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2014年4月20日

フタロシアニン系近赤外線吸収色素のデザイン技術

理研No. 07717, 07960

発明者

内山 真伸、村中 厚哉(内山元素化学研究室/先進機能元素化学研究チーム)

背景

フタロシアニンは古くから染料、顔料として利用されていましたが、最近ではCD-R、消臭剤、有機半導体としても実用化され、有機系太陽電池、癌の光線力学療法、近赤外バイオイメージングといった先端技術への応用が期待されています。これらの先端技術の性能を向上するための手段の一つとして、通常のフタロシアニンよりもさらに近赤外領域の光を吸収・発光する材料が注目されています。本研究では、新しいタイプのパイ電子系機能材料として、フタロシアニン系近赤外色素の開発を行っています。

概要

[アズレノシアニン]

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代表的なフタロシアニン系近赤外色素として、フタロシアニンのベンゼン環をナフタレン環に置き換えたナフタロシアニンがあります。ナフタロシアニンは、約800nmの近赤外光を吸収しますが、HOMO準位が上昇するために、色素が酸化されやすく安定性が低下します。ナフタレンの構造異性体であるアズレンを縮合したフタロシアニン類縁体(アズレノシアニン)は、HOMO準位をあまり上昇させずに約1000nmの近赤外光を吸収します。また、縮合するアズレンの数を調整することで、吸収波長を調節することができました。

アズレノシアニンのフロンティア軌道の図

図1:アズレノシアニンのフロンティア軌道

合成した色素の溶液中の吸収スペクトルの図

図2:合成した色素の溶液中の吸収スペクトル

[芳香族性ヘミポルフィラジン]

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ヘミポルフィラジンの分子構造はフタロシアニンと似ていますが、その電子構造はフタロシアニンよりも2つ電子の数が多いため、これまで応用分野ではあまり興味が持たれていませんでした。本発明では、フタロシアニンと同様の電子構造を持つ芳香族性ヘミポルフィラジンの合成法を開発しました。合成した色素は850-900nmの近赤外領域に吸収帯を持ち、酸化剤‐還元剤によってその吸収特性をスイッチできるユニークな性質を示します。

一般的なヘミポルフィラジンの図

図3:一般的なヘミポルフィラジン

合成した色素の溶液中の吸収スペクトルの図

図4:合成した色素の溶液中の吸収スペクトル

利点

  • 酸化されにくい近赤外色素を提供可能
  • 中心金属、周辺置換基を変えることで吸収波長のコントロールが可能

応用

  • 有機系太陽電池
  • 癌の光線力学療法
  • 近赤外バイオイメージング

文献情報

  • 1.特願2009-277344
  • 2.特願2011-197711

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理化学研究所
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