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2021年4月2日

東京大学
理化学研究所
科学技術振興機構

電気的な偏りのない2次元結晶を重ねるだけで面内に電荷の偏りと光発電機能を実現

-2次元物質界面における新たな機能性の開拓-

東京大学大学院工学系研究科の井手上敏也助教、同研究科の岩佐義宏教授(理化学研究所 創発物性科学研究センター 創発デバイス研究チーム チームリーダー 兼任)らの研究グループは、同研究科の森本高裕准教授らのグループやNanjing University、物質・材料研究機構、The University of British Columbiaのグループと共同で、2種類の異なる2次元結晶(WSe2と黒リン)を重ねて作製した界面において、面内に電気分極とそれを反映した巨大な光起電力効果が生じることを発見しました。

層状物質から剥離した、原子層1枚、あるいは数枚だけからなる2次元結晶は、元の物質とは全く異なる性質を示すことに加えて、剥離した2次元結晶同士をはり合わせるだけで新しい2次元界面を作製でき、予想外の物性や機能性が発現することから、近年大きな注目を集めています。これらの界面は、はり合わせる物質の種類とはほぼ無関係に作製できるという点でこれまでの2次元界面の常識を大きく破っており、作製した界面では、元の結晶には無いさまざまな特徴的構造が現れて、物性に大きく影響を与える場合があります。本研究では、2次元結晶界面において初めて面内の極性構造に着目して、2つの異なる2次元結晶を重ねて界面の対称性を制御することで、面内に電気分極を実現するとともに、分極に由来する自発的な光起電力効果(バルク光起電力効果)を観測することに成功しました。さらに、光電流の詳細な振る舞いを調べ、観測されたバルク光起電力効果が、電子の量子力学的な波束の重心位置が光照射によって空間的に変化するという機構によって説明できることを見出しました。

本研究成果は、2次元結晶界面における新たな対称性制御の指針を与えるものであり、2次元結晶界面の機能性開拓をさらに推進する契機となるだけでなく、結晶の持つ周期性が失われた物質における電気分極や光起電力効果といった現象の探索に重要な知見を与えるものと期待されます。

詳細は東京大学大学院 工学系研究科のホームページをご覧ください。

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
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