2011年7月1日
無細胞タンパク質合成系を活用した膜タンパク質合成方法
理研No. 07366
発明者
下野 和実、横山 茂之 他(タンパク質基盤研究グループ)
背景
効果的なドラッグデザインや抗原調製には、質の高い膜タンパク質を大量に合成する必要がありますが、大腸菌などの生細胞を用いた従来技術では、合成量が多いと細胞死を招く、膜に上手く埋まらない、などの問題がありました。また、無細胞タンパク質合成系を用いた場合でも、膜タンパク質は疎水性が極めて高いため、水溶液中で凝集体を形成しやすく、活性を保持した状態の膜タンパク質を大量合成することは極めて困難でした。
概要
膜タンパク質を、リポソームに挿入した活性体として生成
無細胞タンパク質合成系において、界面活性剤と脂質を用いた脂質二重膜環境を構築することにより凝集体形成を回避し、脂質二重膜に組み込んだ状態の活性体膜タンパク質を大量に合成する新技術を開発しました。
本技術は、ステロイド系界面活性剤と脂質を大腸菌由来の無細胞タンパク質合成反応液に添加し、透析法によりタンパク質合成とリポソーム形成を同時に進行させるものです。透析が進むと、合成途中または直後の疎水性の高い膜タンパク質は界面活性剤/脂質混合ミセルで保護され、形成された脂質二重膜に自然に挿入されるため、大量の活性体膜タンパク質が効率良く合成されます。
活性を有した状態で複数回膜貫通型膜タンパク質を高純度で大量合成できるため、例えば膜タンパク質の結晶構造解析によるドラッグデザインやGPCRなどの抗原調製等、創薬において非常に有用な技術となります。これまでに本技術を用いて多くのヒト由来複数回膜貫通型膜タンパク質の合成に成功しており、結晶構造解析だけではなく、抗原調製の実績があります。
応用
- 膜タンパク質の結晶構造解析によるドラッグデザイン
- 膜タンパク質をターゲットとする抗体医薬開発による抗原調製
文献情報
- 1.特許第5704677号、米国特許8226976号 他
関連情報
- 1.2009年9月16日プレスリリース「無細胞タンパク質合成系を活用した膜タンパク質合成方法の開発に成功」
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