研究内容

私たちのグループは、計算機や数理的手法を用いて、生命現象に取り組んでいます。特に多量の情報を統合して高次生命現象を理解する場合や、時空間中にパターンが展開する形態形成現象を理解するうえで、数理的手法は有効だと考えています。

現在の研究内容

化学反応系の振る舞いをネットワーク構造だけから理解する

多数の化学反応が連鎖的につながったネットワークから、細胞の生理機能が生まれ、さらに酵素の量や活性が変化することで生理機能の調節が行われるのだ、と考えられている。我々は、化学反応ネットワークの構造だけから、酵素の変化に対するシステムの応答を決定する数理理論を構築した。そして化学反応系の振る舞いを支配する、ネットワーク構造に基づく原理を発見した。

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制御ネットワークの構造とダイナミクス

制御ネットワークの構造とダイナミクス

様々な生命現象において、生体分子の相互作用が複雑なネットワークを構成していることが分かっており、そのシステム全体のダイナミクスから生命機能が生まれると考えられている。我々は、複雑なシステムに対して、そのネットワークの情報だけから、力学的性質の一部を決定できる理論を開発した。

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細胞内膜構造の物理的理解

細胞内膜構造の物理的理解

細胞内のオルガネラはその種類ごとに特徴的な膜構造を持つ。これら多様な形態のかなりの部分が、物理学的な性質に基づく我々の数理モデルで理解できる。

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画像解析による細胞移動の解析

画像解析による細胞移動の解析

発生により機能的形態が実現されるメカニズムを解明するためには、形態形成における細胞の移動や細胞分裂、細胞死を同定し、そこに働く力や制御を理解することが必要である。我々は形態形成過程を捉えた3次元時間発展の動画から、細胞の移動や細胞分裂、細胞死を抽出する画像解析技術と、そこから細胞に働く制御を推測する数理モデル研究を融合させることにより、大変形における個々の細胞の役割を解析している。

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植物の発生を司るオーキシンパターン形成

植物の発生を司るオーキシンパターン形成

植物の発生における形態形成の多くは、細胞膜に分布するPINの偏りによって引き起こされるAuxinの分布によって支配されると考えられている。しかし、生物学的に機能的な形が自己組織的な形態形成で作られるメカニズムはまだ十分に理解されていない。

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多細胞性シアノバクテリアにおけるヘテロシストパターン形成

多細胞性シアノバクテリアは、窒素栄養枯渇環境下で、ヘテロシストと呼ばれる特徴的な細胞をほぼ10細胞間隔で分化させる。我々はこの規則パターンを作る機構を解明するため、実験による計測と、数理モデルを組み合わせた研究を行っている。

神経細胞樹状突起パターン

神経細胞樹状突起パターン

ある種の神経細胞は、樹状突起を曲面上で、むら無く一様に分布させることから、space filling typeと呼ばれる。この樹状突起は、一様分布の生成に加えて、空間分割、突起の再生など、様々な空間秩序を生成できる。我々は、神経細胞の空間秩序の原理を、理解する数理モデルを構築し、解析した。

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過去の研究内容

シアノバクテリア概日リズムの分子機構

シアノバクテリア概日リズムの分子機構

シアノバクテリアは概日リズムを持つ細菌です。その仕組みの解明を目指して、現在も熱心に研究が続けられています。我々は、数理モデルを解析することによって、未知の機構を実験に先立って予測する研究を行っています。

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遺伝子制御ネットワークと細胞状態の多様性

遺伝子制御ネットワークと細胞状態の多様性

我々の体を構成する様々な細胞の性質の差は、活性化された遺伝子の違いによって作り出されています。遺伝子制御を力学モデルで捕らえることによって、細胞の多様性の起源を明らかにしました。

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線虫の温度走性

線虫の温度走性

線虫は体長1mmほどの小さな多細胞生物ですが、302の神経細胞からなるごく簡単な神経系を使って行動します。我々は数理モデルや画像解析などの計算機技術を用いて線虫の行動や神経系の機構を調べています。

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葉脈ネットワーク

葉脈ネットワーク

葉脈形成のメカニズムは、まだよく分かっていません。我々のモデルでは、葉の形や成長などのわずかな違いによって、多様な葉脈パターンを再現できます。

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マウス初期発生における左右非対称な遺伝子発現機構の数理的解明

マウスの左右性を作り出す遺伝子制御回路とその作動原理について、大阪大学の濱田教授のグループとの共同研究で解明を行っている。

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ゲノムインプリンティングの進化

ゲノムインプリンティングの進化

哺乳類(や植物)のある種の遺伝子は、一風変わった活性パターンを示します。哺乳類は2倍体生物ですから遺伝子は染色体上に2つあるのですが、その片方だけしか活性化しない、尚且つどちらの遺伝子が活性化するかはそのコピーが父親由来であるか母親由来であるかによって決まる、というものです。この様な遺伝子の転写(活性化)の仕方をゲノムインプリンティングと呼びます。2つの遺伝子のうち片方が壊れている可能性を考えると、ゲノムインプリンティングは予備の遺伝子を無くしてしまっていることになるため、わざわざ手間を掛けて不利なやり方を用いているように思えます。実は遺伝子に働く淘汰(個体にではなく)を考えると、この現象をきれいに説明できるのです。

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細胞間接着力と細胞選別

細胞はその膜表面に接着分子と呼ばれるタンパク質を持っており、これを利用して隣同士くっつくことができます。くっつく力の大きさは接着分子の種類の組み合わせやそれらの量によって、変化します。最近の研究では、発生途中の形態形成において、そのような細胞間接着力が積極的に使われている可能性が示されています。この研究は、数理モデルと実験結果を組み合わせることによって、細胞間接着力を間接的に推定しようという試みです。

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基底細胞上皮腫(BCC)の成長の数理モデル

皮膚がん(Basal cell epithelioma)において、がん組織が複雑な枝状(?)のパターンを形成することが有ります。この形態形成の仕組みについて、がん細胞密度と栄養濃度の反応拡散モデルによる説明を試みました。得られたパターンは組織切片のパターンと良く似ていました。がんのパターンの解析から、そのがん細胞の性質が分かるかもしれません。

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魚類網膜の錐体細胞モザイク

魚類網膜の錐体細胞モザイク

一般に網膜上には、各種の色に反応する数種類の錐体細胞が存在します。ある種の魚では、それらの細胞が非常にきれいに規則的に並ぶことが知られています。このパターンが発生の過程でどのようにして作られるのかは分かっていません。数理モデルによって、この形態形成を説明するメカニズムを提案します。と、同時に実際の生物に於ける錐体細胞間の相互作用について、仮説を提出します。

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体細胞モザイクからの細胞系譜の推定

発生では細胞が分裂を繰り返すことによって、体が構成されます。ある種の生物では、細胞分裂のルールが一定(個体間で同じ)で、そのような分裂の履歴を知ることは発生過程そのものを知ることになります。分裂の履歴を記述したものを細胞系譜と呼びます。一般に細胞系譜は発生の初期に細胞を同定し、それに印を付け(マーカーの導入)、より発生の進んだ段階(観測ステージ)で印の付いた細胞の分布を調べることでなされます。これは非常に手間のかかる実験で、多くの生物の細胞系譜はまだ明らかにされていません。発生過程を追跡せずとも、特定の観測ステージにおけるマーカーの分布だけから、その上流の細胞系譜を推定するシステマティックな方法を考えました。

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