2020年6月22日
レブリン酸からコハク酸の一段階化学変換法
理研No. 08581
発明者
内山 真伸、宮本 和範(内山元素化学研究室)
背景
コハク酸は、染料・医薬品・プラスチックなどの原料として重要な化合物ですが、その供給は石油化学資源にほぼ依存しており、高コストです。また、環境・資源の問題からも生物由来の生産が求められています。木材に含まれるセルロースからコハク酸を簡便に合成できれば、安価かつ大量供給が可能になると考えられます。しかし、セルロースからレブリン酸の化学変換は知られていましたが、レブリン酸からコハク酸への化学変換は実現されていませんでした。
概要
具体的には、レブリン酸に含まれるアセチル基をカルボキシル基へと変換する必要があります。私達は、古くからアセチル基の定性試験によく用いられてきたヨードホルム反応を改良し、アセチル基から酸化的に脱メチル化し選択的にカルボン酸へと変換できることを見出しました。また、レブリン酸からコハク酸を一段階にて収率よく合成することに成功し、セルロースからコハク酸へのワンポット化学変換を実現しました。
図1:改良型ヨードホルム反応
図2:セルロースからコハク酸へのワンポット合成
図3:アセチル基からカルボン酸への新たな化学変換プロセス
利点
- 簡便な操作、温和な条件(常温・常圧)、低コストで実施可能
- 石油資源の使用回避
- セルロースからコハク酸への化学変換プロセス構築の第一歩
応用
- コハク酸の原料が、石油資源から再生可能資源資源へ
- 環境や資源に配慮したコハク酸製造プロセスの構築
- アセチル基からカルボン酸への新たな化学変換プロセス(コハク酸製造に限らない)【図3】
文献情報
- 1. 特願2018-527577
- 2. Sci. Rep. 2017, 7, 17967 (One-step Conversion of Levulinic Acid to Succinic Acid Using I2/t-BuOK System: The Iodoform Reaction Revisited)
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