プレスリリース 独立行政法人 理化学研究所
生殖細胞の誕生に必須な遺伝子「Prdm14」の発見
- Prdm14の欠損は、精子・卵子がまったく形成しない成体に -
平成20年7月12日
◇ポイント◇
  • Prdm14は胎児期の生殖細胞だけで発現
  • Prdm14を欠損すると、生殖細胞の多能性獲得・ゲノム再編成が破綻
  • 生殖細胞誕生機構の全容解明に大きな前進
 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、ほ乳類の代表的モデル生物であるマウスで、生殖細胞の誕生過程に必須な遺伝子Prdm14を同定しました。Prdm14遺伝子は、胎児期の生殖細胞だけで発現し、Prdm14遺伝子を欠損すると、外見上は正常ですが、精子・卵子がまったく形成しない成体になることを明らかにしました。理研発生・再生科学総合研究センター(竹市雅俊センター長)哺乳類生殖細胞研究チーム(斎藤通紀チームリーダー)の山路剛史研修生(京都大学大学院生命科学研究科大学院生)らによる成果です。
 ヒトを含む多細胞生物を構成する細胞群の中で、生殖細胞は、新しい個体を形成し、次世代に遺伝情報を継承できる唯一の細胞系譜※1です。そのため、その能力を支える分子機構の解明は、生物学において最も本質的で重要な課題の1つで、生殖医学、生殖工学、再生医学の発展に寄与する基盤情報を提供すると期待されています。
 研究チームは、これまでに開発した単一細胞マイクロアレイ法※2を用い、マウスの発生過程で、生殖細胞の起源となる始原生殖細胞(精子及び卵子の源となる細胞)に発現する全遺伝子群を捉えることに成功しました。今回、その中の1つであるPrdm14遺伝子が、胎児期の始原生殖細胞だけで発現し、成体に成長すると、精子・卵子を含めて、どの細胞・組織にも発現していないことがわかりました。さらに、Prdm14遺伝子を欠損した個体の解析を行ったところ、一見正常な成体になるものの、オス・メスともに不妊であり、精子・卵子が完全に欠損していることがわかりました。詳細な解析の結果、Prdm14遺伝子を欠損すると、胚の中で始原生殖細胞が正しく形成できず、非常に早い段階で生殖細胞が消失してしまうこと、その原因が生殖細胞の誕生過程に伴う潜在的多能性の再獲得とゲノム再編成が破綻してしまうためであることを突き止めました。すなわち、Prdm14タンパク質が、それら2つの過程に重要な機能を発揮していることになります。これまでの研究から、生殖細胞の誕生過程には、Blimp1(別名Prdm1)がかかわることが知られています。今回、さらにPrdm14遺伝子を発見し、生殖細胞の誕生過程が共通の構造を持つ2つの遺伝子に支配されることが初めて明らかとなりました。
 今回の研究成果は、生殖細胞誕生機構の全容解明に大きな前進をもたらし、試験管内での生殖細胞系列の誘導を含む、新たな生殖工学・生殖医学の発展に貢献することが期待できます。
 本研究成果は、米国科学誌『Nature Genetics』オンライン版(7月11日付け:日本時間7月12日)に掲載予定です。


1. 背景
 ヒトを含む多細胞生物の一生において、個体レベルでは不可避な現象である「死」を、種のレベルで回避するために用意されたユニークな細胞が、卵子や精子に代表される生殖細胞です。こうした「種の保存」という生物学的要請を満たすため、生殖細胞には(1)細胞レベルにて必ず起こる老化現象を能動的にくい止め、幾世代にもわたり受け継がれてきた遺伝情報を理想的には完全な状態で維持する(2)生殖細胞が究極に分化した卵子と精子が融合した際に、個体を形作る発生プログラムが滞りなく進むように、生殖細胞自身の遺伝情報をプログラムする、という2つの基本的な仕組みが埋め込まれています。そのため、この2つの仕組みを解明し、論理的に再構成することは、生物学の大きな目標の1つとなっています。この過程は、さまざまな基盤現象(運命決定、ゲノム再編、増殖、性決定、減数分裂、成熟)を伴う非常に複雑なもので、全過程の分子基盤を正確に理解し、再現するためには、それぞれの過程について緻密な研究が必要となります。
 理研哺乳類生殖細胞研究チームは、代表的なモデル生物であるマウスの発生過程で、生殖細胞と体細胞が分離する機構、それにより生殖細胞が獲得する特性の理解を研究の出発点とし、生殖細胞だけに託されたゲノム情報再編・継承、全能性維持・再獲得の機構を理解し、再構成することを目指した研究を展開してきました。


2. 研究手法
 始原生殖細胞(生殖細胞の起源となる細胞、精子や卵子の源となる)は、発生の初期(マウスでは受精後6.25日)に、数百個の細胞からなる胚(胎児)のごく一部の細胞(10個程度)が、胚体外組織からのシグナルにより誘導されて誕生します。研究チームは、2005年にこの過程に必須な遺伝子Blimp1を同定しました(Ohinata Y et.al., Nature 436:207-13, 2005)。
 初期の生殖細胞は、その細胞数が10〜数十個と非常に少ないため、どの遺伝子が、どの程度発現※3しているかを調べるためには、研究チームが独自に開発した技術「単一細胞cDNA増幅法※4」(Kurimoto et al., Nucleic Acids Research, 2006)が必要です。この技術を使って、Blimp1遺伝子を発現する始原生殖細胞と周囲のBlimp1遺伝子を発現しない体細胞を比較し、Prdm14遺伝子が始原生殖細胞だけで発現することを見いだしました(Yabuta Y et.al, Biol Reprod 75:705-16, 2006、Kurimoto et al., Genes Dev, 2008、2008年6月9日プレス発表)。
 Prdm14遺伝子が、マウス胚のどこで、いつ発現するのかを解析するために、この遺伝子を発現する細胞だけを可視化することにしました。具体的には、Prdm14遺伝子の制御下で、蛍光タンパク質を発現するトランスジェニックマウス※5を作製する手法を採用しました。さらに、Prdm14遺伝子がどのような役割を果たしているのかを解明するために、この遺伝子を欠損したマウス(ノックアウトマウス)※6を作製しました。Prdm14遺伝子欠損胚において、すでに生殖細胞の誕生に関与することが知られているBlimp1遺伝子を発現する、始原生殖細胞になるべき細胞の遺伝子発現や後成的ゲノム修飾※7状態を、免疫蛍光染色法※8や単一細胞遺伝子解析法を使って解析しました。
 正常な始原生殖細胞は、ゲノム情報を初期化して(ゲノムの再編成)、精子や卵子へと分化する能力を持つ一方で、「潜在的多能性」を持ち、適切な条件で培養すると、ES細胞やiPS細胞と同等の多能性※9を持つ「胚性生殖細胞(Embryonic Germ cell : EG細胞)」へと“脱分化”する能力を持っています(潜在的多能性の再獲得)。これは、始原生殖細胞の重要な特質の1つです。この能力を指標にして、Prdm14遺伝子欠損胚の始原生殖細胞になるべき細胞の潜在的多能性の有無を検証しました。


3. 研究成果
 トランスジェニックマウスを用いた解析の結果、Prdm14遺伝子は、きわめて初期の始原生殖細胞(受精後6.5日)で発現を開始していました。興味深いことに、Blimp1遺伝子は、血球系を含むほかの多様な組織・細胞で発現して重要な役割を果たすのに対し、Prdm14遺伝子は胎児期の始原生殖細胞だけで発現し(図1)、成体では精子・卵子を含めどの組織でも発現していませんでした。Prdm14遺伝子を欠損したマウスは、外見上は正常な個体になりましたが、オス・メスともに不妊であり、生殖細胞を完全に欠損していました。この生殖細胞の異常は、始原生殖細胞形成の初期段階(受精後7.25日以降)で起きており、この遺伝子が生殖細胞の誕生の過程で重要な働きをしていることが明らかとなりました。Prdm14遺伝子は、少なくとも脊椎動物の間では進化的に保存されており、脊椎動物の生殖細胞形成には共通するメカニズムがあることが推測できます。
 これまでの研究から、初期の生殖細胞形成は少なくとも(1)体細胞化の抑制(2)潜在的多能性の再獲得(3)後成的ゲノム修飾の再編成、により特徴づけられることが知られています。Prdm14遺伝子欠損胚を使って、Prdm14が生殖細胞形成にどのように関与するかを確認しました。
(1)体細胞化の抑制
 正常な生殖細胞は、その誕生時には周囲の体細胞と同様の性質をもっていますが、Blimp1遺伝子が働くことによって体細胞化を抑制します。Prdm14遺伝子欠損胚では、体細胞化の抑制は正常に起きていました。このことは、Prdm14遺伝子が体細胞化の抑制には関与しておらず、逆に生殖細胞になるには体細胞化の抑制だけでは十分ではないことを示しています。
(2)潜在的多能性の再獲得
 正常な始原生殖細胞は、多能性細胞であるEG細胞へと“脱分化”する能力を持っています。Prdm14遺伝子を欠損すると、始原生殖細胞になるべき細胞がこの能力を失ってしまうことがわかりました。また、これらの細胞では、ES細胞やiPS細胞で重要な遺伝子Sox2の発現も失われていました。つまり、Prdm14遺伝子は、生殖細胞が潜在的多能性を再獲得するために必要な遺伝子であることになります。
(3)後成的ゲノム修飾の再編成
 生殖細胞は、受精により正常な個体を構築する能力(全能性)を持っています。このような能力を獲得するため、ゲノムを初期化する再編成を行う必要があります。このゲノム再編成は、生殖細胞の誕生直後から開始します。その最初のイベントとして、正常な始原生殖細胞では、ゲノムの全領域にわたりヒストンのメチル化など染色体の修飾が劇的に変化します。Prdm14遺伝子欠損胚では、この過程が破綻しており、ゲノム再編成が開始しませんでした。つまり、Prdm14遺伝子は生殖細胞のゲノム再編成の上流に位置していることがわかりました。

 以上の結果から、Prdm14遺伝子は、(2)潜在的多能性の再獲得と(3)後成的ゲノム修飾の再編成、に必要であることを突き止めました(図2)。


4. 今後の期待
 今回の研究により、始原生殖細胞特異的に発現するPrdm14遺伝子が、生殖細胞の形成および初期分化に必須の遺伝子であることが明らかとなりました。また、Prdm14遺伝子を欠損した始原生殖細胞では、潜在的多能性の獲得や、全能性※9の再獲得に必要であると考えられる、後成的ゲノム修飾の再編成機構が破綻することがわかりました。
 始原生殖細胞は、特定の培養条件下で培養すると、多能性幹細胞であるEG細胞へと変化することができ、すべての体細胞へと分化することが可能となります。このような始原生殖細胞の持つ潜在的多能性を制御する遺伝子は、これまで1つも報告されていませんでした。本研究により、始原生殖細胞がEG細胞へと変化するために必須の遺伝子として、Prdm14を世界で初めて報告しました。現時点では、Prdm14遺伝子がどのような作用機序で潜在的多能性の獲得に寄与しているのかは不明ですが、今後、Prdm14遺伝子が産生するタンパク質Prdm14により発現調節を受ける遺伝子群を探索することで、始原生殖細胞の持つ潜在的多能性を制御する分子機構の実体が明らかになることが期待できます。また、今回の研究で得た情報は、試験管内で誘導される生殖細胞様細胞が、どの程度正しく形成されているかを判定する貴重な情報になるだけでなく、今後、生殖細胞系列を誘導する系を開発するために基盤となる情報を提供するものです。さらに、ヒトPrdm14の機能不全が不妊症の原因となるケースも考えられ、今後の不妊治療に大きく貢献することが期待されます。


(問い合わせ先)

独立行政法人理化学研究所
発生・再生科学総合研究センター 哺乳類生殖細胞研究チーム
チームリーダー 斎藤 通紀(さいとう みちのり)

Tel: 078-306-3376 / Fax: 078-306-3377
神戸研究推進部 企画課

Tel: 078-306-3008 / Fax: 078-306-3039

(報道担当)

独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当

Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
Mail: koho@riken.jp


<補足説明>
※1 細胞系譜
ヒトを含むほ乳類は、200種以上の細胞から構成されている。そのすべては、もとはただ1つの受精卵である。このように、発生の過程で細胞が特別な形や機能を持つようになることを細胞分化と呼ぶ。これらの細胞は、受精卵からいきなり出現するのではなく、系統的な道筋を追って、最終的に機能を持つ細胞へと系統的に分化していく。この細胞分化の系統を細胞系譜と呼ぶ。体細胞系譜と生殖細胞系譜は発生の初期にその運命を分かつ、大きな系譜である。
※2 単一細胞マイクロアレイ法
マイクロアレイは、ゲノム上のどの遺伝子が発現しているのかを同時に複数調べることができ、全世界の研究施設で用いられている優れた解析技術である。その一方で、非常に多数の細胞(通常、数千個から数十万個)を必要とするという短所を併せ持つ。培養細胞系など、同じような細胞からなる細胞集団であれば問題ないが、少数の、多様な細胞が複雑な構造を形成し機能している、生体内の組織や器官(特に発生過程の各組織、幹細胞生物、神経、さらには病態を示した組織)では、従来のマイクロアレイ解析では1つ1つの細胞を区別できないため、直接的な応用には限界があった。研究チームの開発した単一細胞cDNA増幅法を生かした「単一細胞マイクロアレイ法」は、この限界を克服し、1つ1つの細胞を別々に解析することを可能にすることで、ゲノムレベルでの遺伝子発現解析の適用範囲を飛躍的に拡大することに成功した。
※3 遺伝子の発現
ヒトを含めた多細胞生物では、ほぼすべての細胞が同じ遺伝情報(ゲノム)を保持している。私たちの生命が多様な細胞によって支えられているのは、それぞれの細胞種で働く遺伝子が異なるからである。遺伝子が働くためには、ゲノムDNAの中の特定の遺伝子をコードする部分をコピーすることにより1次的な産物である「メッセンジャーRNA(mRNA)」が作られ、さらにそのmRNAに対応するタンパク質が作られなければならない。ある遺伝子からmRNAが作られることを「遺伝子が発現する」という。「どの遺伝子が、どの程度の量、発現しているか」という「遺伝子発現パターン」は細胞の個性を知るために有用な情報である。
※4 単一細胞cDNA増幅法
単一細胞レベルで遺伝子発現を解析する技術である。マウスの始原生殖細胞は胚(胎児)が数百〜数千個の細胞でできている頃に、40個程度形成される。この時期の始原生殖細胞でどの遺伝子が発現しているかを知るためには、細胞1つ1つを分離して、細胞毎に調べることが最も効果的である。しかし、細胞1つに含まれるmRNAの量は非常に少ないため、有効な解析をするためには遺伝子発現パターンを損なわずに増幅しなければならない。哺乳類生殖細胞研究チームは、単一細胞からcDNAを作り、正確に増幅する技術を開発し、単一細胞レベルで質の高い遺伝子発現解析を可能にした。
※5 トランスジェニックマウス
特定の遺伝子の機能や発現パターンを解析することを目的として、種々の遺伝子操作を行い、マーカー遺伝子を導入したマウス。本研究では、蛍光タンパク質がPrdm14遺伝子の発現を再現できるようにデザインしたDNAを染色体に組み込み、Prdm14遺伝子発現細胞を蛍光タンパク質で可視化することを可能にしたトランスジェニックマウスを作製した。
※6 遺伝子を欠損したマウス(ノックアウトマウス)
特定の遺伝子の機能を知る為にその遺伝子を人工的にゲノムから取り除いたマウス。ある遺伝子の機能を知るためには、その遺伝子を持たない動物(マウス)がどうなるのかを調べることが最も効率的である。そのような目的で作製された動物を遺伝子欠損(ノックアウト)マウスを呼ぶ。本研究では主に胎生期の遺伝子欠損マウス(遺伝子欠損マウス胚)を解析に用いた。
マウスやヒトは、染色体(マウスは20本、ヒトは23本)を2セット持っている。これは両親から1セットずつ受け継いだものである。Prdm14遺伝子はマウスでは第1染色体(ヒトでは第8染色体)に存在している。2本の第1染色体のうち、片方の染色体(アレルという)のPrdm14遺伝子を欠損したマウス(ヘテロマウス)では生殖細胞も正常に形成される。ヘテロマウスの雌雄を掛け合わせると4分の1の確率で両方の染色体のPrdm14遺伝子を欠損したマウス(ホモマウス;不妊)を得る。胎生期の遺伝子欠損マウスの解析には、ヘテロマウスを掛け合わせた時のホモマウス胎仔を用いた。
Prdm14遺伝子を欠損したへテロマウスは、ジーンターゲッティング法を用いて作成した。ヘテロマウスの雌雄を掛け合わせると、4分の1の確率で両方のアレルのPrdm14遺伝子を欠損した胚を得ることが出来る。妊娠マウス一匹は通常10〜16匹程度の胎仔を持つので、一回の掛け合わせで、2〜4匹のPrdm14遺伝子欠損胚を得ることが出来る。
※7 後成的ゲノム修飾の再編成
ゲノムの持つ遺伝情報は、第一義にはDNAの塩基配列(A, T, G, C)を指す。生体内のゲノムDNAは、ヒストンというタンパク質に巻きついた状態でコンパクトに折りたたまれた状態で存在している(このような構造をクロマチンと呼ぶ)。さらにこのヒストンやDNA自身が化学的修飾を受けることなどにより、遺伝子発現がさまざまに制御されている。このようなヒストンやDNAの化学的修飾を、塩基配列の1次情報に対し、後成的修飾と呼ぶ。生殖細胞は後成的ゲノム修飾を再編成することで、全能性の再獲得を行っていると考えられている。
※8 免疫染色法
細胞や組織におけるタンパク質を検出するために広く用いられる手法。抗体のもつ特性を利用するため、免疫染色法と呼ばれる。検出したいタンパク質に対する抗体(1次抗体)を作成し、ホルマリンなどで固定した組織や、その切片に抗体を反応させる。すると抗体は、目的タンパク質にのみ結合する。抗体をあらかじめ蛍光色素などでラベルしておけば、タンパク質の存在するところだけが蛍光などを発するので、組織の中のどの細胞がそのタンパク質を発現しているか、あるいは細胞の中のどこにタンパク質が局在しているかを知ることができる。より広く用いられる方法としては、抗体を認識する抗体(2次抗体)を蛍光色素などでラベルして、1次抗体と反応させ、蛍光を顕微鏡などで検出する。
※9 全能性と多能性
全能性とは完全な個体形成を行うことのできる能力をさす。これは事実上、受精卵のみが持つ能力である。一方で、ES細胞、EG細胞、iPS細胞は、単独で個体形成を行う能力はないが、体を構成するすべての細胞へと分化する能力をもっている。これを(分化の)多能性と呼ぶ。


図1 蛍光タンパク質で可視化したPrdm14(左)とBlimp1(右)の発現
写真は受精後7.0日胚で、左側が将来胎児の頭(前部)に、右側が尾(後部)になる。始原生殖細胞(緑色)は、胚のもっとも後部で誕生する。Blimp1遺伝子は始原生殖細胞だけでなく胚を包み込む、胚体外組織でも発現しているが、Prdm14遺伝子は始原生殖細胞でのみ発現している。


図2 Blimp1とPrdm14の役割を模式図
生殖細胞の誕生には、PRドメインという共通の構造を持つ、Blimp1とPrdm14が重要な働きをしている。Blimp1遺伝子は体細胞化プログラムの抑制に主要な役割を果たしており、また、潜在的多能性やゲノム再編成にも重要な働きをしている。一方、Prdm14遺伝子は体細胞化の抑制にはかかわらず、潜在的多能性や、ゲノム再編成に必須な遺伝子であることがわかった。

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