2013年10月1日
低消費電力磁気メモリ素子-スキルミオン素子
理研No. 08092
発明者
于 秀珍、十倉 好紀 他(強相関物性研究チーム)
背景
電子スピンの向きをデジタル情報として利用する磁気メモリ素子は、高速・不揮発性などの特徴を持ち、様々な分野で利用されています。強磁性体中に電流を流して磁壁を移動させ、磁化反転を引き起こすことより、情報を書き込むことができます。しかし、磁壁を移動させるには、最低でも109A/m2という大電流密度が必要です。これでは、消費電力が大きく、大量のエネルギー損失が生じるため、より低い電流密度で磁気情報担体を操作する方法が望まれていました。
概要
スキルミオンの電流駆動を検証するために、FeGeのマイクロ素子を作製し、強磁性体中の磁壁を駆動に必要な電流密度の約10万分の1以下という微小な電流で、室温近傍(-3℃)のスキルミオンを駆動することに成功しました。
縦が165μm、横が100μm、厚さが縦方向の位置によって100nm~30μmの範囲で異なるマイクロ素子を作製し、-23℃から室温近傍(-3℃)で約150mTの磁場を加えたところ、直径約70nmの安定したスキルミオンが三角格子状に並んだ、スキルミオン結晶が観察されました。
この結果は、スキルミオンを利用した次世代の低消費電力の磁気メモリ素子の実現に向けた大きな一歩であり、スピンエレクトロニクス分野において様々な応用が期待されます。
図1:FeGeを用いて作製したマイクロデバイス(左)、およびデバイスのI-V特性(右)
図2:デバイス中のスキルミオン結晶
<ローレンツ顕微鏡像:250K,150mT>
図3:電流の印加によるスキルミオン結晶の移動(左)、臨界電流密度の温度依存性(右)
利点
- 微小電流(>5X 104A/m2)でスキルミオンを駆動可能
- 室温付近で安定なスキルミオン結晶が生成可能
応用
- 次世代の低消費電力の磁気メモリ素子
- さまざまなスキルミオンデバイス
文献情報
- 1.特許第6116043号
- 2.X. Z. Yu et al. Nature Mater. 10, 106-109 (2011)
- 3.X. Z. Yu et al. Nature Commun. 3: 988 (2012)
関連情報
- 1.2012年8月8日プレスリリース「電子スピンの渦「スキルミオン」を微小電流で駆動」
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