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2018年10月31日

力学系の特徴を用いた複雑な集団運動の分類・予測技術

理研No. 08697

発明者

藤井 慶輔、河原 吉伸(構造的学習チーム)

背景

複雑な動きを見せる集団運動を理解することは、様々な分野において重要な問題です。実世界の生物集団のようにその複雑な運動の背後にある規則が全て明らかになっていない場合は、データから集団運動のメカニズムを推定・理解するという方法が有効です。これまでの方法においては、複数の個体の相互作用における動的な特性(例えば、力学系としての特徴)を用いて、集団運動を予測・分類できるような空間へ写像する技術は存在しませんでした。

概要

特許を出願した本技術[参考文献1]は、個体間の距離の時系列などを入力して、クープマンスペクトルカーネルと呼ばれる非線形力学系としての特徴[参考文献2]の類似度を計算する手法です。例えば魚の群れモデルが見せる複雑な運動を分類・識別したり[参考文献3](図1)、集団スポーツの得点の成否について予測・分類したり[参考文献3,4](図2,3)することができます。この技術は、スポーツでは戦術評価・立案・分析時間の削減など、その他の生物集団に対しては力学系の特徴による評価などに役立てる可能性があります。

魚の群れモデルが見せる3つの振舞いの分類・識別の手順の図

図1:魚の群れモデルが見せる3つの振舞いの分類・識別の手順

集団スポーツの得点分類の図

図2(左)集団スポーツ(バスケットボール)の得点予測のための選手間相互作用、
図3(右)集団スポーツの得点しやすいプレーにおける分布のヒートマップ

利点

  • 集団運動における、非線形力学系としての特徴をデータから推定できる
  • 上記の力学系の特徴を反映した異なる力学系の類似度の指標を開発した
  • 支配法則が自明でない集団運動でも力学系の特徴を抽出できる

応用

  • 集団スポーツにおける、戦術評価や戦術立案、単純な分析時間の削減など
  • その他、非自明な相互作用をする物質集団等の力学系の特徴の抽出や分類など
  • その他、生物集団等の分類・識別による評価システムの構築など

文献情報

  • 1.PCT/JP2018/019838
  • 2.Y. Kawahara, "Dynamic Mode Decomposition with Reproducing Kernels for Koopman Spectral Analysis," in Advances in Neural Information Processing Systems 29 (Proc. of NIPS'16), pp.911-919, 2016.
  • 3.K. Fujii, T. Kawasaki, Y. Inaba & Y. Kawahara, "Prediction and classification in equation-free collective motion dynamics," PLOS Computational Biology, in press.
  • 4.K. Fujii, Y. Inaba & Y. Kawahara, "Koopman spectral kernels for comparing complex dynamics with application to multiagent in sports," in Proc. of the 2017 European Conf. on Machine Learning and Principles and Practice of Knowledge Discovery in Databases (ECML-PKDD'17), pp.127-139, 2017.

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