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2015年3月5日

薬剤や食品成分の生体イメージングを可能とするPET標識化学技術

理研No. 07114, 07716, 08283

発明者

土居 久志(標識化学研究チーム)

背景

陽電子放射断層画像撮影法、略してPETは、極微量の短寿命放射性化合物を使用して、動物やヒトの体内における分子の動態を高精度かつ定量的に画像化する技術です。PETイメージング研究の源流は、生物活性有機化合物の開発と陽電子放出核種での標識化であり、優れたPET分子プローブの創製が本研究の成否の鍵です。本発明者は、PETイメージング研究の推進に必要な短寿命PET分子プローブの一般的合成法の開発を行っています。

概要

これまでに、低分子化合物に対しては、炭素基本骨格上への11C核種(半減期:20.4分)の導入を目指して、Pd(0)触媒を用いた高速C-[11C]メチル化反応の開発を行ってきました。本技術は、わずか5分の反応時間で最小の炭素置換基である[11C]メチル基を目的の炭素骨格上に導入できる革新的標識法です(図1)。また、生体分子の標識化に関しては、核酸に対するクリック化学型化学量論的18F-標識法(18F核種の半減期:110分)の開発を行ってきました(図2)。また、生体高分子化合物(タンパク質、抗体など)に対する新しい標識法となる[11C]アセチル化法の開発にも成功しています(図3)。

低分子化合物のPETプローブ化の図

図1:低分子化合物のPETプローブ化

中分子化合物のPETプローブ化の図

図2:中分子化合物のPETプローブ化

生体高分子化合物のPET分子プローブ化の図

図3:生体高分子化合物のPET分子プローブ化

利点

  • 高速C-[11C]メチル化法の標識部位は、炭素−炭素結合のため生体内代謝に安定であり、PET画像の信憑性があがる
  • クリック化学型化学量論的18F-標識法は、わずか20ナノモルの基質量で標識化が可能(核酸などの中分子の標識に最適)
  • [11C]アセチル化法の標識ユニットの分子量はわずか42。母体の活性変化を最小限にできる(抗体などの標識に最適)

応用

  • 創薬候補化合物(低分子薬剤、核酸医薬、抗体医薬)の理想的なPET分子プローブ化を実現
  • 食品成分(特定保健用食品など)のPET分子プローブ化も可能
  • PETはマイクロドーズ臨床試験に適合しており、動物のみならず、実際のヒト臨床試験の実施が可能

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理化学研究所
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