との相関
点は実験により得られたデータ。赤線はシミュレーション結果。実験データとシミュレーション結果が一致していることがわかる。


図8 ラット個体での検証
主観的真夜中付近で光を照射したラットの脳にある視交叉上核の切片。Per1遺伝子の発現が黒点で表されている。
光照射なしの場合。主観的昼である0〜12の間に多く発現し、主観的夜である12〜24の間に発現が減少している。
主観的真夜中付近で光照射した場合。切片全体としては、光照射後のPer1遺伝子の発現が脱同調し、時間に関わらず発現しているが、部分的に見るとリズムを維持していることがわかる。

<< 戻る [Go top]
copyright (c) RIKEN, Japan. All rights reserved.