研究紹介

脳科学総合研究センター

発生遺伝子制御研究チーム

チームリーダー 岡本 仁 (M.D., Ph.D.)
岡本 仁 (M.D., Ph.D.)
  1. 脊椎動物を通じて保存されている情動系神経回路の働きを探る私たちの心(情動)を操る神経回路がどのように行動の制御に関わっているのかを、遺伝学、細胞生物学、分子生物学、及び生理学の手法を駆使して明らかにしようとしています。哺乳類では行動の選択を担う神経回路は、大脳皮質基底核回路と呼ばれ終脳に存在します。外界の物理的状況とそれに伴う情動情報がそれぞれ海馬と扁桃体を介してこの回路に入り、この回路をモジュレートすることで、様々な行動をコードする神経アンサンブルが形成されると考えられています。しかし、この大脳皮質基底核回路においてこのような神経アンサンブルが形成される過程はまだよくわかっていません。脊椎動物の中で最も単純な神経系を持つゼブラフィッシュ(硬骨魚類)では、発生の過程で神経管が外側に開いていくeversionという動きにより、終脳の外側は海馬、内側は扁桃体に対応するようになり、この位置関係は哺乳類とは逆転しています。さらに近年、ゼブラフィッシュにも大脳皮質基底核回路が存在し、ここに行動プログラムが記憶として保存されることが示唆されています。ゼブラフィッシュの脳は非常に小さく、カルシウムイメージングを用いて大脳皮質基底核回路全体の神経活動を解析する事ができます。また光遺伝学を用いた神経活動の操作と組み合わせることで、哺乳類にまで共通の行動プログラムの記憶形成のメカニズムを解明できると考えています。
  2. 情動行動における手綱核の役割を探る私たちは手綱核とよばれる間脳背側の神経核に着目しています。哺乳類の手綱核は内側核と外側核からなり、それぞれ間接的および直接的に、腹側被蓋野のドーパミン神経細胞や縫線核のセロトニン神経細胞を制御します。哺乳類の内側、外側手綱核は、魚類ではそれぞれ背側、腹側手綱核に相当し、それぞれの核を介する神経回路は魚類でもよく保存されています。私たちは、このように進化的に保存された手綱核を介する神経回路が、情動行動の制御にどのように関わるかを明らかにしようとしています。実際、ゼブラフィッシュの背側手綱核の神経活動を阻害すると、魚は恐怖条件付け学習において常にすくみ行動をとるようになります。研究室ではゼブラフィッシュとラット、マウスを用いてこのような情動行動のスイッチングや適応的な恐怖学習、攻撃性や社会的優位―劣位の決定などにおいて手綱核が担う役割を研究しています。

研究テーマ

  • 脊椎動物を通じて保存されている情動系神経回路の働きを探る
  • 情動行動における手綱核の役割を探る
  • 感覚神経の発生と神経新生の仕組みを探る

主要論文

  1. Chou M., Amo R., Kinoshita M., Cherng B., Shimazaki H., Agetsuma M., Shiraki T., Aoki T., Takahoko M., Yamazaki M., Gigashijima S., Okamoto H. :
    "Social conflict resolution regulated by two dorsal habenular subregions in zebrafish"
    Science in press (2016)
  2. Amo, R., Fredes, F., Kinoshita, M., Aoki, R., Aizawa, H., Agetsuma, M., Aoki, T., Shiraki, T., Kakinuma, H., Matsuda, M., Yamazaki, M., Takahoko, M., Tsuboi, T., Higashijima, S., Miyasaka, N., Koide, T., Yabuki, Y., Yoshihara, Y., Fukai, T. and Okamoto, H.:
    "The Habenulo-Raphe Serotonergic Circuit Encodes an Aversive Expectation Value Essential for Adaptive Active Avoidance of Danger"
    Neuron, 87 1034-1048 (2014)
  3. Okamoto, H. and Aizawa, H.:
    "Fear and anxiety regulation by conserved affective circuits"
    Neuron, 78, 411-413 (2013)
  4. Aoki, T., Kinoshita, M., Aoki, R., Agetsuma, M., Aizawa, H., Yamazaki, M., Takahoko, M., Amo, R., Atrata, A., Higashijima, S., Tsuboi, T. and Okamoto, H.:
    "Imaging of neural ensemble for the retrieval of a learned behavioral program"
    Neuron, 78, 881-894 (2013)
  5. Aizawa, H., Yanagihara, S., Kobayashi M., Niisato K., Takekawa T., Harukuni R., McHugh T. J., Fukai T., Isomura Y. and Okamoto H.:
    "The synchronous activity of lateral habenular neurons is essential for regulating hippocampal theta oscillation"
    The Journal of Neuroscience, 33(20), 8909-8921 (2013)
  6. Aizawa H., Kobayashi M., Tanaka S., Fukai T. and Okamoto H.:
    "Molecular characterization of the subnuclei in rat habenula"
    Journal of Comparative Neurology, 520(18), 4051-4066 (2012)
  7. Agetsuma, M., Aizawa, H., Aoki, T., Nakayama, R., Takahoko, M., Goto, M., Sassa, T., Amo, R., Shiraki, T., Kawakami, K., Hosoya, T., Higashijima, S. and Okamoto, H.:
    "The habenula is crucial for experience-dependent modification of fear responses in zebrafish"
    Nature Neuroscience, 13(11), 1354-1356 (2010)
  8. Amo, R., Aizawa, H., Takahoko, M., Kobayashi, M., Takahashi, R., Aoki, T. and Okamoto, H.:
    "Identification of the zebrafish ventral habenula as a homolog of the mammalian lateral habenula"
    The Journal of Neuroscience, 30(4), 1566-1574 (2010)
  9. Aizawa, H., Goto, M., Sato T., and Okamoto. H.:
    "Temporally regulated asymmetric neurogenesis causes left-right difference in the zebrafish habenular structures"
    Developmental Cell, 12, 87-98 (2007)
  10. Aizawa,H., Bianco, I.H., Hamaoka, T., Miyashita, T., Uemura,O., Concha, M.L., Russell, Wilson, S.W., and Okamoto, H.:
    "Laterotopic Representation of Left-Right Information onto the Dorso-Ventral Axis of a Zebrafish Midbrain Target Nucleus"
    Current Biology, 15, 238-243 (2005).

メンバーリスト

主宰者

岡本 仁
チームリーダー

メンバー

柿沼 久哉
研究員
木下 雅恵
専門職研究員
周 銘翊
研究員
松股 美穂
研究員
平尾 顕三
研究員
TONG Sok-Keng
研究員
鳥越 万紀夫
研究員
杉山 拓
研究員
小林 琢磨
研究員
久野 悠
基礎科学特別研究員
LANGE Merlin
国際特別研究員
イスラム タンビル
テクニカルスタッフⅠ
小林 恵実
テクニカルスタッフⅠ
江泉 香里
テクニカルスタッフⅠ
伊藤 世志江
テクニカルスタッフⅡ
島田 敦子
テクニカルスタッフⅠ
CHERNG Bor-Wei
大学院生リサーチ・アソシエイト
半田 剛久
大学院生リサーチ・アソシエイト
中條 暖奈
大学院生リサーチ・アソシエイト