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2012年5月22日

理化学研究所

ゲノム解析を用いた創薬に向けて共同研究を開始

-理研ゲノム医科学研究センター・東大医科学研究所・武田薬品-

理化学研究所ゲノム医科学研究センター(久保充明センター長代行)は、東京大学医科学研究所(清野宏所長)および武田薬品工業(長谷川閑史代表取締役社長)と、「創薬ターゲット検索のためのゲノム解析研究」を目的とした共同研究を本格化するため、キックオフ会合を5月23日(水)に開催します。

この共同研究では、理研、東大医科学研究所が中心機関である文部科学省委託事業「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」が保有する遺伝子データおよび臨床情報を活用し、ヒト臨床情報に基づいた創薬のターゲット候補分子を探索します。製薬業界のリーディングカンパニーである武田薬品工業が、国の委託事業で集積された遺伝子データを用いて、ゲノム情報に基づいた創薬研究を行う、という民間企業としては初めての取り組みとなります。

共同研究の概要

世界各国で、患者一人一人に最適な医療法を提供する“オーダーメイド医療”実現に向けた動きが活発な中、日本では、文部科学省リーディングプロジェクト「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」が2003年度に開始されました。

プロジェクト第一期(2003~2007年度)では、遺伝暗号の違いを基に病気や副作用の原因を明らかにする研究基盤の構築のため、5年間で約20万人の患者さんにご協力頂き、東京大学医科学研究所内に設置したバイオバンク・ジャパンに47疾患約30万症例の血清、DNA、臨床情報を収集し、世界最大規模のバイオバンクを構築しました。また、収集したDNAサンプルを用いて47疾患※1全ての全ゲノム一塩基多型(SNP)※2解析を行い、その解析結果を基に疾患や薬剤の副作用に関連する遺伝子の研究を進めました。

プロジェクト第二期(2008~2012年度)では、追跡調査で収集した臨床情報と遺伝子・タンパク解析情報との関連などを引き続き解析し、疾患と薬剤の副作用についての遺伝要因や環境要因の解明、新たな予防法の開発を行い、医療への応用を目指しています。

理研ゲノム医科学研究センターは、2003年からこのプロジェクトの研究中核機関として参加しています。全ての疾患の全ゲノムSNP解析を担当するとともに、薬剤の有効性や副作用に関連する遺伝要因を解明する研究を進めてきました。また、疾患関連遺伝子研究においても、全国の研究機関との連携体制を構築して中核的な立場で研究を推進しています。

今回の共同研究では、理研ゲノム医科学研究センターで解析した数万人の全ゲノムSNP解析データと、東京大学医科学研究所のバイオバンク・ジャパンに継続的に蓄積されている臨床情報を用いて、武田薬品工業と理研ゲノム医科学研究センターが共同で、対象疾患に関するゲノム解析を実施し、創薬のターゲット候補分子、バイオマーカー候補分子の探索の実現可能性を調査します。その結果、ゲノム情報を用いた創薬研究が加速し、日本発の新たな治療薬の開発が期待できます。

各機関の概要

(1)理化学研究所ゲノム医科学研究センター

わが国のミレニアム・ゲノムプロジェクトの一環として、2000年に遺伝子多型研究センターが設立され、2008年にゲノム医科学研究センターに名称変更しました。一人一人に最適な治療法を提供する「オーダーメイド医療」の実現をめざし、大量・高速かつ高精度な遺伝子多型判断技術(インベーダー法)を確立することで、個々人のSNPを体系的に解析しています。それらの情報を基に疾患関連遺伝子を検索し、SNPが当該遺伝子の機能に与える影響、またはSNPと薬剤感受性との関連を明らかにする研究を行っています。

(2)東京大学医科学研究所

1892年に設立された伝染病研究所を前身とし、付属の研究病院を持つわが国随一の医学・生命科学のための研究所です。感染症、がんなどの疾患を対象とし、基礎研究の成果を医療に直結させることを使命としています。

また、文部科学省委託事業「個人の遺伝情報に応じた医療の実現プロジェクト」の一環として、約30万症例のDNA、血清、臨床情報などを収集した、世界最大規模のバイオバンク「バイオバンク・ジャパン」を管理しています。

(3)武田薬品工業株式会社

武田薬品は、研究開発型の世界的製薬企業を目指して、自社研究開発を強化するとともに、ライフサイクルマネジメントの推進、導入・アライアンスの積極展開を通じて研究開発パイプラインの充実を図り、経営理念である『優れた医薬品の創出を通じて人々の健康と医療の未来に貢献する』の実現に努めています。詳細については、武田薬品工業株式会社ホームページをご覧ください。

お問い合わせ先

独立行政法人理化学研究所 横浜研究所推進部 企画課
担当:後藤、大木
Tel: 045-503-7092 / Fax: 045-503-9113

報道担当

独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715

補足説明

  • 1.
    47疾患
    対象疾患は以下の通り。
    対象疾患の表
  • 2.
    一塩基多型(SNP)
    遺伝子多型の中で、ゲノム塩基配列中の1つの塩基が個人間で異なっている箇所があり、これらを一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism:スニップ)と呼ぶ。SNPはヒトゲノム上最も数の多い遺伝子多型であり、ヒトのゲノムの中には1,000万カ所、約数百塩基対に1カ所くらいの割合でSNPが存在すると考えられている。SNPは作られるタンパク質の時期や量、機能に違いを生み出すため、SNPの違いが個々人の体質に違いをもたらす。従って、SNPの研究こそが「オーダーメイド医療」実現の鍵を握っているとされている。

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