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2013年10月15日

iPS細胞からの赤血球の生産

理研No. 08054

発明者

中村 幸夫、栗田 良(細胞材料開発室)

背景

様々な幹細胞を材料として赤血球を人工生産する技術が多数開発されていますが、コストパフォーマンスの高い技術の開発が求められています。

概要

iPS細胞から分化誘導した血液細胞や臍帯血中の血液細胞に、発現をオン・オフできる誘導発現系にて不死化遺伝子(HPV-E6/E7)を導入し、効率よく成熟脱核赤血球を生産できるヒト赤血球細胞株(不死化細胞株)の樹立に成功しました。

樹立した細胞株は、常にヘモグロビンを産生しており、細胞沈殿が赤色になります。矢印の先の細胞は、核を持たない脱核赤血球で、赤血球マーカー(Glycophorin A)や、ヘモグロビンを染めるベンジディンでの染色が確認されました。また、樹立した細胞株が産生するヘモグロビンは、正常な末梢血と同様の酸素結合能を有することが確認されました。

樹立した細胞株の図

図1:樹立した細胞株のペレット(左)、樹立した細胞株の酸素結合・解離能(右)

分化誘導した細胞の図

図2:分化誘導した細胞の免疫染色(左)およびベンジティン染色(右)

利点

ヒト赤血球細胞株(不死化細胞株)は無限増殖が可能であり、増殖速度も速く3~5日で成熟脱核赤血球を生産可能です。ES/iPS細胞から成熟脱核赤血球を生産するよりも生産コストを大幅に削減できます。

応用

O型RhD(-)の赤血球を生産するヒト赤血球細胞株(不死化細胞株)を樹立できれば、そこから生産される成熟脱核赤血球は、特殊な血液型以外のほぼ万人に輸血可能なものであり、赤血球の人工生産の事業化が可能と考えられます。

文献情報

  • 1.特許第6288615号、米国特許第8975072号
  • 2.Kurita, R., Suda, N., Sudo, K., Miharada, K., Hiroyama, T., Miyoshi, H., Tani, K., and Nakamura, Y. PLoS ONE 8: e59890 (2013)

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