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2021年3月19日

東京大学
京都大学
東北大学
理化学研究所

超伝導における疎と密のクロスオーバーを実現

-2次元結晶を用いて素粒子の普遍的な性質を明らかに-

東京大学大学院工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センター、物理工学専攻の岩佐義宏 教授(理化学研究所 創発物性科学研究センター 創発デバイス研究チーム チームリーダー兼任)、中川裕治 大学院生(研究当時)らの研究グループは、同研究科の有田亮太郎 教授(理化学研究所創発物性科学研究センター計算物質科学研究チーム チームリーダー)、野本拓也 助教、京都大学大学院 笠原裕一 准教授、東北大学金属材料研究所 野島勉 准教授らと共同で、層状窒化物・塩化窒化ジルコニウム(ZrNCl)2次元結晶の超伝導状態を、イオンゲート法によって電子密度を制御することにより、通常の超伝導体が属する、電子が高密度の極限から、低密度極限への移り変わり(クロスオーバー)を実現しました。

電気抵抗がゼロになることで知られる超伝導は、物質中の電子が対を組むことで引き起こされます。通常の超伝導体では、電子が高密度に存在し、電子対が無数に重なり合った状態にあります。一方で、電子の密度が小さく電子対の重なりが無い場合、超伝導は異なる機構で生じると考えられています。これら2種の超伝導の間の移り変わりを1つの物質で実現することは、これまでになされていませんでした。

本研究では、ZrNClの電子数を精密に制御することで、電子密度を減らし、クロスオーバー領域に到達したことを実証しました。電子が高密度な領域では、電子は対を作ると同時に超伝導になります。ところが、電子密度を小さくするにつれ、電子が対を形成しても超伝導にならない状態が見られるようになります。そしてより温度を冷却して初めて抵抗がゼロの超伝導に転移することが明らかになりました。このように、密度を極限まで小さくすると超伝導の様相が大きく変化することは、超伝導に普遍的な現象であると考えられます。これらの研究成果は、電子をはじめとするフェルミ粒子の集合体の本質的な性質を解明したもので、より高い転移温度を持つ超伝導体を探求するための礎となることが期待されます。

詳細は東京大学大学院 工学系研究科のホームページをご覧ください。

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
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