平成17年4月7日
独立行政法人理化学研究所

SPring-8台風被害の復旧について

 独立行政法人理化学研究所(以下「理研」という。)播磨研究所における世界最高性能の放射光施設であるSPring−8の蓄積リング棟については、平成16年8月30日の台風16号及び同年9月7日の台風18号に伴う強風を受けて、屋根板の一部が破損する被害が発生した。
 理研は、その被害原因を究明し、復旧工事の方針を立てるため、平成16年9月9日に「SPring−8台風被害原因調査委員会」(以下、「調査委員会」という。委員名簿は、下記のとおり。)を設置し、風工学、建築及び金属関係の所外の専門家の見解を踏まえ、高輝度光科学研究センター施設管理部の全面的協力のもと、破損した屋根板を支持していたボルト等の調査及び設計及び施工関係者からの事情聴取等により細部にわたる徹底的な調査を行った。
 その結果を踏まえ、施工関係者の協力も得て、再発防止策を講じた工事方法を決定し、本年1月から被害を受けた屋根の部分の改修工事を実施し、今般竣工した。なお、現在、被害を受けなかった屋根の部分についても再発を防止するため、改修工事を進めており、本年8月末には、完成する予定である。
  1. 被災建物の概要

    建物の名称 大型放射光施設(SPring−8)蓄積リング棟
    建 築 主 理化学研究所
    建築面積 65,934m2
    構造階数 鉄骨造一部鉄筋コンクリート造地上2階建
    屋根の構造 折板葺きダブル折板インシュレーション工法
    二重になっている屋根折板の間に断熱材であるグラスウールをはさみ、IS(インシュレーション・サンドイッチ)ボルトにより下折板は建物の梁に固定するとともに、上折板は、ISボルトの固定部分に挟み込むことにより、建物内外の断熱性を確保する工法
    工   期 平成3年9月12日〜平成8年12月27日


  2. 被害の状況

    屋根は、放射状に長さ約30mの二重折板で葺かれており、4箇所で雪止め用アングル材が固定されているが、屋根は、二重折板のうち上側の折板が円周の外側から2番目の雪止め位置までめくれて、折れ曲がるなどして、上下折板間に挿入されていた断熱材であるグラスウールが露出し、また風によって被災部分周辺に散乱した。これにより、雨が建物内に入り込み、壁、床等にしみ込み、測定器、電線等が雨水に浸かる被害があった。


  3. 調査の結果

    調査委員会が調査・検討した結果、台風による屋根被害の状況と原因については、次のように推定されるに至った。

    (1) 蓄積リング棟屋根に被害を及ぼした台風16号及び18号による強風は、近隣測候所等の風速観測値から推定すると、設計上想定されていた風速値を上回るものではなかった。
    (2) 屋根端部付近のISボルトの多くは、台風で飛散したISボルトの破断面の錆の観察や今回被害のなかった部分のISボルトの調査結果から、台風16号及び18号で屋根が飛散する以前から、ISボルトの水上側及び水下側端部にひび(亀裂)が入る等疲労による損傷を受けていた。
    (3) 疲労損傷のため、ISボルトが所定の耐力を失った状態で、台風16号及び台風18号による強風を受け、屋根上折板が屋根の軒先付近からめくれる被害が発生した。
    (4) ISボルトの疲労損傷の原因は、二重構造になっている屋根の上折板が日射による温度変化によって日常的に熱膨張・収縮し、屋根上折板を支持しているISボルトの先端を繰り返し大きく変形させたことによるものである。
    (5) 日射による上折板の伸縮がISボルトに大きな繰り返し荷重としてかかった原因は、本来荷重を回避させるように工夫されていたスライド機構が所定の性能を発揮しなかったことによるものである。
    (6) 今回の屋根被害は、スライド機構の性能を確認しないまま、ISボルトに作用する繰り返し荷重の影響を無視して、屋根を設計・施工したことによって生じたものである。


  4. 屋根被害の復旧について

    上記のように、調査委員会における調査の結果を基に、理研は、被害の復旧について、設計及び施工に携わった会社との間で協議したうえで、下記のように改修工事等を進めた。

    (1) ISボルトが破断した原因である屋根上折板のスライド機構の不備について、理研は、建築工事を請け負った(株)竹中工務店、(株)大林組及び(株)熊谷組をそれぞれ筆頭とする3共同企業体及び設計監理を請け負っていた(株)日建設計に施工上の責任があると考える。これに対して、建築工事を請け負った上記の3社は、理研に対して概ねその責任を認めており、復旧工事について具体的な工事方法等に関する試験等を行うことにより全面的に理研に対して協力するとともに、一部経費を負担することとしている。
    (2) なお、主な原因である屋根上折板のスライド機構については、施工当時の工事基準等に違反しているわけではなく、今回のような被害は予測できなかったものであるが、現場で工事監理を行っていた理研にも不十分な施工を見抜けなかった問題があったため、今後同様の事象が起きないよう工事施工監理体制の充実等の措置を講じることとする。






【参考】
平成16年9月9日

SPring−8台風被害原因調査委員会委員

委 員 長 大熊 健司 独立行政法人理化学研究所 理事
副委員長 田村 幸雄 学校法人東京工芸大学工学部建築学科 教授
委  員 奥田 泰雄 独立行政法人建築研究所構造研究グループ
上席研究員
委  員 坂本  功 国立大学法人東京大学大学院工学系研究科
建築学専攻 教授
委  員 八木 晃一 独立行政法人物質・材料研究機構
材料基盤情報ステーション長
委  員 大野 英雄 財団法人高輝度光科学研究センター 専務理事
委  員 熊谷 教孝 財団法人高輝度光科学研究センター 施設管理部長
委  員 柴田  勉 独立行政法人理化学研究所 理事