2013年9月1日
ユビキタス元素からなるカラフルな蛍光色や発色を示す新規パイ電子系化合物
理研No. 07835
発明者
神野 伸一郎、榎本 秀一(次世代イメージング研究チーム)
背景
光物性や電子物性に優れたパイ電子系色素化合物は、有機ELや有機太陽電池に代表される分子エレクトロニクスや分子イメージングなどのライフサイエンスの発展において不可欠です。また、ユビキタスな元素で新たな分子骨格を有する化合物を開発することは、資源小国の我が国において極めて有用な技術となります。
概要
新規パイ電子系化合物のアミノベンゾピラノキサンテン系(ABPX)色素の開発に成功しました。ABPXは、溶液状態に加え、固体状態においても、カラフルな蛍光色や発色を示す新たなパイ電子系色素化合物です。ABPXに関する最新研究の取り組みを紹介します。
図1:ABPXの溶液中での分子構造と発色や蛍光の様子
図2:金属イオン解析用のケミカルセンサーとなるABPX - ヒドラジド(ABPX-hy)の特徴
利点
ABPXは、化学的や物理的な刺激により、発色や蛍光色、それらの強度を制御できるユニークな色素化合物です。また、ABPXは従来のパイ電子系色素化合物と比べ、アルコールなどさまざまな溶媒に溶けやすく取り扱いやすい上、液体と固体の両状態で利用できるため、加工性もよく大面積化も容易です。このような性質をもつ平面性の高いパイ電子系色素化合物はほとんどなく、新しい発光性材料を提供できます。
応用
- センサー、分子イメージング、診断薬、環境計測、分子エレクトロニクス、有機太陽電池など
文献情報
- 1.米国特許第8134017号
- 2.S. Kamino, et.al., Chem. Commun., 46, 9013 (2010).
- 3.S. Kamino and S. Enomoto, US patent 8134017.
- 4.S. Kamino, et.al., Phys. Chem. Chem. Phys.,15, 2131 (2013).
- 5.S. Kamino, et.al., Chem. Asian. J., 8, 2609-2613 (2013).
- 6.S. Kamino, et.al., Org. Lett., 16, 258-261 (2014).
関連情報
- 1.2013年8月2日プレスリリース「金属イオンの濃度に応答して色調が変わるケミカルセンサーを開発」
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