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2009年4月23日

理化学研究所

文部科学省「セルイノベーション」における「次世代シーケンス拠点」に採択

-先端の生命科学に必須の次世代シーケンサーの集中的な配備、利用技術開発を本格化-

理化学研究所(野依良治理事長)オミックス基盤研究領域(OSC、林崎良英領域長)は、2009年度にスタートした文部科学省「革新的細胞解析プログラム(セルイノベーション)」における「次世代シーケンス拠点整備および運営」に採択されました。

セルイノベーションは、文部科学省ゲノムネットワークプロジェクト※1などで得られた成果や基盤を活用しつつ、革新的な解析能力を持つ高速シーケンサーによる大規模・多面的なゲノム情報の解析や細胞のイメージングなどの手法により、細胞・生命プログラムの解読を目指すものです。シーケンス拠点は、多様かつ大量のデータを取り扱うデータ解析拠点(情報・システム研究機構国立遺伝学研究所に決定)と緊密に連携して、先導研究を強力に支援します。

次世代シーケンサーは、一回の稼働で産出するデータ量が極めて大きいだけでなく、前処理の技術を組み合わせることで多様な情報を得ることができるため、最近の生命科学分野おいて革新的なツールとなっています。各国の主要なゲノムセンターは、2005年頃から集中的な次世代シーケンサーの配備を進めてきました。次世代シーケンサーは、これからの生命科学研究において必須の設備であり、わが国においても、集中的に導入して利用技術を開発するとともに、性能評価を行うことが望まれてきました。

これまで、理研OSCは、ゲノムネットワークプロジェクトの中核機関として国立遺伝学研究所と一体となって、次世代シーケンサーを活用したゲノムワイドなデータ生産・解析を行ってきた実績があります。2009年4月20日には、セルイノベーションにつながる成果として、CAGE法※2に基づく転写制御ネットワーク※3解析や新規RNAの研究に関する一連の論文が米国の科学雑誌『Nature Genetics』の特集号に同時掲載されました(2009年4月20日プレスリリース)。

今回、「シーケンス拠点」に採択されたことから、これまでに蓄積した技術とノウハウをさらに高度化し、再生医学や創薬にもつながる生命科学研究の基盤の構築に向けて本格的に動き出します。

補足説明

  • 1.
    文部科学省ゲノムネットワークプロジェクト
    2004年度から文部科学省(笹月健彦推進委員会主査、榊佳之実施会議議長、林﨑良英中核機関研究課題代表者、五條堀孝中核機関研究課題代表者)によって開始された。今後のポストゲノムシーケンシング研究の発展を目指して、国際レベルにある研究ポテンシャルを活用しつつ、遺伝子の発現調節機能やタンパク質などの生体分子間の相互作用の網羅的な解析に基づき、生命活動を成立させているネットワークを明らかにすることを目的とした。
  • 2.
    CAGE(Cap Analysis of Gene Expression)法
    キャップトラップ法(cap-trapper法)という、転写物(RNA)に転写されるゲノム上の機能単位や発現制御部位を識別する方法を用いて、RNAの5'末端から約20塩基のタグと呼ばれる部分を切り出し、その塩基配列を決定する、という同研究領域が開発した実験技法。耐熱性逆転写酵素など、複数の技術を組み合わせている。得たタグの塩基配列を、既知のゲノムDNA配列と照らし合わせることで、タグのゲノム上の位置を確定(マッピング)し、その位置と数から、細胞内で、どのRNAが、どれだけ発現しているかをほぼ定量的に調べることができる。
  • 3.
    転写制御ネットワーク
    ある遺伝子から発現した転写因子が、別の転写因子遺伝子の発現を制御し、これにより発現した転写因子がさらに別の遺伝子発現を制御するという一連の相互作用。これを解明することにより、細胞の分化状態(表現形質)を支配している一群の転写因子を抽出することができるため、将来的には、細胞を自在にコントロールする技術につながり、再生医療への貢献が期待される。

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