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2014年1月7日

植物由来ブラシノステロイドを用いた免疫賦活剤

理研No. 07843

発明者

小川 健司(分子リガンド探索研究チーム)、中野 雄司(中野生体膜研究室)

背景

あらゆる植物に普遍的に存在する化合物の中から免疫賦活化作用を有する物質の探索を行い、ブラシノステロイドは微量で動物の免疫賦活化作用を有することを見出しました。

概要

免疫賦活剤は、宿主の免疫を活性化することにより、感染症等に対する宿主の予防および治療効果を増強します。宿主のサイトカインの産生を促進することで自然免疫系を強化し、貪食および抗原提示能を促進することで、獲得免疫系を強化することが知られています。

ブラシノステロイドは、植物の発生、葉緑体制御、種子形成などに重要な役割を果たす植物に特有の生理活性物質です。ステロイド骨格を有し、植物ホルモンに分類されますが、水酸基に富む構造的特徴から動物のステロイドホルモンとは異なる物性を示します。

ブラシノステロイド構造式の図

図1:ブラシノステロイドの構造式

植物由来の化合物には、ダイズのイソフラボンのように立体構造上の類似性からステロイドホルモン受容体に結合して、その作用を模倣する物質が知られています。イソフラボンは、健康増進に効果があることが広く知られていますが、妊婦などが大量に摂取すると流産などの副作用を生じる可能性も報告されています。一方、ブラシノステロイドは、ステロイドホルモン受容体を活性化しないことから、このような副作用が生じません。

また、生薬成分のようにヒトに対して有効な効果を有する植物由来の化合物のほとんどは、通常、植物生理学的には二次代謝化合物であり、植物の生長サイクルには全く重要な役割を果たしていません。一方、ブラシノステロイドは、植物の生長サイクルにも重要な役割を担う生理活性物質であり、あらゆる植物に普遍的に存在しており、植物種や器官によって内生量には違いがあるものの、ヒトが日常的に摂取する野菜などにも含まれています。従って、摂取による副作用はないか、極めて小さいと考えられており、人体に対する安全性が非常に高い物質であるといえます。

ブラシノステロイドの作用機構の図

図2:ブラシノステロイドの作用機構

ブラシノステロイドの免疫賦活作用の図

図3:ブラシノステロイドの免疫賦活作用

利点

  • 副作用が生じない
  • 安全性が非常に高い

応用

  • 安全性が高く、長期にわたって投与可能な免疫賦活剤
  • 免疫賦活剤を含む医薬組成物
  • 免疫賦活作用を促進する飲食物
  • 健康促進型サプリメント

文献情報

  • 1.特許第5704749号

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