1. Home
  2. 産学連携
  3. 知的財産情報

2013年9月25日

複数分子同時イメージング法の開発

理研No. 07103, 07571, 07841

発明者

本村 信治、福地 知則、榎本 秀一(複数分子イメージング研究チーム)

背景

「分子イメージング」とは、生体内における分子・細胞レベルの機能変化や反応過程を、生体を傷つけることなく定量的な画像情報として取得する手法です。特にヒトや動物等の生体深部を観察する場合、放射性同位元素(RI)を標識したイメージング剤(分子プローブ)を用いる核医学的手法が適しています。近年の生命科学の研究により、病気の発症には複数の因子が複雑に関与していることが明らかになってきましたが、それら複数の因子の異変を病気が進行する前に同時に検出する「複数分子同時イメージング」により、悪性度など病気の性状を把握した超早期診断の実現が期待されます。しかしながら、従来の核医学画像診断装置では、複数のRI標識分子プローブを同時に投与し、それらを識別して画像化することには適しておらず、複数因子の同時検出は困難でした。

概要

半導体コンプトンカメラ「GREI」は、半導体検出器内で起こる入射ガンマ線のコンプトン散乱の情報を積極的に利用して、機械的コリメータを用いずにガンマ線源のイメージングを行う装置です。非常に広いエネルギー範囲のガンマ線を同時に識別して撮像できるのが特徴で、複数分子同時イメージングを可能にします。既存の画像診断装置であるSPECTやPETがモノクロ画像とすれば、GREIはフルカラーの画像情報を与えます。

半導体コンプトンカメラの図

図1:半導体コンプトンカメラ「GREI」

本発明者らは、GREIのプロトタイプを用いたマウスの撮像実験を行い、世界で初めてコンプトンカメラによる複数分子同時イメージングの実証に成功しました。また、これまでにGREIの撮像性能を飛躍的に向上させる技術開発に成功しており、現在はヒト用GREIの実現を目指した研究開発をしています。

下図は、85Sr-塩化ストロンチウム (85SrCl2)、65Zn-塩化亜鉛(65ZnCl2)、131I-Adosterol をマウスに同時投与し、生きたままそれぞれの薬剤の挙動の違いを12時間撮像した結果です。現在は1時間で同じ画像を得ることができます。

マウスの撮像実験の図

図2:マウスの撮像実験

利点

  • 複数のRI標識分子プローブを「同時」に検出
  • PET用プローブ、SPECT用プローブも使用可能
  • イメージングの時間スケールや安定性に応じて、種々の核種が使用可能

応用

  • がん、糖尿病などの早期診断
  • 移植や再生医療による治癒のモニタリング

文献情報

  • 1.特許第4486623号、米国特許第8076645号、EP第2060932号
  • 2.特許第5371086号、US第8227759号
  • 3.特許第5582370号

知的財産情報に関するお問い合わせ

理化学研究所
お問い合わせフォーム

Top