理論生物学とは

数学や理論的方法を使うことで、よりよく理解できる生命現象がたくさん有ります。また、個別の生命現象に注目することで一般的法則が見えてくるところが、生物学の面白いところです。我々は、具体的な生命現象に注目し、そのメカニズムの解明を通じて、生命の普遍的原理に迫ります。

理論生物学とは?

20世紀後半から今世紀にいたるまで生物学の発展は目覚しく、その勢いは留まることをしりません。生物の機能には、様々な遺伝子や蛋白質などの生体分子が関わっていることや、それらの制御の関係が複雑なネットワークを形作っていることも、現在では分かってきました。生物学は学問的発展を見せているばかりではなく、我々の生活にも大きな影響を与えています。幾つかの病変は遺伝子の働きの異常として理解できるようになり、その理解に基づいた新しい治療法も実現され始めています。

一方で生命機能の理解という意味では、生物学にはまだ解決すべき課題が数多く残されています。確かに、ここ半世紀の生物学の発展は、生命機能に関わる生体分子に関する知見を、次々と明らかにしてきました。一方で、そこから生命らしい働きが生まれる理由については、ほとんど分かっていません。細胞がもつ自律性や恒常性、発生の過程で作り出される機能的な形、環境変動に対し行動を変える適応性、これらの「いかにも生物らしい働き」が、遺伝子や蛋白質などの生体分子の仕掛けから生まれる原理を理解してこそ、生命現象が解明できたといえるのではないでしょうか。

現在の生物学では、その方法論に大きな変化が起きています。実験的方法でこれまでに明らかにされてきた多くの情報に対し、統合的・全体的視点からその働きをとらえる方法として、数理科学や物理学や計算機シミュレーションなどの理論的方法が積極的に利用されるようになってきています。生物学の理論はまだ発展途上ですが、近い将来、実験と理論が二つの方法として両輪をなし、予測と検証を繰り返すことで発展するような生物学が確立されるだろうと期待しています。我々はそのような生物学の未来を見据えて、理論生物学研究を推進しています。