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研究最前線 2023年2月16日

化学反応に魅せられて

大学の技術補佐員、試薬会社の研究員として化学合成の研さんを積んできた、桑山 元伸 テクニカルスタッフⅡ。研究者と熱い思いを共有しながら、得意の手技で研究をサポートしています。

桑山 元伸の写真

桑山 元伸(クワヤマ・モトノブ)

創発物性科学研究センター 創発ソフトマター機能研究グループ テクニカルスタッフⅡ

若手研究者と共にありたくて

真っ二つに切っても、みるみるうちに切断面がくっつき元に戻る自己修復ポリマーガラス。「『現象が実感できるってすごい!』と度肝を抜かれました」と目を輝かせる。日々、若手研究者18名の傍らで研究をサポートする。共に合成し、手技を伝え、測定に付き添う。時には興味のある論文について雑談するなど、密にコミュニケーションをとる。

順調に進んでいない研究があると、ディスカッションに加わりアイデアを出すこともある。「壁にぶつかっている研究ほど面白いです。どうしたら乗り越えられるのか考えるのが好きなんです」

無類の実験好き。名古屋大学の技術補佐員時代には、学生と共にフッ素がついたカーボンナノチューブを合成したことも。その後、より多様な物質の合成の場に身を置きたいと試薬会社に転職した。そんなある日、名古屋大学で研究を共にした仲間から「また、新しい物質を合成できた」というニュースが舞い込んだ。「その場にいたかった」との思いから新しい機能性物質を探究する現職への転職を決めた。

「できたらかっこいい!」に挑む

自身の卒業研究に取り組み始めた頃、合成反応がもくろみ通りに進まなかったことがあった。指導教官に「うまくいかなかったので、これを試してみたい」と提案を携えて報告すると、「それこそが研究です!」と。その言葉にますます奮起した。

そんな経験を積み重ねるうち、実験計画を考える際には「この分子は合成が難しそうだが、できたらかっこいい!」「ステップごとに何度も反応容器(ポット)を取り替えるのではなく、1ポットで合成できたらかっこいい」と高いハードルをいかに超えるかを考えるようになった。ノートにはいくつものアイデアをメモしている。

重要な情報源「おしゃべり」

「もちろん論文も読みますが、人とよく話すんです。研究室内だけでなく隣の研究室の人ともよく話します。話した内容は昔の研究内容でも記憶によく残っているんです」とアイデアの情報源を明かす。

現在の研究室主宰者である相田 卓三 グループディレクターの、専門の化学だけでなく社会情勢などへの意見も明確に持ち、それを研究に生かす姿からも多くを学んでいる。

研究室の仲間と「こんな合成ができたらかっこいいよね」と話し出すと時間を忘れてしまうという。「世の中を驚かせるようなすごい分子をつくり出す研究に貢献できたら」、と自分を奮い起こす日々だ。

(取材・構成:大石 かおり/撮影:相澤 正。/制作協力:サイテック・コミュニケーションズ)

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