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  2. 新型コロナウイルスに関する研究開発(2022年5月26日更新)

コロナ禍と遠隔地における家族支援のためのリモート心理療法の研究

実施代表・実施者等
黒田公美 チームリーダー・白石優子研究員

研究概要

問1:研究の概要を教えてください。
今回活用する親子相互交流療法(PCIT)は、子ども虐待の予防や再発防止、子どもの問題行動などに役立つ行動療法として世界中で活用されているものです。通常は対面で行いますが、海外では10年ほど前からリモートでの実践が始まっていました。コロナ禍の今、本研究でもリモートを利用します。PCITによって生じた親の認知・行動上の変化を、脳機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)で探り、子育ての改善に役立てることができる行動神経科学的エビデンスの創出を目指します。また、リモートでの家族支援を国内で展開するにあたってのノウハウを、実践家とともに収集します。
親子相互交流療法(PCIT)の概要の図

親子相互交流療法(PCIT)の概要

PCITは、治療室内で親(養育者)が子どもに直接遊戯療法(プレイセラピー)を行い、セラピストが別の場所から通信機器などを使って親にスキルをライブコーチするユニークな心理療法である。プログラムは「特別な遊びの時間」のなかで、親が子どものリードに従うことによって、親子の関係を強化することを目的とした「子ども指向相互交流」と、そこで獲得したスキルを維持しながら、よい命令の出し方や子どもがより親の指示・命令に従えるようにする効果的な「しつけの仕方」を指導し、子の問題行動の減少をはかる「親指向相互交流」の2段階に分かれている。それぞれの段階で、親がスキルを学ぶティーチと、ライブコーチングを受けながら親子で遊ぶコーチのセッションがある。「子ども指向相互交流」のスキルをマスターすると「親指向相互交流」に進め、そのスキルをマスターして修了となる。

問2:なぜこの研究を行おうと思ったのでしょうか。
パンデミック発生当初から、家族が孤立することによって、子ども虐待や配偶者間暴力の深刻化が世界的に危惧されていました。私たちは、この危機にこそリモートでの家族支援を展開させる必要があると感じています。しかしながら、コロナ禍以前より国内においてはプログラムを提供できる専門家の不足が課題でした。今回、この研究を行うことによって、これまで十分検討されてこなかった人の養育行動の変化を、神経科学的に検討できるようになると考えました。さらにリモートでの支援は、コロナ禍に限らず支援資源が不足している地域にも役に立つと考えています。
問3:どういった方法でそれらの問題を克服するのでしょうか。
まず、子どもとのコミュニケーションに何らかの困難を抱える養育者を募集し、リモートでPCITを提供します。参加者を2グループに分け、先にPCITを行うグループには、開始時・修了時・修了後4ヶ月時点の3回、質問紙調査・行動分析・認知機能検査・fMRI実験を行います。後にPCITを行うグループには、開始4ヶ月前・開始時・修了時に同様の調査・実験を行います。このような方法で、養育者の子に対する行動について、PCITによって生じた変化を評価します。さらに関連する脳領域を行動神経科学的に調査します。
問4:現時点でどこまで分かっているのでしょうか。
PCITは、アメリカでは、虐待の再発防止や子どもの問題行動の減少等への効果が実証されています。また、対面ではなく、リモートで実践された場合にも、対面とほぼ同等の効果が示唆されています。一方で、親の認知や行動の変化が、どのような神経メカニズムによって生じるのかについては、ほとんど研究が行われておらずわかっていません。
問5:今後の課題を教えてください。
支援プログラムのような新しいアプローチには、抵抗感を持つ人も少なくありません。家族のありかたにどのように有益であるか、あるいはどのような限界があるのかを十分に検討し、それぞれの家族や支援者が選択できるよう情報を発信していく必要があります。

2021年9月24日掲載

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